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IRを読んで企業に詳しくなろう!実践編(1)統合報告書を読んでみる

2020年05月12日

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IRって最近よく聞く、なんとなくは聞いたことある…だけど、膨大な情報の中から情報をどうやって読み取ればいいんですか?知っておくと差がつくIR。実践編も、日本IR協議会の佐藤淑子専務理事に、教えてもらいました。
(聞き手:伊藤七海 田嶋あいか 高橋薫)
※新型コロナウイルス感染拡大前に取材しました

文章情報もデータも……なんでもわかりますよ!

学生
伊藤

IRには、膨大な情報があるじゃないですか?例えば、企業のことを総合的に詳しく知りたい場合、どのポイントを押さえればいいんでしょうか?

統合報告書という、企業の財務情報に、中長期の目指す方向を示す非財務情報を組み合わせた資料があるんです。

佐藤さん

統合報告書について詳しく説明してくださるのは、日本IR協議会の佐藤淑子専務理事

統合報告書が見つからなかったら、アニュアルレポート(年次報告書)を探してみてください。もともと財務情報が主体だったんですけど、今は非財務情報も載せています。

これにCSRリポート(企業の社会的責任に関する報告書)とか環境報告書を「統合」したものが統合報告書のルーツなので、アニュアルレポートでもかなりの情報が得られます。

学生
高橋

どんな特徴がありますか?

かなり長期的な時間軸で、何をするかとか、どこに向かっていくかっていうのが書いてあります。

学生
田嶋

どれくらいの時間軸なんですか?

最低10年かな。グローバル企業が最近取り入れている思考法の一つで、バックキャストというのがあるんですよ。

10年後にあるべき姿をまず決めて、逆算して今、何をするかを考えていくという。就活でもよく聞かれない?

就活ではよく聞かれますね。10年後、何をしたいですか?とか。

でしょ?統合報告書では、企業が目指す姿に向けてのロードマップが示されているんです。例えば、こういう目標を立てて、経営者はどんな課題を感じて、こういう対策を打っていますとか。

ベースには企業が成長するためには、社会そのものが持続することが大切、っていう考え方があって、だから長期的に将来を予測して、どんな社会的ニーズに対応すれば、企業自身が成長を続けていけるかを見極めるんですね。

なるほど。

ただ、まだ作っている企業は、アニュアルレポートと合わせても400社くらいなんです。

そんなに多くないんですね。

統合報告書の作成が始まったのは2014年ごろですから、歴史はまだ浅いです。もしかしたらみなさんの志望企業が作っていないこともあるかもしれませんね。

でも、作っていれば持続的成長はできるのか、とか、企業の強みや弱み、リスクの認識など判断の軸となるものをデータと文章情報の両面から読み取ることができます。

統合報告書ってどのくらいの分量があるんですか?

結構あります。全部を読むのは厳しいかもしれませんね。

その中でも、就活生がここだけは読むべきというポイントはありますか?

中長期のリスクと機会、かな。例えば、前回ちょっとご紹介したアサヒグループホールディングスの2018 年の統合報告書を見てみると……

アサヒグループホールディングス・ウェブサイトより

44ページからの中期成長戦略。46ページに事業環境の中長期見通しが載っていて、<ビール類市場規模推移>を見ると、主力事業のビールの売り上げは下がっている。

で、その下の<各種規制の動き>にちょっと書いてあるんですけど、「国レベルでの飲酒ガイドラインの設定」とか、アルコールは飲みすぎちゃいけない、みたいな規制も入っていますね。

あ、それがリスクですか?

そうそう。将来の自分たちの姿を考えると、昔みたいにビールをたくさん売っていくという戦略だけじゃもう成長しないよねと。

で、隣の47ページでは、強みと弱み、機会と脅威という風に分けてSWOT分析やってるでしょ?

SWOT分析とは…
企業が戦略策定のために、自社の内部環境と外部環境を「強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)」に分けて、プラス面、マイナス面両方から分析すること。

何かリスクがあった場合に、それを収益機会にしていけるのか。解決できない外的課題の場合、影響をできるだけ小さくして成長していけるのかという「成長ストーリー」を描いているんですね。

なるほど。

48ページに中期経営方針の概要があって「高付加価値として評価されるものに注力していきます」とか、そういう戦略が打ち立てられていますよね。

企業の価値向上のストーリーや、それを実現するための分析といったページは見ておいた方がいいと思います。

就活にどういかせば良いですか?

企業の立場に立つと、この学生さんは自分たちが目指すところと、方向感がある程度共有できるのかな?その上で、何をもたらしてくれるのかな?という点を見たいと思うんですね。

企業のビジョンと一致しているってところをアピールしたらいいということですか?

企業のビジョンと自分がやってきたことをすり合わせできていると現実味が増しますよね。

IRでは“うまくいかなかった時にどんな手を打った”ということも出ているから、私はそこが良いと思いましたとか言えると、説得力をもって志望度の高さをアピールできて差をつけられますよね。

次回は、文系でもできる数字の把握法や同業界複数社の比較方法などについて、教えていただきます。

就活でIRを使って差をつけたい!入門編(1)IRの基礎知識
就活にIRを使って差をつけたい!入門編(2)IRはじめの一歩
もあわせてご覧ください。

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