2020年10月14日
対面の機会が大幅に減った21年卒の就活。企業研究の情報源として、企業の採用ホームページの重要度がぐっと上がりました。学生に興味をもってもらいたいと各企業が工夫を重ねていますが、学生からの好感度が高かった2社に、今年就活した学生リポーターが、どんな工夫をしているのか取材しました。
(聞き手:勝島杏奈 田嶋あいか)
取材の出発点は、こちらのアンケート結果でした。
就職情報会社ディスコが実施、回答したのは、来春卒(2021年卒)の学生たちで、終わったばかりの就活を振り返っての結果です。
(調査期間:2020年7月10日〜15日、有効回答数1115人)
結果は……
上位の企業の票数差はわずかですが、ソニーが1位、NTTデータが2位でした。
今回お話を聞いたのは2位のNTTデータです。
採用ホームページの好感度ランキングは、2002年卒から続いていますが、
NTTデータは、2015年卒でも2位。昨年はランク外でしたが、今回久しぶりに2位に返り咲きました。
学生
勝島
今日はよろしくお願いします。2位という結果をどう受け止めましたか?
弊社では「すごくうれしいね」と「ちょっと意外」の2つの声があがりました。
升田さん
学生
田嶋
意外ですか?
はい。実は、サイトをリニューアルしたのは2014年なんです。毎年内容は更新しているのですが、見せ方は変わっていません。
そのなかで、私たちの情報発信が学生さんの目に留まったということで、とても嬉しく思います。
こちら、アンケートで学生から寄せられたコメントですが感想はいかがですか?
狙い通りでよかったです。IT業界、かつBtoBの企業なので、学生のみなさんに正しく理解してもらえるよう丁寧に説明することを心がけました。
嶋方さん
なるほど。それはサイトのどの部分に表れていますか?
たとえば、この『NTTデータを知る』の“WHAT’S SI”の部分です。
「IT業界って?」、「SI(システムインテグレーター)って?」というそもそもの部分を細かく説明しています。
教科書のように分かりやすいです。
他の企業さんの採用ホームページを見ていると、自分たちの会社に興味を持っている方を対象として情報発信している会社が多いように思います。
どう違うのでしょうか?
私たちは、そもそもIT業界とはどのような業界なのかを示したうえで、会社情報やサービス内容等を説明することを意識しています。
例えば、事前情報がない学生さんがふらっと見に来ても理解できるような、学生さんの理解度に応じて情報収集しやすい内容にしています。
IT業界とかSI企業 への理解を深めるには有効だったのかなって思います。
ほかには、このようなコメントもあがっています。
これも狙い通りですね(笑)
たとえば、この『ABOUT』の部分では、IT業界に関する説明に加え会社の事業内容やビジョンを理解してもらえるような形にしています。
どんな学生向けに載せたのですか?
弊社についてあまり知らない学生さん向けですね。
少し読み進むと、具体的なプロジェクト内容を掲載しています。下にスクロールしていくほど会社の細かな情報になっていくので、より詳しく知りたい学生さんに見ていただければと。
上から順番に読み進めると理解が深まっていく仕組みなのですね。
その通りです。学生さんがスムーズに情報を取得できるように掲載しています。
面白いです。そういった意図があったとは。サイトの見方が変わります。
ホームページを作る上で、さまざまな工夫をされたと思うのですが、特にこだわった点を教えてください。
やはり情報量の多さですね。
確かにかなりの情報が掲載されていますよね。
でも一方で、情報が多すぎて読みづらいという一面もあると思うのですが…。減らそうとは思わなかったんですか?
あえて少なくするというのは考えていなかったです。
実際にアンケートを取ると「ホームページの隅々まで読みました」という声が多かったので、みなさんここからも情報を取って活用しているのだなと理解しています。
その代わりに多くの情報をどうしたら見やすくできるかを工夫しています。
たとえば、記事を対談形式にしたり、図や絵を積極的に活用して視覚的に分かりやすい内容にしたりすることを心がけました。
その見せ方というところでいくと、「イメージで伝える」というのが最近のトレンドでもあります。
どういうことですか?
たとえば、この『ダイバーシティ&インクルージョン』の部分を見てください。
ここでは多様な人が一緒に働いているということを写真からイメージしてもらって、その上で詳しく知りたい場合は別ページに飛んでもらう形になっています。
なるほど。たしかに瞬時に情報が入ってきますね。
個人的に『キーワードで知るNTTデータ』の部分が面白いなと感じたのですが、これらのキーワードはどのように選定されたんですか?
基本的には会社が大切にしていることや会社の方向性が伝わるようなキーワードを選んでいますが、一番の目的は学生さんの誤解を解くことです。
誤解ですか?
