就活ニュース

ギモンその⑾「新卒カード、大事ですか?」

2021年03月10日

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大事にしたい“新卒カード”。そんなふうに思っている就活生も多いと思います。でも、就活のプロであり、社会人の先輩でもある専門家たちの意見はちょっと違います。常識だと思っていたことを、いったん脇において、人生100年時代の働き方を考えてみませんか?
(聞き手:石川将也(3年) 勝島杏奈(4年) 司会:石井隆広NHKアナウンサー)

 

 

石井アナ

「新卒カード」という言葉、勝島さん、聞きますか?

学生4年
勝島

よく聞きます。

私の周りでもポテンシャルで採用してもらえるのは今だけだから、最初に入るなら大企業のほうがいいっていう友達が多いです。

なるほど。石川さんは?

学生3年
石川

僕は、親から新卒だし安定しているし“大手企業に行きなさい”という感じで言われます。

2020年12月2日 NHKプラスクロスSHIBUYAで取材、収録。
【4社にお答えいただいた「就活のギモン 2022卒」の内容は、動画版もあります!「就活ゼミ」→「就活ニュース」→「動画」からチェック。就活関連の動画は、NHK公式YouTubeなどでもごらんいただけます!】

「コロナだし、この先どうなるかわかんないから大手にしてね」って。

なるほど。結構、学生の間でも話題になるテーマかもしれないですね。じゃあ皆さん回答をお願いします。

全員が×の回答でした

皆さん、ベンチャーより大手を中心に受けた方がいいという問いは「×」。

では、理由を聞いていきましょうか。増本さん。

問いが難しくて解釈もいろいろあるなと思うんですけど、まず、これから長く働く期間の中で“自分自身がどうありたいか”ってことが前提にないと選択しづらいと思います。

増本さん

大手企業に入ったからといって好きな仕事ができるとは限りません。総合職で入ったとすると、自分の意志ではないところに行くケースもあります。

一方で、その後ジョブローテーションでいろんなことを経験できるメリットもあると思います。

ベンチャーに行ったら、かなり幅広くいろんな業務を、それなりの裁量権を持ちながらやってほしいと思われるでしょうし、やる権利をもらえるとは思うんです。

どっちがいいと言うよりかは、本人がどういう選択をしたいかっていうところだと思います。

中野さんはどうですか?

学生さんって、結構大きな規模の会社もベンチャーだと思っていることが多いなと思います。

中野さん

100〜200名の会社でも(学生は)“ベンチャー”って言うんですよね。

でも、IT業界で従業員100名だと、だいぶ規模が大きい会社ですよ.

学生は規模が大きい企業も「ベンチャー」と捉えているケースが多いと語る中野さん

なるほど、ベンチャーの定義が違っていると。

もう一つ。転職するときに、「大手からベンチャーが行きやすいか」、「ベンチャーから大手が行きやすいか」っていうのがあって。

これは、昔とは違っていて、今は、大手企業からベンチャー企業に転職するのって難易度が高いこともあるんですよ。

そうなんですか。

なぜかというと、ベンチャーって(企業を)どんどん成長させていくフェーズなので、大企業でずっとやっていた文化とは合わないことがあるんですね。

たしかに。

逆にベンチャーから大手に行くっていうことは結構あるんです。

実例で言いますと、うちの会社のマーケティング部でやっていた人が誰もが知る大手企業に転職したり、エンジニアでも外資系のGAFAに転職したりとか。

チャンスは(就職した)後にもたくさんあるので、ベンチャーに入るか大手に入るのかより、そこで何をやりたいのかをしっかり考えていくのが、いちばんいいと思います。

「新卒カード」は昔はあったと思うんですけど、今はもうだいぶなくなってきててっていうのが実態だと思います。

勝島さん、どうですか。

ベンチャーに対する考え方が少し変わりました。

寺口さんに、ぜひお聞きしたいことがあります。

新卒で大手銀行に入られて、その後、何度か転職されて今のお仕事をされていると思うんですけど、大手の企業にはないベンチャーの魅力や良さってどういうところにあると思いますか?

これは僕が感じたことで良いですか?

寺口さん

はい、お願いします。

ベンチャーって変化率が大きいんですよね。僕は(企業の)規模より、変化率のほうが個人のキャリアにとっては大事だと思っています。

その企業の売り上げが去年から105%伸びているのか300%伸びているのか、90%になっているのかって、仕事内容にめちゃくちゃ影響するんですよ。

事業の伸びに対して、人が常に追いついていない状態の会社のほうがいいのか、事業の下降に対して人が余っちゃってる状態の会社に行ったほうがいいのか、どっちが皆さんの経験としての価値が高いのか。

そう考えると、規模より(変化率の)傾きの方が重要ってことに転職して気づきました。

変化率っていうのは初めて聞きました。

会社にもよるかもしれませんがベンチャー企業では「一生いなくても大丈夫だから、いる間にちゃんとどこでも活躍できる人になって、卒業したい時に卒業してね」っていう企業も珍しくないですよ。

フェーズが変わると、活躍しやすい人の特徴も変わる。だから個人の資産も同時に貯めて選択肢を持っておいてもらう方が双方にとって健全なんです。

なので、例えば僕がこのイベントに出演していて、それを個人SNSで発信していいのかどうかというと、僕はいいんですよ。そういう考え方の会社だから。

でも、会社によっては個人のSNSはダメってなるかもしれない。

個人の資産にもしていいのかダメなのかっていうところで、僕は個人の資産も貯めたかった。

で、個人の資産を貯めて、それを会社にお返しする形で給料をもらったら、両方ハッピーじゃないですか。

依存しあうんじゃなく投資しあう会社との関係を築きたかったので、僕は今の方が幸せ。

高橋さんは社員数の多い会社でいらっしゃいますが、ベンチャー、大手それぞれの良さがあると考えていいわけですかね?

