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みんなが輝く「最強なチーム」の作り方

2021年06月29日

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指導者としては素人同然の新監督。

しかも前任者は、低迷する部を復活させた“カリスマ”清宮監督。
就任直後に直面したのは新監督に対し不満だらけのチームでした。

「リーダーになっても、誰も言うことを聞いてくれない」。
そんな状況から、チームに変化を促し、日本一を勝ち取った中竹さん。
組織づくりから、“最強のチームとは何か”のヒントをうかがいました。
(聞き手:小野口愛梨 堤啓太)

選手から信頼ゼロの監督就任

学生
小野口

後編は、早稲田のラグビー部の監督になられてからのお話をお聞きします。

中竹さんは、大学卒業後、イギリス留学を経て会社員になり、ラグビーとは離れていたそうですが、32歳で監督に就任されたんですね。

前任は、有名な清宮克幸監督だったそうですが、監督を引き継いだ時、どういうことを考えていらっしゃったのでしょうか。

言い方に語弊があるかもしれないですけど、監督は「やりたくて」というより、「指名されたので」という経緯だったんです。

中竹さん

オファーをしてくださったことに感謝しながら、私のやり方で全力を尽くすしかなかったっていう感じですね。だって清宮さんと同じ事はできないですから。

学生

当時、自分は小学生だったんですけど、その頃のことは少し記憶に残っていて清宮監督がすごく引っ張っていたというか前面に出いてた「清宮ワセダ」という印象があります。

その清宮監督から引き継がれて監督になられた時、学生の反応ってどんなものがありましたか?

全国大学ラグビー選手権で優勝を決め、喜ぶ清宮監督(2005年1月)

清宮克幸元監督
早稲田大学4年次は主将として大学選手権優勝。社会人としてサントリーでも主将として日本一に。現役引退後、低迷していた「ワセダ復活の切り札」として監督に就任。
就任2年目には、13年ぶりの大学日本一となるなど圧倒的な結果を残し、カリスマ的リーダーシップでチームを復活させたと高く評価された。長男は、プロ野球日本ハムの清宮幸太郎選手。

監督に対する期待値が(清宮監督とは)全然違うので、選手からすると不満と不安でいっぱいだったでしょうね。

最初は、全く信頼されていなかったですね。

実際、(ワセダの監督として)選手に信頼されるだけのラグビーの知識や勝つためのノウハウも持ってませんでした。

選手からの不満は、どんな感じだったんですか?まさか、直接言われるんですか?

直接言われましたよ。グラウンドでもミーティングルームでも。

例えばどんなことを言われるんですか?

「この練習意味ありますか」とか、「この戦略、本当に使えますか」とか。言うだけじゃなくて、ため息も出しまくりですよ、もう。

聞こえるようにわざとなんですね、選手は。

聞こえるように言っています(笑)

当時、選手やスタッフが150人ぐらいいました。みんなの前で、私が何か言っても、「あの監督、わかってないよね」みたいなことを隣の人と笑いながら話していたりするわけです。

えー、辛くないんですか?

客観的に考えると、そりゃ辛いんですけど、ただ、私は全くもって彼らの態度は自然体だと思っていて。

彼らが求めていた基準は「清宮監督ぐらいのレベルで説得力があり、論理的にこうチームを強くするというのが明確にわかるような監督」を期待してたわけです。

選手からも何度も聞かれたんですよ。「なんで引き受けたんですか?」って。

「あなたが引き受けなかったら、他にもっといい監督が来たのに」ってね。

信頼関係ゼロ……だったんですね。

はい。私は、それまで選手を指導した経験がないまま監督になっているので、話していることのレベルの低さは明らかなわけです。

選手に「やめろー!」とか叫ばれたりもしました。

負けたら自分のせい

そんな不満だらけのチームをどうやって変えていかれたんですか。

不満自体は変わらないですね。

でも、私は彼らの文句に対して怒るつもりはさらさらなく、むしろ怒っちゃ駄目だなと思っていました。

なぜですか?

