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若い人ほど有利?“越境転職”の時代に求められるキャリア戦略

2021年10月26日

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キャリアって、同じ業種や職種での仕事を積み上げるイメージがありませんか?

ところが、最近の転職では、20代を中心に「異業種×異職種」への“越境転職”が増えているそう。

これから社会に出ていくみなさんのキャリア戦略にも影響がありそうです。

(『リクルートエージェント』転職決定者データ分析(2009年度~2020年度より)

 

20代は約半数が越境転職

今回はリクルートHRの藤井薫統括編集長に話を聞きました。

リクルートHR 藤井薫統括編集長

藤井さん
もとの会社とは異なる業界で、これまでと異なる職種に就く「異業種×異職種」の転職をする人が年々増えています。

「異業種×異職種」(異なる業界・異なる職種)
「異業種×同職種」(異なる業界・同じ職種)
「同業種×同職種」(同じ業界・同じ職種)
「同業種×異職種」(同じ業界・異なる職種)

のそれぞれの割合をグラフにしたものが以下。

『リクルートエージェント』転職決定者データ分析(2009年度~2020年度)より作成

注目は、「異業種×異職種」の転職の伸び率。

2009年度に24.2だったのが、2020年度には36.1%に増えています。

一方、「同業種×同職種」は27.9%から19.6%に減少しました。

藤井さん
若い人ほど、業種や職種に縛られずに転職を決めています。20代では52.0%、約2人に1人が業種・職種にこだわらない“越境転職”をしているんです。

『リクルートエージェント』転職決定者データ分析(2009年度~2020年度)より作成

年代が上がるにつれ、経験やスキルを軸とした同職種での転職が増えていきますが、30代以上でも「異業種×異職種」での転職パターンが増加しているといいます。

もはや、キャリアは必ずしも、同じ業種・職種の中で同じスキルを積み上げるものではなくなったことがわかります。

では、どうしてこのような変化が起きたのでしょうか?そこには2つの理由があるといいます。

理由①:すべての産業・企業がビジネスの在り方を変容させている

藤井さん
今はGDPの7,8割をサービス産業が占める“サービス経済化”が言われていますよね。

例えば自動車メーカーでは、車を造るというだけでなくMaaS(Mobility as a Service)ということばがあるように、いまは「移動のサービス」を提供する会社になってきています。

藤井さん
つまり、“モノが欲しい”経済から、“体験価値が欲しい”経済にシフトしてきているのです。

このように、企業がビジネスの根幹を変革することをCX(Corporate Transformation)、産業が変容していくことをIX(Industrial Transformation)といいます。

MaaSとは旅行などの移動ニーズに対し、複数の公共交通機関や、移動手段を組み合わせて一括して検索、予約等を行うサービスのこと。

利用者にとっては、企業によって窓口が変わらないため、体験がシームレスに横につながる利便性があります。

このように、既存の企業や産業が新しい分野や市場に進出する際や、多角的な展開をする際、必要となるのが新しいサービスを考えることができる人材です。

藤井さん
第2次産業は供給力が企業の競争力の源泉ですが、第3次産業(サービス産業)では需要側、利用者側の気持ちを理解することが求められています。

多くの企業は、TikTokやInstagramなどのSNS、様々なサブスクリプションサービスを駆使してユーザーの気持ちがわかる人材を欲しています。

こうしたことが、若い人たちが移動しやすい環境になっている理由の1つになっているんです。

また、企業が新しい分野に進出する場合には、その分野の専門性を持ったこれまでとは異質の人材が必要となります。

このため、例えば、自動運転の車を開発している自動車メーカーが、IT企業に勤めるデータサイエンティストを越境採用するというようなことが、当たり前に起きてくるといいます。

理由②:働く個人の意識の変化

藤井さん
人生100年時代に突入し、企業寿命と個人の寿命が逆転したため、個人にとっても「終身雇用」ではなく、「終身成長」が大事になってきました。

長期に活躍するためには成長機会がある場所を探し続けることが大切です。これまでの経験にとらわれず、みずからの成長の機会を提供してくれる企業を探した結果、越境して転職する人が増えたと考えています。

藤井さんはずっと同じ業種・職種でいると、持っている能力が陳腐化する恐れがあると指摘します。

あえて、これまでとは違う市場や違うエンドユーザーへのタッチポイントに入っていくことで、自分自身の成長につなげる若者が増えていると見ています。

転職を視野に入れたキャリア設計とは

藤井さんは、このような傾向が進むことで、「経験の有無」に依存していた採用時の人事評価が変わる可能性も指摘します。

代わって注目されるのが、“ポータブルスキル”という考え方。

ポータブルスキルとは、業種や職種を越えても活躍できる持ち運び可能なスキルのことを指します。

一般社団法人「人材サービス産業協議会」資料より作成

転職では従来、専門技術や専門知識こそが重要だと考えられていました。

しかし業種の壁が溶けていくIX(産業の変容)が進むと、どこでも応用が効く「ポータブルスキル」の重要度が増します。

例えば、対人マネジメント能力もポータブルスキルの1つです。

対人スキルには「上司に強い」、「社外に強い」、「社内に強い」などのタイプがあるといいます。

自分のタイプを自覚することが越境転職を可能にする第一歩といえるかもしれません。

藤井さん
転職は外へ向かってキャリアを伸ばす行為ですが、まず大事なのは内観すること。自分は何でワクワクするのか、自分の持ち味は何か、自分の内側を見つめてください。誰もが「仕事のし方」や「人との関わり方」など、業種や職種が変わっても持ち運び可能な能力(ポータブルスキル)を持っています。じっくり棚卸ししましょう。

業種や職種のラベルにとらわれず、転職先の選択肢を多く見るほど、自分がワクワクするもの、新たに身に付けたい専門スキルがはっきりしてくると思います。

持ち前のポータブルスキルの活用と、転職先での新たな専門スキル習得(re-skilling)。2つの組合せこそ、越境転職時代の自分らしいキャリアデザインのカギです。

これからは、より、積極的にポータブルスキルを蓄えられるようなキャリア戦略が求められていくのかもしれません。

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