就活ニュース

就活の個人情報 学生自身が管理

2021年06月07日

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「ナビサイトには登録しませんでした」

ある学生は就活をこう振り返りました。

そのことばの背景にあるのは、「情報が勝手に使われるのでは?」という不安です。

就活の個人情報を学生の手に取り戻す。

実験が始まりました。

【個人情報は自分で管理】

学生が使うのはスマートフォン。

専用サイトにログインし、プロフィールや大学の講義の成績や態度、課外活動など、個人にひも付く情報を記録します。

情報は暗号技術のブロックチェーンを使って暗号化され、それを就職活動の際にどの企業にどこまで開示するのか、学生自身が決めます

従来の就職活動では採用やインターンシップのための試験の際に、企業の採用サイトや、就職情報会社のいわゆるナビサイトなどに求められた情報を入力するのが一般的です。

しかし、開発中の新たなシステムでは、学生自身が管理するウェブページから企業の求めに応じて情報を開示し、必要な期間が過ぎたら企業が再び見ることができないようにするということです。

この実験は慶應義塾大学の研究所FinTEKセンターと、採用支援ソフトの開発などを行うIGSが共同研究として、ことし1月から開始しました。

STARプロジェクトと名付けられ、現在は慶應大学の学生を中心に2000人ほどが登録。

実験は3年間の期限で行われ、今後、ほかの大学も参加する予定だということです。

【「コントロールできる安心感」】

実験に参加している学生に使い勝手を聞きました。

実験開始から間もないこともあり機能は限定的ですが、4年生の伊藤椋さんはこのシステムを使って、実験に参加しているコンサルティング会社のインターンシップに応募しました。

自分専用のページにあらかじめ登録しておいた名前や学部、興味・関心などの情報のほか、性格や特徴を診断するテストの結果を開示しました。

学生のプロフィール画面。今後は授業の成績なども加わる。

企業はその情報をもとに合否を判断し、伊藤さんに連絡をしました。

4年 伊藤椋さん
「従来の就活よりも、情報を自分でコントロールできる安心感はあります。自分のページ上でイベントの申し込みなども完結するので、便利だと思います。今後はさらに多くのことが記録されるということで、ふだんから気を抜けないなという気持ちもありますが、面接だけでは伝わらないことを企業に知ってもらう機会になるかもしれません」

【きっかけは リクナビ問題】

今回の実験のきっかけになったのは、学生の個人情報をめぐる不祥事です。

2019年に明らかになった、「リクナビ問題」。

リクナビを運営するリクルートキャリアが、サイトを利用する学生が内定辞退する確率をAIで予測し、企業に販売していました。

およそ8000人が同意なしに内定辞退率をスコア化され、企業に提供されていました。

大きな不信感、反発を生み、学生がサイトを使わないようになったり、学内でリクナビ主催の説明会を見送る動きも出ました。

【ナビサイトは使わない】

ナビサイトへの不信感から、新たな就活支援の仕組みがほしいと、実験を運営する側に回った学生もいます。

実行委員として参加している慶應大学4年の中静奎太さん。

およそ8か月の就活で受けたのは20社ほど。

就活で使ったサービスについて聞くと、中静さんは目的にあわせて3つの使い分けをしていました。

試験などの対策
 →ESの添削、面接対策サービス
企業探し
 →新興の就職情報サイト
企業へのエントリー
 →特定のサービス使わず企業のサイトで直接

就活に向けて、ESの書き方、面接の練習などは、いわゆる就活コンサルのようなサービスを使い、企業探しには新興の就職情報サイトを使って口コミなどを調べました。

そして、企業への実際の応募。

多くの就活生はいわゆる「ナビサイト」を使っていたはずですが、中静さんは使いませんでした

多少時間がかかっても、試験を受ける企業ごとに採用ページから1社1社、経歴などの必要事項を入力しました。

4年 中静奎太さん
「ナビサイトを使う場合と比べたら、1社あたり5分から10分程度、よけいに時間がかかったと思います。それでも、ナビサイトに個人情報を渡したくないと思ったんです」

同じく実行委員のひとり、3年の松浦航さんはこれから就活を本格化します。

ナビサイトの利用登録はしましたが、サイト経由では企業にエントリーしないようにしていて、企業の採用ページから直接登録しています。

3年 松浦航さん
「就活の情報が学生にとって不利益になる使われ方をするのではないかと、不信感は拭いきれません。学生の間で『一部のナビサイトを使う場合は、そこからエントリーはしちゃだめだよ』という口コミを聞いたこともあります」

【脱「ガクチカ」】

学生が不安を抱える、個人情報の取り扱い。

三菱UFJ銀行は学生の情報の扱いを改めて考え直す機会にもしたいと、実験に参加しました。

三菱UFJ銀行 採用担当 諸鍛治聡さん
「さまざまな技術が発達する中で、自社にエントリーしてくれた学生のデータを分析し、よりよい採用を行いたいと思っています。ただ、もちろん厳密に情報は管理するものの、どこまで学生の情報を実際に得るべきか、学生の目線も重要です」

さらに、ただ個人情報の保護だけではなく、就活のあり方を変える期待感があると言います。

三菱UFJ銀行 採用担当 諸鍛治聡さん
「エントリーシートや面接で『学生時代に力を入れたこと』(“ガクチカ”)を聞きますが、企業が知りたいことと学生がアピールしたいことがズレていることがあります。このシステムでサークル活動なども含めて学生生活を網羅的に記録できれば、テンプレートのような『ガクチカ』を避けて、よりよい就活につながるのではないかと期待しています」

【就活をあるべき姿に】

よりよい就活に。

実験を主催する教授には、学生時代の学びを広く仕事でいかしてほしいという思いがあります。

慶應義塾大学 中妻照雄教授
「今までの就活は、大学生活をあまり気にしていませんでした。ある意味、ESに書いてあることがすべてになってしまっています。しかし、一見ビジネスとは距離がありそうな一般教養など、いろんな活動が実は仕事に役立つはずです。学んだ記録を残すことで、学びと仕事の関係性も見られるようになるかもしれません」
就活のために大学生活を送るのではなくて、学んだことを適切に評価されるようにしたいんです」

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