そうです。「NTTデータ」と聞くと、学生さんには「古くからあって国との繋がりがある堅い会社」というイメージを持たれがちなんです。なので、そういった誤解を解くことを狙いにしています。
海外拠点の数が53か国も!ここまでグローバルな会社だとは知らなかったです。
実はグループ会社含めて社員の3分の2が外国籍なんです。
学生たち
そうなんですか!
先進的な技術も紹介していますが、その他に文系の方の活躍など、学生さんにとって意外な一面を意識的にPRしています。
そもそもどうして採用ホームページをリニューアルすることになったんですか?
リニューアルをした当時、採用広報の開始時期が12月から3月に変更になりまして、準備期間が少し長く取れることになったんです。
毎年、内定者の方に採用ホームページに関する詳細なアンケートを取っていまして。
「専門用語の意味を丁寧に説明してほしい」、「レイアウトが分かりにくくて必要な情報にたどりつくまでに時間が掛かる」、「キャリアの積み方について、多様な社員の事例を知りたい」などの課題点が上がっており、そのタイミングでリニューアルしました。
確かに、採用ホームページについては、内定者に聞くのが一番有効ですね。
採用ホームページは、何名で担当されているんですか?
だいたい2名ほどですね。
え!?
想像以上に少なくて驚きました。
(リニューアル以後の)毎年の更新ではもっと少なく、メインの担当者は1,2名です。
嶋方さんも担当されたんですか?
はい。私は去年の10月に異動してすぐに1人で採用ホームページの更新作業を(笑)
何が一番大変でしたか?
1つの記事を掲載するにしても方向性や意識のすり合わせなど、さまざまな方と調整しなければいけないことがありました。そういった細かい作業を複数並行して行うのは大変だったなと思います。
あと、2014年度のサイトのリニューアル時にはスマホでの見やすさも考慮しました。
それまでは基本的にパソコンなどのウェブブラウザで見るのが前提だったのですが、みなさんスマホで情報収集するようになってきたので。
そうですね。私も就活のとき、面接の直前までスマホで採用ホームページを確認していました。パソコンとスマホとで何か変えているんですか?
どちらも同じ見え方になるように統一しています。
なるほど。
それまではパソコンとスマートフォンで配置が変わってしまう部分があったんです。
パソコンだったらここに書いてあったのに、スマートフォンだとどこに書いてあるのか分からなくなってしまうと困りますよね。
あーそういうときあります。しかも面接直前にそうなると不安になりますね。
やっぱり就活生はホームページに書いてある情報を全部読むべきですか?
いや、全然それは求めてないですね。
え!?そうなんですか。マストかと思っていました。
もちろん、読んで頂いた分だけ情報収集はできるような作りになっていますが、それと同じくらい大事なのは生の社員の声を聞くことだと思います。
実際にセミナーに行ったり、OBOG訪問などをしたりして、自分で情報を取って理解を深めてほしいと思っています。ホームページは補足情報として使っていただければ十分です。
実体験が大事なんですね。
そうです。やっぱりホームページは一方的な発信に過ぎないので、自分が知りたいことを社員の方とインタラクティブに話してほしいなって思っています。
「それって本当なの?」って、自分の納得がいくまで情報収集と理解を進めてほしいです。
コロナ禍で生の声を聞くのがなかなか難しくなっているんですが……
オンラインでもOBOG訪問を受けています。リモートではありますが、顔を合わせてみなさん自分の聞きたいことを聞き出していますよ。
ちなみに、面接するときに学生がホームページをチェックしているかどうかは分かるんですか?
分かります(笑)
分かるんですね!(笑)
ホームページに書かれていることを細かく話してくれるとよく見てくれているなと思います。
ただ、見てるよアピールというより、自分が興味を持っているポイントを強調したいときにその言葉を使った方がいいです。目的と手段が逆にならないようにしてくださいね。
コロナの影響で先行き不透明な状況ですが、2022年卒の採用はどうなりそうですか?
コロナ禍であっても、むしろ人が足りないくらいです。
コロナ影響もあいまって、社会的にデジタル化の必要性が高まっており、それをサポートする仕事がかなり増えています。現在のビジネス状況だと、採用人数を大きく減らす予定はないですね。
それを聞いて就活生も安心できると思います。
最後になりますが、今後目指すところはありますか?
オンライン化が進む中、学生さんが一番気軽に情報を取り入れられるツールとして採用ホームページがあると思います。
なので、引き続き「採用ホームページを見れば分かるよ」という状態を作り上げていきたいですね。
次回は、採用ホームページ好感度ランキングで1位だったソニーに、ホームページで伝えたかったことを聞きます。近日公開予定。
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