パワハラとは? あなたはどう考えますか?

2019年11月08日

職場でのパワーハラスメントの防止策に取り組むことを企業に初めて義務づける法律について厚生労働省の審議会は大企業は来年6月から、中小企業は令和4年度から対策を義務づける方針を示している。これを前にパワハラの定義や対策を示した指針を年内に策定することを目指しているが、労使の意見が対立し、取りまとめのめどは立っていない。どんな行為がパワハラなのか、あなたはどう考えますか?

パワハラの記載 労使で対立

特に意見が対立しているのは、パワハラにあたる行為を具体的にどう記載するのか。

使用者側は、パワハラと業務上の指導との線引きは難しく、判断に迷うケースまで指針に記載すると人材育成や事業の円滑な運営を妨げるおそれがあるとして、明らかにパワハラに該当するケースのみ記載するべきだと主張している。

一方、労働者側は、今の指針案はパワハラの定義が狭く、むしろ助長しかねないとして、
▽パワハラかどうかを判断する際に労働者がどう感じたのかといった主観にも配慮することや、
▽社内だけでなく、フリーランスや就職活動中の学生など第三者へのパワハラについても対策が必要だなどと主張している。

このほか、労働問題に取り組む弁護士や民間の団体からも指針案が示すパワハラに該当しない例が誤解を招く可能性があるなどとして相次いで懸念が示されている。

6つの類型 でも具体的には…?

「パワーハラスメント」は、厚生労働省が平成24年に初めて定義を示し「業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的な苦痛を与えること」などとした。

パワハラに当たる行為としては、
▽「身体的な攻撃」、
▽「精神的な攻撃」、
▽隔離したり無視したりする「人間関係からの切り離し」、
▽業務上明らかに不要なことや遂行できないことを強制するなどの「過大な要求」、
▽能力・経験とかけ離れた仕事を命じることや仕事を与えないなど「過小な要求」、
▽プライベートに過度に立ち入る「個の侵害」の6つの類型を示し、企業に対策を求めてきた。

しかし、具体的にどのような行為がパワハラに当たるのか「人材育成のための指導との線引きが難しい」といった意見が根強くあるほか、これまで規制する法律がなかったことからパワハラの被害は年々深刻になっていて、国の調査では被害を受けたと感じている人が働く人の3人に1人に上っている。

全国の労働局に寄せられた労使間トラブルの相談のうち、職場でのいじめや嫌がらせなど「パワハラ」の相談は年々増え続けていて、昨年度は8万2797件と過去最多となった。

厚労省の指針案では…

厚生労働省の指針案ではパワハラについて、
▽優越的な関係を背景とした言動で、
▽業務上必要かつ相当な範囲を超え、
▽労働者の就業環境が害されるもの、と定義している。

そのうえで指導との線引きが難しいという指摘を踏まえ、これまでに示していた6つの類型ごとにパワハラに該当する行為と該当しない行為を具体的に示している。

このうち、「身体的な攻撃」では、例えば、
▽けがをしかねない物を投げつけることはパワハラに該当しますが、
▽誤ってぶつかったり物をぶつけてしまったりしてけがをさせることは該当しないとしている。

「精神的な攻撃」では、
▽人格を否定したり、ほかの労働者の前で大声で威圧的に叱責したりすることはパワハラに該当する一方、
▽社会的ルールやマナーを欠いた言動があり、注意しても改善されない場合に強く注意をすることは該当しないとしている。

「人間関係からの切り離し」では、
▽自身の意に沿わない労働者を長期間にわたり別室に隔離したり自宅研修させたりすることはパワハラに該当する一方、
▽処分を受けた労働者を通常業務に復帰させる前に個室で必要な研修を受けさせることは該当しないとしている。

「個の侵害」では、
▽職場以外でも継続的に監視することや性的指向・性自認や病歴などを本人の同意を得ずに他の労働者に暴露することはパワハラに該当するとした一方、
▽配慮する目的で家族の状況をヒアリングしたり了解を得たうえで病歴などを人事労務の担当者に伝えたりするのは該当しないとしている。

そのうえで事業主の責務として、パワハラへの対応方針を明確にして周知・啓発することや相談が寄せられた場合に適切に対応するための体制を整備することなどとしている。

対応指南のセミナーも

来年6月から企業に順次、パワハラ対策が義務づけられるのを前に企業向けに対応方法などを指南するセミナーが注目を集めている。

このうち、今月1日に京都市で開かれたセミナーには定員を超えるおよそ80人の申し込みがあり、キャンセル待ちが出る中、企業の人事担当者やハラスメントの担当者などおよそ60人が参加した。

はじめに線引きが難しいと言われるパワハラと指導の違いについて講師が説明し、
▽パワハラは業務上、必要のない嫌がらせなどで精神的なダメージを与え職場環境を悪化させるもので、
▽指導はミスの再発防止や教育など業務上の目的があり、相手の成長を促すものだと話した。

このあとグループに分かれ、事例をもとに対処法を話し合った。

この日、議論したのは、パワハラ対策の担当者が従業員の1人から「上司が子どもの学校の成績や休日の過ごし方などプライベートなことについてしつこく聞かれ、苦痛に感じている」などと相談された際、「上司に悪気はなく、パワハラにあたらない」などと対応したという事例。

参加者からは「担当者が個人的な見解でパワハラにあたらないと決めつけるべきではない」とか「相談者の話がきちんと聞き取れておらず、問題の把握ができていないのではないか」といった意見が出された。

また「正直、どのように切り分けをしたらいいのかわからない」とか「従業員が過剰に反応している可能性もある」などどこまでをパワハラと考えるか悩む意見も聞かれた。

参加した飲食店の人事担当者は「どこまでが教育でどこからがパワハラなのか線引きが難しい。パワハラにならないよう当たり障りのない教育をするのも違うと思うので会社としてここまでは業務の範囲内だと自信を持って示すことができるようにしたい」と話していた。

セミナーの講師を務めた特定社会保険労務士の山中晶子さんは「企業からのパワハラに関する相談は非常に多くなっています。どこまでがハラスメントなのかわからず、不安を抱えたまま対応していることもあり、パワハラの定義が示されることには意味があると思う。ただ、何がハラスメントにあたるか型にはめることに意味があるのではなく、適切な知識を持ったうえで一人一人の声を聞いてきちんと対応をしてほしい」と話している。

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