そうですね、私もマイナビに入ったときの社員数は400人くらいだったんですよ。それが気がつけば1万人くらいになっていたので、企業がどう成長していくかっていうのはなかなか予測できないです(笑)

高橋さん

石川さんのご両親が就職活動をした時と比べますと、大企業の価値も変わっていると思います。

例えば時価総額のランキングでいっても、20年後にどう変わっているかっていうのは誰も予測できない。

皆さんは社会に出てあと50年働かないといけないんですよ、70歳位が定年だと思いますので。

「自分がどう成長できるか?で企業の判断を」と語る高橋さん

だとすると、どういうキャリアを積んでいくのかっていう考え方で仕事、企業を選んで欲しいと思います。

大手/ベンチャーの二択というより、どのように成長できるか、そういう企業かどうかという判断をされた方がいいと思います。

石川さん、どうですか?

コロナ禍のこの状況でベンチャーっていうのは先行き不透明でちょっと怖いなって思っちゃうんですけど、そんなこともないんですか?

ベンチャーでひとくくりにすると、その中にも様々な業種のベンチャーがあるので、コロナ禍の中でも急成長しているITもあります。

ベンチャーだからっていう解釈じゃないほうがいいと思いますね。

規模が大きくても部門によって伸びてるところは伸びてますしね。伸びてるか伸びてないかっていうところが重要なんじゃないかと思います、やっぱり規模というよりは。

ただ、伸びるから成長できるかっていうとそうでもなくて。業績が下がってしまったとしてもその状況でしか得られない経験とかスキルとかもあります。

今後、成長する企業に就職したいっていう気持ちもわかるんですけど、どの企業が成長するのか、それは誰にもわからない。

自分の強みであったり、やってきた経験が少しでも生かせる場所が自分の成長できる場所であるという基準で選んだほうがいいと私は思います。

あとは、今、変化がすごく大きいじゃないですか。新しい親孝行の方法で、変化の激しい時代に慣れている皆さんが、親御さんにその変化に慣れさせてあげるっていうのがあると思っていて。

「可愛い子には旅をさせよ」って言いますけど、正直怖くて旅なんてさせられない精神状態だと思うんですよ。

これは僕の経験なんですけど、僕が(新卒で入った)金融機関を辞めた時に親は結構びっくりしてました。

でもその次に、新卒で金融機関に就職した弟も辞めて農業を始めたんですよ、いきなり。

転職を親に告げた時のエピソードから語る寺口さん

母親は僕の時はすごくびっくりしていたんですけど、次男の時は「え、なに、メロン?買うわ」みたいな感じで。

僕、その時に、親が必要以上にびびらなくなって嬉しいなって、ひとつ親孝行をした気持ちになったんですよね。

なるほど。

僕は起業する前に大手の人材系の会社に10年くらいいたんですけど、実は入社したのはそこじゃないんですよ。

最初は300名くらいの規模の会社に入社したんですよ。それが買収されて、あれよあれよという間に5000人規模の会社になったんですよ。

最初は僕もびっくりしました。朝起きて日経新聞を読んだら買収の話が載っているんですよ。

父親が「お前、会社が買収されとるぞ」って。それが朝起きたときの声だったので「何それ?」って思ったんですけど(笑)

勤務していた会社が買収されてどんどん規模が大きくなったという中野さん

会社が買収されるって普通、悪いことのような印象があるじゃないですか。

でも、僕の体感では、どんどん良くなっていったんですよ。会社が右肩下がりの時ってやっぱり会社の中(の雰囲気)が悪いんですよね。

何回か会社が買収されて変わったんですけど、(雰囲気は)良くなっていって働く人にとってはすごくプラスだったんですよ。

就職活動をしていると、どこに入るかって言うことがどうしても主眼になっちゃうんですけど。

“自分が何をやっていきたいか”ということを大事に考える方がすごく重要だというふうに感じます。どうでしょう?

自分の目線でやっぱり考えないといけないんですね。

企業の規模とかじゃなくて今、自分のやりたいことに落とし込んで仕事選びをしなきゃいけないなと痛感しました。

ベンチャーとか大手とかの枠組みと言うよりかは、将来を見据えた上で自分がどうありたいかを考えるのが大事だなと思いました。

組織っていうのはどんどんフラットになってきているとは思うんですね、過去よりも。

安心安全を組織だけに求めるのではなくて、自分の力をつけて自分自身で安心安全を手に入れる考え方にどんどんなってきているなと思います。

自分自身が安心安全を手に入れるために何を磨く必要があるのか、どんな場所を選ぶ必要があるのかって考えてもらえると良いなと思います。

すでに働いてる身としてもすごく考えさせられましたね。ありがとうございます。

編集 吉岡真衣子

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