それは彼らの本音じゃないですか。私としては本音が知りたかったので、本音を出してくれる環境自体はすごく健全だと思っていました。

私が大事にしていたのは、その現象を招いたのは自分なんだっていう、自責の念です。

練習がつまらなくて不満が出るのも、自分のせいだと思っていました。

そこから選手とどう接していったんですか?

チーム作りはほぼ選手に任せて自分たちで考えてもらって、「選手だけの力で勝ってほしい」と言い続けました。

えー!

「その結果、負けたら全て監督のせいだから。でも、勝ったら、自分たちが得た勝利なんだから喜んでね」と言っていました。

試合で負けると選手を怒る監督っているじゃないですか。「何やってんだ」「気合が足りねぇんだ」みたいな。

私は試合がうまくいかなかったら謝る。

2009年の全国大学ラグビーフットボール選手権大会を2回戦で敗退し、インタビューで「この結果になったのは指導した私の責任だと感じています」と話す中竹監督

え?

「今日、いい準備できなかったね。いい戦略も立てられなかったし、 ウォーミングアップもあんまり上手くいかなかった。ごめんね」ってひたすら謝り続けました。

そうすると、どうなるんですか?

監督がさんざん謝るんで、さらに、増長する選手もいましたよ。

でも、監督が「人のせいにしない」ってことを一貫してやりつづけると、何人か気づいてくるわけなんです。

それまでさんざん私のせいにしていた部員の中でも。

「ダメな監督だったとしても、監督のせいにしてる自分たちは、果たしていいチームになれるんだろうか?」とか。

「監督のせいにし続けることが、伝統ある早稲田ラグビー部として正しいのか?」ってことを自分自身に問いかけるんですね。

なるほど。

そうするとチームが少しずつ、変わってくる。

オセロで白黒ひっくり返るように、本当に、一人ひとり、変わっていくものなんです。

自ら気づかせるってことですか?

戦略的に考えているんじゃなくて、ひたすら種まきですよね。「気づかせてやるぞ!」ではなく、「種まいておくとどこかで花が咲くかな」ぐらいの感じです。

ほかにも個人面談をやったりとか、時には、ラグビー以外の話もしたりして。

そうしたものの一つ一つが、少しずつつながってきて「あれっ、自分たちの行動ってちょっとおかしくないか?」って学生たちが気づきはじめたんですね。

この取材までに、中竹さんが書かれているものを読ませていただいたのですが、今のエピソードは、中竹さんが提唱されている「フォロワーシップ」という考え方なのかなと感じました。

本来はリーダーは、“引っ張る”と“支える”の両方をやってバランスをとって、組織を動かしていくんです。

ですけど、世間ではリーダーは、(引っ張っていく)リーダーシップが全てだと思われていますね。

私の場合はどちらかというと人を引っ張るより、 人を支えたり、助けたり、支援する方が得意だったんです。

なので「みんなを支援して、後ろから支え、黒子のようにステージを作っていく役割です」とあえて公言しながら、学生には「自分で自分たちを引っ張っていってね」というアプローチをしていましたね。

全員でチームを支えるようなイメージですか?

そうですね。キャプテンだけではなく、なるべく色んなリーダーが役割を持つようなマルチリーダー制を仕組みとして作りました。

たくさんのリーダーをつくる?

そうです。普通キャプテンとか副キャプテンとかはいますけど、それだけでなく、チーム内にいろんな組織を作ってそこを仕切るリーダーを作っていきました。

人は、変わることをいやがるもの

部員にとっては、新監督になって方針も大きく変わったので、初めはどうしても受け入れられなかったんですね。

そうですね。人間って新しいことや、やったことがないことに対して抵抗があるし、怖いので・・・。

もっともらしい理由をつけて、たいていやらないんですよ。だから時間がかかるんです。

わかる気がします。でも、やはりフォロワーシップの方がこのチームに合ってると考えて、それを変えようとは一切思わなかったっていうことですか?

