2021年04月13日
ベンチャー企業から成長し、大企業のリーダーとなった藤田社長。その過程で、社員への考え方が大きく変わったそうです。
「チームプレーができる人材が大事」、「ヘッドハンティングよりも、終身雇用が大事」と語る藤田社長。
「一緒に働きたい」と思う社員はどんな人ですか?求める社員像や採用基準も踏み込んで聞いてきました!
(聞き手:伊藤七海 西澤沙奈)
学生
伊藤
藤田さんが起業されたのは24歳、私たちと同じくらいの年齢ですよね。
そこからもう20年以上、ずっとリーダーをされている中で、いまのリーダーシップを作る、大きな出来事をひとつ挙げるとしたら、何ですか?
リーダーシップって、みんなを1つの方向にまとめることだと言いましたが、今は結構楽になったんです。
藤田さん
前編では、自らのスタンスを「サーバント・リーダーシップ型」と評する藤田さんが、なぜあえて2019年の入社式で新入社員に「No Pain,No Gain」という厳しい言葉を投げかけたのかを聞きました。
楽??なぜですか?
なぜなら、「この方針でいく」と僕が言うと、みんなが同じ方向を向いてくれるから。
威張ってる訳じゃなくて「藤田さんは、今までもちゃんとやりきってきたし、結果を出したし間違っていないだろう」とみんなに信じてもらいやすくなったんです。
年を取った人の方が若いリーダーより実績があるから、総じてみんなを1つの方向に向かわせて引っ張りやすいんです。
学生たち
なるほど。
24歳で会社を作った時は本当につらくて。
何の実績もないし、まだ海のものとも山のものともわからない僕が「こうだ」って言ってもみんな半信半疑で聞いているから、ちょっとしたことで離反していく。「もう、ついていけません」みたいな感じで。
多くの若い経営者がそこで苦しむんだけど、そうなってしまうと、リーダーの仕事ができていないってことなんですよね。
学生
西澤
ゼロから新しいものを作るとなると、全てが手探りだと思うんですけど、24歳の起業したての頃は、何を見据えてゴールを設定されていたんですか?
本当にざっくりとしたものなんだけど「すごい会社を作るぞ」ってことですね。
「ソニーやホンダのような会社を作る」と掲げてたんですけど視点を上げることが大事だと思ったんですよね。
これは、ソニーやホンダみたいな会社を死ぬ気で頑張って目指して、その10分の1でもできたらすごいんじゃないかってことなんですよ。もともと0だったんですから。
たしかに。でも大変そうですね。
大変なんだけど、大きく宣言すれば、8割達成でもその前と比べたら相当成長したという感じなんですよね。
目標が小さいと、仮に目標を100%達成しても結局は小さいままだという考え方をしていました。
その過程で、批判とか苦しいこともあったと思うんですけれども、いちばん辛かった出来事は何でしたか?
それはよく聞かれるんですけど「インターネットバブル」というのがあって、1999年ぐらいです。
想像つかないかもしれないけど、インターネット企業に投資が集まって、何を言おうがみんなにもてはやされて。
人は採用できるし、取引企業は増えるし、業績は伸びるし、株価が上がるしという、その時にどんどん大風呂敷を広げていったんですよね。
「サイバーエージェントは時価総額10兆円を目指しています」と創業2年目で言ってたんですけど、バブルが崩壊したら今度は何を言ってもネガティブに受け止められたんです。
結局、大風呂敷を若い時に広げるのはいいんだけど、回収しなきゃいけないですよね。
言うのはすぐ言えるし、メディアにもてはやされるんだけど、本当に実現するのは何年も歯を食いしばってやらなきゃいけない辛いことで、これがいわゆる責任かと。
そういう過程で、藤田さんご自身のリーダーシップが形成されたということですか?
