2021年10月15日
思ったように仕事がはかどらないけど、何が原因か分からない。社会に出ると、こんな壁によく、ぶつかります。
そんな時にやるべきことを『内定者への手紙』の著者、北野唯我さんが教えてくれました。聞き手は、入社まであと半年の4年生学生リポーターです。
(聞き手:白賀エチエンヌ 堤啓太)
学生
白賀
4つ目のポイント、「分解の法則」についてお伺いします。
「分解をする」ということがどういうことなのか、教えてください。
白賀さん、パソコンは何を使いますか?
北野さん
パソコンですか?僕は今MacBook Airを使っています。
世の中には、白賀くんのパソコンを見た時に「めっちゃいい!」と思う人と、「これってどうやって作られているんだろう?」と思う2種類の人がいます。
「リーダー」とか「経営者」の立場にいる人たちは、後者の人たちです。
「どうやったらビジネスの仕組みを作れるのか」と考える人なんですが、それをどうやっているのかというと、パーツを分解して、1つずつ精査しているんです。
たとえば、車でいうと、このネジはこうなんだな、タイヤはこうやってできているんだなって。
そうなんですね。
それは他のことにおいても同様です。
例えば、野球で時速150kmの球を投げる目標を達成したい時、いきなりその速度の球を投げるのは不可能です。
時速150kmの球を投げるためには、どういう要素があって、どの要素のレベルを上げていけば、投げられるようになるかと考えていくわけです。
これと同様に、ビジネスでも1つ1つの要素を分解しないと自分の身にならないんです。
メールを1通書くのに60分かかっていたところ、それを30分に短縮しますという目標を立てたとします。
この時、「なんとなく」30分間の短縮をするのは、多くの人にとっては難しいことです。
でも、要素を1個ずつ分解して、計測して、改善していけば、能力を上げていくことができるんです。
だから「分解する癖をつけなさい」というのが、結論になります。
なるほど。全体を見るために1つ1つのパーツに分けるっていう認識でしょうか。
そうですね。
多分、入社したての新入社員って、分解するためにどのような要素があるのか分からないと思うんです。こういう段階のときはどうすればいいでしょうか。
他人の力を借りるといいと思います。
世の中には分解するためのフレームワークがいっぱいあるんですよ。例えば皆さん、3C分析って聞いたことないですか。
学生たち
3C分析……?
Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)、というマーケティングの分析で使うフレームワークのことです。
3C分析とは?
マーケティング戦略を決定するために、Customer,Competitor,Companyという3つの異なる観点のCから、業界環境を調査・分析する手法。マッキンゼーの経営コンサルタントだった大前研一さんが提唱し広まった。
学生
堤
そうなんですか。知りませんでした。
そういうフレームワークって他にもいっぱいあるんですよ。もっと身近なものだと、“守破離”とか“心技体”とか。これもフレームなんです。
へえ!
心技体は、スポーツなどを極める時に心・技術・体力っていう3つが必要です、ということじゃないですか。
これって、先人の知恵を借りたフレームワークなんです。
もし何を分解していいのか分からないのであれば、先輩に「これって、どういう手順でやっているんですか」「その手順を1つずつ教えてもらってもいいですか」って聞けばいいんです。
なるほど。
どういった要素で分解すれば良いのか分からない、その要素を見つける技術がない、というのであれば、他の人の力を借りた方が絶対いいです。
最初は、仕事ができる人、パフォーマンスを高く出している人に聞くといいですね。
北野さんは「分解する」のが大事だと、どのように気付いたんですか? 誰かに教えてもらったんですか?
分解について言っている人は、結構いるような気がします。聞いたことありませんか?
作業を効率的に行うために分解をするというのは聞いたことがある気がします。
北野さんご自身でも「やっぱり分解したほうがいいな」と思ったことがあったんでしょうか。
そういわれると、100%効率が上がるなと思ったのは、英語を勉強した時だったかもしれないですね。
僕はもともと英語が全然しゃべれなくてTOEICの点数が300点台くらいだったんです。でも、そこから本腰を入れて勉強して、半年で960点ぐらいに上げたんです。
おぉ……。
アメリカに留学していた時だったんですが、言語学習がなぜうまくいかないのかと考え、要素に分解してみました。
すると、1つ1つの要素を改善していったら明らかにパフォーマンスが上がることに気が付いたんです。
逆に分解しなければ、(課題が)フワッとしちゃって難しくなるというのを、その時にはもう確実に認識していました。
だから、26歳くらいの時には分解の法則を使うことでしか、効率的にスピードが上がらないというのは理解していたんでしょうね。体感値としても。
英語学習ではどういうふうに要素を分解していったんですか。
英語をどういうロジックで学習しているかというと、まず音をインプットしますよね。次に、脳の中でその音の解釈を行う。そして、アウトプットを出すっていう3つのフローに分かれるじゃないですか。
インプットでは、音を脳の中で解釈するのがまず難しいんです。
その解釈をさらに分解すると「apple」という音を聞いた時に、その音を「apple」という単語に紐づけることと、その単語と「リンゴ」のイメージを紐づけるというタスクに分かれます。
その紐づけのスピードが遅い、もしくは紐づけることができなければ意味が理解できないことになるんです。
言われてみればそうですね。
だから、それ(紐づけ)だけを取り出してトレーニングしていました。
単語を耳にした時、連想するイメージを頭の中に浮かべるということだけをやるっていう。
伝わりにくいかもしれないですけど。
文字だけを追いかけるよりも、「apple」って耳に入れた時にリンゴの絵が頭の中でパッて浮かぶような、紐付けのスピードをどんどん上げていく訓練ということですか?
そう。それが後半のプロセス。
前半は、appleという音を認識するために、結局その音を同じように自分が発音できれば、自分の身体感覚と紐づけられるなと思ったんです。
だから、ただひたすら、発音だけをやっていました。
要素を分解することで、やるべきことが明らかになります。振り返ってみると良い方法だったなと思いますね。
すごく興味深かったです。勉強における分解も、ビジネスにおける分解に通じるんですね。
パフォーマンスを上げるためには、まず分解して、ミクロの課題を見いだすことが大事なんですね。
恐ろしく大事ですね。仕事が遅い人は100%これができていないんですよ。
なるほど。
たとえば、携帯電話やパソコンの単語帳の登録1つ取っても、やっていない人とやっている人で全然違うじゃないですか。
「ありがとうございます」という単語は本当によく使うと思うんですけど、「ありがとうございます」って打つのにかかるのが1.5秒だとしたら、「あ」で変換させると0.1秒くらいでできますから。
こういう単位で仕事を「分解」して見ているかどうかだと思います。
そういうことで、パフォーマンスが向上するんですね。
「入社までに身につけたい10のポイント」。次回は、分解したあとに大事になる、“記録する”ということについて聞いていきます。
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