2020年05月13日
新型コロナウイルスの影響で、思い描いていた就活スケジュールがめちゃくちゃになってしまった焦燥感。不要不急の外出を控えて…、ソーシャルディスタンス…、周囲から孤立した不安な気持ちに直面している就活生は、どう心をケアしたらいいでしょうか?学生リポーターが、学生相談の専門家おふたりにオンラインで取材しました。
(聞き手:伊藤七海 佐々木快)
学生
伊藤
よろしくお願いします。おふたりは学生の相談を実際にされているとうかがいました。
私は神戸にある甲南大学なのですが、非常事態宣言が出るとわかった時に学園のコロナ対策本部の方に願い出て、支援の継続が必要な学生さんに対する相談業務の継続を例外的に認めていただきました。
高石さん
電話相談をメインに、今も朝から夕方までずっと相談を受けている状態です。
高石恭子さんプロフィール
甲南大学文学部教授/学生相談室専任カウンセラー。日本学生相談学会理事長。臨床心理士。精神科病院の心理士、母子療育教室のセラピスト等を経て、1989年より甲南大学で学生相談に従事。
東京大学はオンラインで4月はじめから授業が始まり、新入生は対面しないまま大学生活が始まりました。
高野さん
相談は、新型コロナウイルスそのものというより、コロナの影響で色々変わらざるをえなかったことに関連するものが多いですね。
高野明さんプロフィール
東京大学相談支援研究開発センター准教授。学生相談所長・ピアサポートルーム室長。臨床心理士。日本学生相談学会事務局長。2002年東京大学学生相談所、2005年東北大学学生相談所を経て、2009年より現職。
私の大学は神戸ですので、阪神・淡路大震災の時にも相談に応じていました。その際も渦中にある時はまだカウンセラーにじっくり相談するというタイミングではなく、何ヶ月かして増えてきました。
新型コロナに関しても、もうしばらくして相談が出てくるのかなって予想しています。
きょう(5月8日)、ANAが採用活動を一時見合わせるというニュースが流れました。
NHK NEWSWEBに掲載された全日空が採用活動を一時中断の記事
自分の志望企業が突然採用を見合わせるとか、自分ではコントロールできないところで大変なことが起きてしまって無力感を感じている人がすごく多いと思うんです。
3月にも一つ上の学年の学生さんで、就職目前に内定取消しにあって、人生が変わってしまったというニュースがありましたね。
はい。
本当に何のせいにしていいのかわからない、心理学的に言えばトラウマ体験だと思うんですね。
まずは周囲の方が「休もう」「次のことはもっとじっくり時間をかけて立て直そう」と寄り添うのが一番必要です。
人間はなかなか、ダメだったからといってチャンネルを切り替えるみたいにパッと前向きになんてなれないんです。
無理にそういうことをしてしまうと、何年も経ってから、トラウマの反応が心の病として出てきたりすることもあるんですよ。
そうなんですか?
不運に見舞われた時はまず、そこに踏みとどまるってことしか人間にはできないんじゃないかって、私は思っています。
学生
佐々木
トラウマは、これから学校が始まってからも時間をかけて出てくると思うとすごく不安になりますね。
我々の人生でももう一度あるかないかみたいなことが起きている状況だと思うんですよ。ストレスに晒されて、いろんな反応が出てくるのは自然なことだから、そこを責めないっていうのが大事かなと思います。
新型コロナウイルスの影響がいつまで続くのか…、就活のスケジュールが見通せないのがつらいです。
ゴールが見えていたらそこまで頑張ろうって思えるんですけど、それがわからない中で自分の気持ちを保ち続けるのが難しいです。それとも無理に気持ちを保とうとしなくてもいいのでしょうか?
いつ頃になったら内定のピークが来るのかもよく分からない状況ですよね。
そうなんですよ。
例年であれば、3月~5月が就職活動の山場ですよね。
早くから準備して3回生(3年生)の夏秋からインターンシップに参加していた学生さんたちもいらっしゃいますけど、最終選考を残して、「次は6月ね」なんてポーンと2ヶ月くらい先送りされてしまったり…。
通常のペースで春休みからやろうと思っていた学生は、はじめた途端に合同説明会も全部無くなって、やることを取り上げられてしまった。そういう状況でモチベーションを維持するのは一番困難ですよね。
そうなんです。
たとえ、今までの選考に残っていたとしても、延期された最終選考でダメになる可能性もあるわけですから。じゃあ何ができる?と考え出すとどうしようもない気持ちになるってことなんですね。
まさにそれです。
私、思うんですけどね。ここが山場だ、ゴールだと思ってそこを目がけてモチベーションとテンションをぐーっと上げていったのに、そのゴールが突然消えてしまって困惑しているのは、まさにアスリートの方々の今と同じだなと。
たしかに!
オリンピックを目指してきた選手たちもそうですよね。この夏にむけてそこにピークを持っていくために何年間も準備をしてきて、直前でゴールがどこかへ行っちゃったという状況になってしまいました。
NHKの特設サイト「アスリート×ことば」では、思わぬ困難を乗り越えたアスリートの言葉を集めて掲載。
ですから、アスリートの方たちが発信して下さってることは参考になると思いますね。
そういう視点ではみていませんでした。
社会貢献活動をして、いろいろ社会に発信して下さっているアスリートがたくさんいらっしゃるんですけど、人に役立つことをこの宙ぶらりんの期間にやってみるっていう発想の転換もとても意味があると思います。
就活をゴールにしないで、人の役に立つってことも念頭に置いて行動することで、結果的にうまくいくかもしれないですね。
「人の役に立つ」というのは、実は、無力感を克服するすごく有効な手立てなんですよ。
あと、気分を変えるにはどうしたらいいですかね。不要不急の外出を控えてとなると、どうしても…。
わかります。どうしてもこもりがちな生活で、変化が少なくなりますよね。いろいろ出かけるというのは難しいですが、リズムを整えて、オンオフの濃淡を考えていくのがいいと思いますね。
具体的にどうやってリズムを作ればいいですか?
そうですね…。
時間をコントロールするのって、学生には結構難しいんです。みんな昼夜逆転してるって言ってます。
そうだよね。自分も本当にそうなってます。
オンライン飲み会とかやっても、帰らなくていいので永遠に続くというか。
いやー、しんどいですね(笑)
あれは良くないですね。終電を気にしなくて大丈夫ですからね(笑)
学生さんがそのまま使えるか分からないですけど、うちの職場は、いま、みんな在宅勤務になっていますが、朝礼とか夕礼とか、毎日、定期的に、ちょっとだけオンラインで集まって話しているんです。
定期的なものがあるとリズムが作りやすいんですね。
学生でも“朝活”じゃないけれど、朝にちょっとだけオンラインで集まって、「元気?」「今日も1日頑張ろうね」ってやり取りするのもいいかなと思いますね。
人と接する習慣からリズムを作るってことですか?
そうですね。人と交わることが習慣になるような。そして1日のスタートにもなることができるといいと思いますよ。
▽新型コロナ影響直撃の就活!「最新の内定率は?」はこちらからごらんください。
▽新型コロナウイルス直撃の就活「採用活動は継続?止まってる?」はこちらからごらんください。
次回は、繋がりが薄くなった状況で心身に起こる反応とその対処の仕方についてお話いただきます。近日公開予定。
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