そうですね。1998年に会社を作って2000年に上場し、2004年に初めて黒字化したんです。
つまり、6年間赤字だったんだけど、その間は、リーダーシップを取るのが相当難しかったですね。
赤字の会社でリーダーが何を言おうが説得力がないんですよね、「利益を出してないのに何を言ってるんだ」って言われてしまう。
「本当にこの会社が黒字化する時がくるのか?」と外部から言われ続けて、中にいる社員も動揺してしまって・・・。
そうなると、リーダーシップを発揮するのにも支障をきたすし、それでもやりきるしかないんだけど・・・、逃げ場がなかったですね。
そういう状況を乗り越える”ストレス耐性”とか”胆力”は、もともと藤田さんご自身に備わっていたものですか。
20代の頃にすごくたたかれたし、買収の危機にあうなど大変なこともあったので。
それを1回経験すると、それより大したことないなって、逆境に強くなるんですよね。
リーダーって孤独な存在なのかなって思うんですけど。これは企業じゃなくても学生団体でも、いい時も悪いときも目立ってほかの人にいろいろ言われてしまうし、どうですか?
全責任を背負ってるわけだから、孤独ですよね。最後は誰にも相談できないし。
それって何か寂しいかなって気もしたんですけど。
ただ、僕1人の方が、つじつまが合いやすい。決める人が2人いたらつじつまが合わなくなってくるんですよね。
会社の制度を決めたりとか進出する事業を決めたりするので、会社全体としてつじつまが合っているというのは非常に重要なんですよ。
何か決める時の軸ってどうやって培ってきたんですか?
うちは「21世紀を代表するすごい会社を作る」がビジョンなので、そこに対してプラスかマイナスかという軸で判断しています。
軸がないとリーダーは、決断のしようがないですよ。
逆に軸がない人たちはどうやって決めてるんだろうと思います。
僕は何の服を着るかの軸がないんで、ずいぶんと迷っちゃうんですよね(苦笑)
続いて、「チームワーク」について質問をさせていただきます。
チームが機能するために心がけている事ってありますか。
会社というのは、そもそも一人じゃできない事をみんなでやるために発明されたんですよね。
一人でビルは作れないから、みんなでチームになって、役割分担をしてビルを建設するというようなことです。
ですから、個人プレーは会社の中では機能しない。
なるほど。
そういう前提に立って会社を作っているので、やっぱりチームプレーが優秀な人を会社としては高く評価しているし、そういう人を大事にしていこうという考え方をしています。
そもそもサイバーエージェントは、規則をたくさん作ったり、社員一人ひとりの行動に対して細かく言ったりしないんですよ。
自由にしてもらう代わりに自己責任を前提にしているので、そのためにも基本的には「性格が良さそうな人」を採用しているんです。
性格が良さそうな人・・・
採用基準は“素直でいいやつ”。優秀でも、頑固でチームワークにそぐわない人は、基本採用しないようにしています。もちろん、例外もありますが。
そうなんですね。
テニスサークルに所属してカフェでバイトしてましたという普通の大学生が入社してきて、役割を与えられることで、すごいリーダーに育っていく例もたくさんあるので、素養よりも素直さとか性格の良さを重視しています。
チーム作りの上で失敗したなっていう経験はありますか?
ちょうど会社を設立したころ、社会的にかつての日本的経営に対するアンチテーゼがすごくあったんですよ。実力主義だとか能力主義が流行ってた時があったんですね。
そういう時代の空気感の中で、上場直後は高学歴で大企業出身者ばかり中途採用して、上層部に配置していったんです。
でも、そうすると新卒で入って頑張っていた社員たちが腐っていったんですね。
そういった失敗を経て、ヘッドハンティングで幹部層を採用しないって決めたんですよ。
外から持ってきた人を上に置かない。
そう。全くしないわけじゃないけど、ほとんどないですね。
中の人を育てて引き上げて、大型の買収もしない。あくまで自分たちで事業を作っていく。
新卒を育てるということですが、藤田さんはリーダーとしてどんな新卒の人たちと働きたいと思いますか?
