2021年06月02日
就活を乗り切るためにも自己肯定感が低い自分をなんとかしたい。
そんな気持ちで毎日焦っている方も多いかもしれませんが、自己肯定感は高ければよい!というものでもないそうです。
小児精神科医で自己肯定感の研究者でもある古荘純一先生と一緒に考えてみました。
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈)
学生
勝島
取材前に伊藤さんとも話していたんですが、自分たちは、「自己肯定感が高いのか低いのか」、「普通がどのくらいのレベル」かわからないねって。
実は自尊感情を国際的な指標で調査すると、日本の子どもは、海外と比べて自己肯定感が低いんです。
古荘先生
こちらは自尊感情を測る尺度として使われる4つの質問です。
日本の小学校高学年ですと「自分に満足していることはほとんどない」「良いことはほとんど思いつかなかった」というのが平均的なんです。
つまり5段階評価で下から2番目がスタンダード。
えー。そんなに低いんですか!
海外でも思春期は3番目、真ん中あたりに下がるんですが、そこで下げ止まって持ち直します。
ところが、日本の子どもたちは10歳くらいから目立って下がり始めます。
そして、低いまま中高生になっても回復してくる傾向がありません。
学生
伊藤
なぜ日本は低いんですか?
おそらく日本人は「自分が主体的に行動したことを評価してもらい、自分でもこれでいいと思えた体験」が少ないのではないかと思います。
また、日本では同調圧力があって「自分のやりたくないことにはっきりノーと言いにくい」ですよね。
それと比べると、海外ではノーと言っても受け入れられやすくて、自己肯定感を保つことができるという部分もあるかと思います。
「自己肯定感が低い」ってどういう状態なんでしょうか?
例えば自己肯定感が低いと、「精神的にも、肉体的にもつらい状態」ですから、そこから離れようとするんですね。
具体的には、「何か/誰かに依存する」ってことが起こりえます。ゲームとか、アルコールとか、信頼できる人とか。
そうやって安定を保とうとするんですが、相手はそのつもりじゃなくても一旦冷たくされたって感じてしまうと相手が信じられなくなって、安定した人間関係が築きにくくなってしまうこともあります。
私自身、自己肯定感が低いせいなのかどうか気になっていることがあるんです。
よく周囲から「完璧主義だよね」って言われます。
確かに失敗するのが怖くて準備に準備を重ねてしまうんですけど、これは自己肯定感の低さに関係ありますか?
完璧主義でも、それで日常が過ごせていれば、他者の指摘をあまり気にする必要はありません。
ただ、それがツライってなってくると、自己肯定感の問題も出てくるかもしれないし、もっと進めば抑うつ状態になって、他者の介入が必要になる場合もあります。
私は、小さい頃のことを思い出すと周りに褒める人より怒る人の方が多かった気がします。
褒められた経験が少なすぎて褒められたことを純粋に受け止められないこともあって、それも自己肯定感の低さかなと思ったんですがどうなんでしょうか。
海外の心理学者によると、子どもの自己肯定感が育まれやすいのは、「ほめると叱るのバランス」が3対1か4対1くらいだそうです。
ただ、日本人の場合はあまり褒めない傾向にあるんですよね。
周囲から褒められても、いちばん褒めてほしい人からはいつも、頑張れと言われたり、叱られたり、“励まされる”っていう方は、自己肯定感が育まれにくいです。
思春期になって自分のアイデンティティが出てきた時に「自分って何だろうな」と思う方がむしろ普通です。
そうなんですね……。
ここまで、自己肯定感が低い状態についてお聞きしましたが、反対に「理想の状態」はどんな状態なんですか?