そうですね。ただ、私の中で、時間との戦いはすごく気にしてましたね。

個々が認識して、組織全体の意識になって結果が出るまで、間に合うかなって。

結果的に監督1年目に日本一(大学選手権優勝)になれなかったのは、時間切れだったということかなと思います。

監督として1年目の大学選手権は準優勝でしたけど、2年目と3年目は優勝したんですね。

毎年、日本一を目指すチームで、どういったカルチャーというか文化みたいなものを大事にされて、逆にどういった部分を変えていかれたのかを詳しく聞かせてください。

基本的に変わらないのは、やっぱり日本一になるって事ですね。「荒ぶる」を歌うという目標はずっと大事にしていました。

ラグビー大学選手権で優勝し、「荒ぶる」を斉唱する早稲田大学ラグビー蹴球部(中央が監督当時の中竹さん)

荒ぶるとは?
早稲田大学ラグビー蹴球部第2部歌。大学日本一になったときにだけ歌うことを許される特別な歌。

でも、そこまでの道のりは、シーズンごとに大きく異なるってところも、私の中で大事にしていました。

私が最初のミーティングで言ったのは「すべからく強い者や賢い者が生き残ったわけではなく、すべからく変化に対応した者が生き残った」という言葉です。

その時はそれを聞いても鼻で笑うような雰囲気だったんですけど、部員達の意識が変わってくると、この言葉が沁みるようになるんですね。

目標は変えないけど、やり方は変えていくこともあると。

監督をしていた当時の選手たちも、いま、30代半ばの社会人としてマネージメントをする立場になったわけですよ。

で、彼らが私に言うのが、「あの時監督に教わったことって、社会に出て、超、役に立ちますね!」って。

(教え子たちが)上から目線で言ってくるんですよ、全然いいですけど(笑)

“最強のチーム”とは

中竹さんのチーム作りを通じて「最強のチーム」とは何か一言でまとめていただけますか?

「Yet Mindを持っている」

“Yet Mind”って聞いたことありますか?

すみません・・・ないです。

“グロースマインドセット”という考え方があるんですね。人は必ず成長できるっていう考え方です。

はい、聞いたことがあります。

この言葉は、有名な心理学者のキャロル・ドゥエック教授が発信して、スポーツ界やビジネス界でよく使われているんですが、言葉が長くてなかなか浸透しないので私は“Yet Mind”という言い方にしています。

“Yet”って「まだ」っていう意味ですよね。

“まだ”の力、“まだ”を信じるということで「あなたはまだいける」、って伸びしろに目がいくんですよ。

例えば、試験を受けた人に、「不合格」って言わずに「未合格です」と言います。あなたは必ず合格するけれど、時間軸において今はまだ合格してませんねと。

「あー、ダメだ」ではなく、「まだダメだ」って思う気持ちを持っていれば最強の組織になります。

優勝したとしても、まだまだ自分達はいけるという“伸びしろ”を持っている組織は「ウィニングカルチャー」を手に入れられると思っています。

ウィニングカルチャーですか?

“勝ち癖の文化”です。

全国大学ラグビー選手権で優勝し、ナンバーワンのポーズで喜ぶ中竹監督

そういうふうに、組織文化を変えていくためにチームのメンバーができることってありますか?

一人ひとりがまず自分の可能性、つまり自分に対する“Yet Mind”を持つことはすごく大事です。

自分自身をちゃんと認め、自己肯定をしていく。これしかないなと思います。

最後に、リーダーに大事にしてほしいことは何かありますか。

“リーダーは引っ張らなきゃいけない”とか、“優秀でないといけない”ということに縛られて、だから「自分には向いてない」という言葉も出てくるんでよね。

でも、実はリーダーというのは決まった型がないので、自分らしくいることが最もリーダーとしてのパフォーマンスを上げるんですよ。

そうなんですか??

それができて初めて、他者に対しても、余裕が出てきて承認することもできるようになります。

最終的には組織全体として”Yet Mind”が育まれればいいなと思ってます。

優秀に振る舞うことより、弱さをちゃんとさらけ出して自分らしくあること。

リーダーだから背伸びするんじゃなく(自分が)できないこともちゃんと認めて、ありのままの自分でいることを意識してもらいたいです。

そこからなら今からでもできそうな気がします。

学生たち

ありがとうございました!

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