やっぱり、人がいちばん影響を受けるのって“人”なので、周りの人が優秀でやる気があるのがいちばんいいですよね。
優秀でやる気がある人の中に入ると「自分もついていかないと!」とか「その中でも頑張らなきゃ!」って思うものなんですよ。
その一方で「そこまで働く必要ないんじゃない?」っていう人が周りにいると「その中ではましだ」と考えたり「自分はやる必要ない」と影響を受けてしまうんですね。
だから、「やる気がある」というのが非常に重要で、「優秀でやる気がある」のであればいちばんいいですよね。
なおかつ、先ほどおっしゃってたように、人がいいとか素直さとかも大切になってきたりしますか。
サイバーエージェントも会社規模が大きくなってきたので・・・、規模が小さい時は同質性が高い組織でもよかったと思うんですよね。
でも今は、規模が大きくなり、ダイバーシティの時代ということもあって、いろんな人を採用しています。
頑固でひねくれている人も、頑張っている“素直でいいやつ”と一緒に働いていると、そっちに影響を受けていくんですよね。だから大枠が“素直でいいやつ”であれば問題ないですね。
そういう人もいらっしゃるんですね。
マジョリティがどちらのタイプかというのはすごく気を使っているけれども、会社を一色に染めようとはしていないですね。
チームを構成する時に、どうしても自分の居心地のいいメンバーばっかり集めたいって思っちゃうんですけど。
例えば嫌いだなとか苦手だなとかって思う人を遠ざけたり、好き嫌いによって自分のチームの構成を決めたりとかはしますか?
基本的に人って、「自分のことが嫌いな人は嫌いなんだ」と思ってて。
例えば、上司が「君の事をとても評価しているよ」って言ってくれたら、その上司のことを好きだってなるものなんですよね。
という目線で見ると、好き嫌いというのは、どうとでもなると。
では、藤田さんご自身は社員の方たちに肯定する感じで、接しているんですか?
上場直後は、実力主義で外から大量に人を採って社内が荒れていたこともあったのですが、その3年後に(新卒で採用した)社員を大事にしようという方針に切り替えたんです。
採用にお金を使うんじゃなくて、福利厚生を強化して、社員が長く働けるような環境を整えるためにお金を使った方がより効果的だと。「終身雇用を目指します」と宣言して。
そうだったんですね。
会社が「来るもの拒まず去るもの追わず」みたいな感じだと、社員も「我々もいつまでこの会社にいるか分かりません」みたいな感じになるんですよね。
けれども、「社員を大事にします」って言ったら、社員も「我々も会社が大事です」って言い始めたんですよ。
こっちが「大事だよ」っていうのを示したからということですか。
示したからですね。今では、愛社精神が強い人が多いです。
それこそ「終身雇用目指します」って、今じゃあんまり聞かないワードですよね。
当時「終身雇用をやってるから日本企業は落ちぶれたんだ」と否定する空気感があったんだけど。
我々のような新しいIT企業があえて言ったことで、結構真剣に受け止められたんですよね。
そこは、今も変わらないスタンスですか?
今も変わっていないですね。ただ、それを決めたのが20年前で、当時の最年長は僕だった。
そんな僕も、今、47歳と、社内でまだ誰も定年に達していないんですよね(笑)
あ、そっか…(笑)じゃあ当分はとりあえずこのままなんですね。
では最後に、今までの話をまとめた形で藤田さんにとって「チームワークとは」をひと言で教えていただけますか?
うーん、じゃあ「忠誠心」かな。
改めてこの言葉に込めた思いをお話しいただけますか。
個人のキャリアが大事とかスキルが重要とかいろんなことを言われる時代を経て、改めて会社の目的を考えると。
「みんなで力を合わせて一つのことを成し遂げるため」に会社があり、「自分がそのチームの一員であるという忠誠心とか所属意識がいちばん大事」だと思います。
その上での、自分のキャリアなんですよね。
チーム力が高いと、自分のパフォーマンスも上がるので、「所属意識をもって仕事をした方がいい仕事ができるし、それが自分のスキルにつながる」んですよ。
学生たち
きょうは、お忙しい中、ありがとうございました。
「リーダーシップとチームワーク」藤田社長に「新入社員に伝えたいこと」を聞いた前編は、こちらからご覧ください。
編集 吉岡真衣子
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