「高すぎず低すぎず安定しているのが一番いい」と思います。
人生、山あり谷ありでそれに対して、うれしいとか悲しいとか思うのはある程度当然です。
そういった中でも自分自身を保っていけるのがいちばんいい状態です。
高すぎるのもよくないんですね。
自己肯定感が高すぎるのも問題なんですよ。
協調性がないとか、すべて他の人のせいにするとか。
自分を全部、肯定してしまうと、他者との関係がうまく構築できないということが出てきて、社会生活上よくないとされています。
なるほど。わかる気がします。
それから、ちょっと褒められたら有頂天になって、ちょっと叱られたら低下するという不安定なタイプも生活に困難さがあります。
やはり安定しているのが理想かと思います。
自己肯定感が低いと問題が起きることはわかったのですが、私自身は、自分に満足していないからこそ頑張れたとか、努力できた部分もあるかなって思っていて。
そもそも自己肯定感が低いことってダメなんですか?
自己肯定感が低い面もあると思うけれども、ここまで頑張ってやってきた。
大学に合格した、就活もなんとか乗り切ったっていうことですね。
だから頑張れた面もあるかと。
「自己肯定感が低い=悪い」というわけでは、必ずしもないんですよ。
どんな自分でも自分自身でそのことを受け入れて、社会生活に最小限適応していればよいと思います。
低すぎるのは問題だけれども、低いからダメというより、自分の良い面も悪い面も受け入れられるかどうかが重要なのでしょうか?
そうですね。自己肯定感って、とにかく高めなきゃ!って思いがちですけど。
語源は「自尊」、自ら尊ぶってことですよね。
自分を大切に思う、それも難しければ「自分はこれでいいんだ」と思えることが必要なんじゃないでしょうか。
それがなかなか難しいんですけどね。
(自己肯定感が低いと)私なんか取り柄が何もない、と思う人もいますが、例えば朝ごはんは必ず自分で作って食べるってことも取り柄になるんです。
そういうことなんですか。
どこが取り柄なんだろうって思うでしょうけれど、これを1年、2年と忙しい時に続けるというのはすごく重要なことです。
取り柄を大上段に振りかぶって探すということじゃなく、小さいことでも取り柄としてあげていいと思うんです。
それを評価する、しないっていうのは他者の問題です。
就活では、自分の取り柄を絶対評価してくれないという企業であれば、開き直って、(その企業とは)合わないんだって考えればいいと思います。
自己肯定感は、幼少期の養育環境が影響しているとしたら、私たち20歳を超えてしまっているんですが・・・今からでも大丈夫、という回復方法ってありますか。
一つは、何か嫌なことがあった時に、過去にあった(同様の)つらい思いを思い出してしまうことがあると思うんですよね。
あります。
その時に、それは過去に起きたことだと切り離すことですね。
過去にこれを失敗した、恥ずかしい思いをしたというのを修正するのではなく、「希望」などに置き換えていくんです。
すいません、具体的にどういうことですか?
良いことをたくさん思いつくというのが、自己肯定感の指標にもなっていましたが、過去の悪いことを思い出してしまったら、それ以上に良いことを思いつくのが大事です。
それを、ノートに書いていってもいいし、誰かと一緒にやってもいい。
20歳を過ぎても変われる?
できます。
で、ポイントはマイナスのことは一度考えるのをストップしてみてください。
悪いことが起きるとそれしか覚えていなくなるんですけど、それと同時にプラスのことも起きていたけど、見えなくなっているってことがあるんですよ。
単純においしいものを食べたとか、よく眠れたとか、天気が良くて気持ちがいいとか、小刻みにプラスのことを発見していく。
臨床では、利害関係のない方とグループを作って、お互いいいところを褒めあって、褒められるとこんないい気持になるんだってことを体験してくださいとお話することもあります。
そうやって自己肯定感を育むのが実際的かもしれないです。
そうなんですね。
ちょっとしたことでもいいんです。
例えば不安な気持ちになってきたら、10分間気分転換でヨガをやるとか、寝るとか、軽い運動も結構いいですよ。
そこからでしたらできそうです。
ありがとうございました。
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