2021年05月11日
NHKの就活応援Twitterで自己肯定感に関するお悩みを募集したところ、数多くの投稿をいただき、想像以上に、この問題に苦しんでいる就活生が多いと感じました。
同じように就活のつらさを体験した学生リポーターの2人が、小児精神科医で自己肯定感の研究者でもある古荘純一先生にどう対処すればよいのか聞きました。
少しでも悩み解決の参考になればうれしいです。
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈)
具体的に就活生から寄せられたお悩みにお答えいただきたいのですが、1つ目はこちらです。
Twitterで寄せられた悩みの中で、自己分析や自己PRを書こうとすると思いつかなかったり、逆に自分の短所ばかりが思いつくという、悩みが一番多かったです。
自己分析で「あなたの強みは?」と自分に問うのですが、“私ができるものはみんなだってできるよな・・・”と感じてしまい、自分の強みや自己PRが浮かばなくなってしまいます。
そして、最終的に自分のことが嫌いでたまらなくなってしまいます。
(大分県・女性)
この悩み、気持ちがすごくわかります。
就活って「個を際立たせなきゃ」って思うんだけど、自分の強みを考えると「あ、これはありきたりだなあ」ってなっちゃうんですよね。
わかる。
思い返せば思い返すほど「いや、これもよくみんな言うわ」って、だんだん自分の強みが認められなくなって・・・、難しいんですよね(苦笑)
なるほど。そうかもしれませんね。
ただ、発想の転換をしてみてはどうでしょう。
強みのある人ばかり採ったらとんでもない会社になってしまうんじゃないかなと思いますよね(笑)
古荘純一先生:小児科医、小児精神科医、医学博士。青山学院大学教育人間科学部教育学科教授。小児精神科医として神経発達に問題があったり不適応状態の子供の診療を行うかたわら自尊感情を研究。著書に『自己肯定感で子どもが伸びる 12歳までの心と脳の育て方』(ダイヤモンド社)など。
強みのある人がいてもいいけれども、”ありきたりな人”は絶対必要なわけなんですよね。
確かに。
まずは、どんな自分であっても自分を受け入れて、「これでいいんだ」と思うことからスタートすることです。
それから他者からの評価に関して、それを過剰に受け入れない。
もうひとつのポイントは、過去のことを一旦切り離すということですよね。
自己分析は、過去を振り返って自分のモチベーショングラフを書いたり、いろんな出来事を思い返す作業が本当に多いんです。
就活中に、過去を振り返らないのって難しいと思うのですが・・・。
自己分析って、実際心理療法でやるとなるとかなりエネルギーが必要ですし、危険なんですよ。どんなに自信過剰の人でもこれをやるとシュンとすることがあって。
そうなんですか?
ネガティブな情報を思い出してうまくできなくなるのは、むしろ普通のこと。「みんなそうなんだ」と1回開き直った方がいいかもしれません。
自己分析をやるというのは、(就活の)方法としてどうかな。精神医学的には、負担が大きい人もいると思います。
でもESを書かないといけないので、やらないわけにはいかないというか……。
自己分析でつらくなってしまう方は、その場を切り抜けることを優先に考えましょう。
キャリアセンターなどに相談にいくと「これをこう書いてこう書いて」とテクニックや書き方を教えてくれます。
疑問を持つ人もいるかもしれませんが、その時点ではそれを受け入れて自己分析を乗り越えることもできますよ。
自分のいいところを思い出すにあたって、良い方法というか、良い時間帯とかはあったりするんですか?
朝に良いことを思いつくのでしたら朝にやって、夕方は考えないとか。朝だったら、朝って決めて、そこに集中するのも1つのポイントかもしれないですね。
では、こちらも多かった悩みです。
集団面接で自分とは比べ物にならない経験を流ちょうに話す人に出会った時、どうしても比較してしまい、自分の落ち度に目が行ってしまいます。(女性)
この悩み、私もすごく共感しました。
周囲の友人をみていると自分より何かしら優れていて、もし自分が面接官だったら私じゃなくてその友達の方を選ぶだろうなって、就活中ずっと思っていました。
他人と比べて自信をなくしてしまう時は、どうすればいいですか?
他の人がすごく見えるのは自分から見ての評価ですよね。その人が、面接官からも高い評価を受けるかどうかは分からないですよね。
確かに。
また、仮に面接官が2人いたとすると、プラスの面を評価する人と、マイナスの面を評価する人とかいろんなやり方で評価していますから、すごく優秀に見えた人のことを片方の面接官は協調性がないと評価しているかもしれない。
あまり自分の尺度で他人と比べない方がいいということですか?
評価するのは他者であって、自分はとにかくこれでいいんだという信念で進んでいくしかないと思います。
ペーパーテストと違って、自分のポジションが分からないから自分の感覚でものを見ちゃうし、すごそうにみえるとそれで自信をなくしてしまいます。
競争相手がすごく優れているように見えたときは、一旦すごい人がいたなって思ってしまっていいんですよ。
でも「評価する人は自分と違う尺度かもしれない」と自分とは切り離すようにするんですね。
仮に自分が一生懸命やって面接官が評価しないなら、その会社はそういう会社なんですから人と比べたりして落ち込む必要はないんですよ。
ほかに、なにかいい方法はありますか?
臨床の現場では、良いことや悪いことも起きたことを正直に日記につけてもらい、それを書くことによって自分から一旦切り離すことを勧めることがあります。
さらにそれを見せることができる相手がいたら、だれかに見てもらうことで切り離したよっていうお墨付きをもらうと効果的です。
一つの考え方の訓練ですよね。
私、毎日、日記を書いているんですけど、書いちゃうと、何か解決したわけじゃないけど、とりあえず自分の思いを吐き出し切った、みたいなことってあります。
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