2023年05月12日
起業家・渡辺創太さん(28歳)。トヨタ、ソニー、NTTドコモ…大企業が注目するWeb3.0の先駆者です。「誰でもできることを、誰にもできないくらいやること」を大事にする若きリーダーの成功の原点に迫りました。
(聞き手:佐藤巴南 田嶋瑞貴)
学生
田嶋
渡辺さんは大学生の時に起業したんですよね。もともと起業家になりたかったんですか?
考えがはっきりしたのは、在学中に休学してアメリカのシリコンバレーに行ってからですね。
渡辺さん
「Stake Technologies」CEO。1995年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。在学中に休学しシリコンバレーのブロックチェーン企業で勤務を経験。帰国後、2019年に起業し、パブリック・ブロックチェーン「Astar Network」を開発。多様なブロックチェーンをつなぐ役割を担うことで、Web3.0の基幹インフラとなることを目指している。
どんなきっかけがあったんですか?
向こうでは、スタートアップ企業が集まるイベントに出たり、IT企業で働いたりといった生活を1年間、送っていたんですが、まわりにグーグルで働いている人がけっこういたんです。
そういう人たちと話をしていると「俺は起業家には向いてないから、今はグーグルなんだよね」って言うんですね。
日本みたいに、“優秀な学生はひとまず大企業に入る”みたいなことがなくて。
もちろん例外はありますが、一般的にトップの人は自分で起業する、セカンドの人はスタートアップに入って、3番目、4番目が大手に就職するという感じでした。
そんな環境に身を置いて、起業ってかっこいいなって自然と思うようになりました。
学生
佐藤
Web3.0に関心を持ったきっかけはどこにあったんですか?
Web3.0
次世代のインターネットを提唱する概念。ブロックチェーンの技術を使い、暗号資産取り引きやデジタルアートなどのNFTの取り引きを個人同士で直接できるようになることが特徴。
起点で言うと、大学1年生の時に行ったインドでの経験ですかね。
インドですか?
そうです。そこで物乞いをする子どもたちなど、貧困に苦しむ人たちの姿を目の当たりにして、けっこうな衝撃を受けました。特に現地の子どもから道ばたで「お金をちょうだい」と言われたのがとてもショックでした。
それと同時に、日本で生まれたということは、すごく幸せなことなんだ、確率的にはすごいことなんだって気が付きました。
こう思った時に、自分が将来、何をしたいのかってすごく考えて。
その結果、自分のできることを社会に還元したいと思ったんです。
そうだったんですね。
それで帰国してからは、国際交流のNPOで働くようになって、そこで自分の目の前にいる10人を幸せにできるかもしれない、とは思いました。
でも地球の裏側にいる人を幸せにできるかって言うと、そんなことはありませんでした。
だから、社会課題を解決するくらいに世の中を変えるためには、まず世の中で影響力を持たなきゃいけないなと思ったんです。
影響力を持つ、ですか?
そう、それでまず手始めに世の中で影響力ある人をリストにしてみました。
そうしたら、全員が政治家かIT起業家だったんですね。政治家で言えば、当時の日本の総理大臣やアメリカの大統領。IT起業家はビル・ゲイツとかイーロン・マスクとかですね。
でも政治家は年月がかかりすぎるなぁと思って、残ったのがIT起業家という選択肢。
だけど、今から僕がインターネットで同じようなビジネスをやろうと思っても勝てないんで、次に来るインターネットになる可能性があるものに賭けようと思って。
本を読んだり、いろんな人の話を聞いたり、その結果、行き着いたのがブロックチェーンという暗号資産に必要な技術でした。
こうした考えと、先ほどお話したシリコンバレーでの経験が合わさって現在の自分に至っています。
そうやってつながるんですね!インドでの経験は、渡辺さんの人生を変えるほどのインパクトがあったんですね。
「衝撃的な光景だったんですか」ってきかれると、「YES」です。
ただ、その経験をあとから自分で内省化したというのが正しいんだと思います。
内省化?どういうことですか?
衝撃的な経験をしたことって、みんな多かれ少なかれあると思うんですね。
例えばインドに行ったことだって、いまの時代、それほど特別なことではないわけです。
さらに、そこで同じ体験をした人全員が、同じマインドになるわけじゃない。
自分が幸せならいいんじゃないって考え方だってあるだろうし感じ方は人それぞれです。
たしかに…。
大事なのは衝撃的な経験をするということより、その経験を自分の中で内省化すること。
つまり、経験をちゃんと受け止めて、その経験から自分の哲学をつくることだと思っています。
渡辺さんがブロックチェーンに注目した理由について、もう少し聞かせてください。
ブロックチェーンは、ビットコインなどの暗号資産とともにその重要性がウナギ登りにあがっていました。
新しい領域で、今後、需要が伸びてくるだろうと思ったんです。
そこで勝負できると思ったのはどうしてなんですか?
ブロックチェーンって、その言葉自体が、できてからまだ15年ほどしかたっていないんですね。
なので、それ以上の経験をもっている世代がいない。
お笑いに例えると、明石家さんまさんやダウンタウンさんがいない世界なんです。
そう聞くと、もしかしたらって、思えるかもしれないです(笑)
でしょう!みんな「よーいドン」で走っているので年齢が関係なく、いい意味でヒエラルキー(階層)がない。
頑張った分だけ、切り開いた領域が広がっていくことを実感できるのは大きな魅力ですね。
それは日本に限った話ではなく、世界的な話ですか?
そうです。ブロックチェーンやWeb3.0に関するプロジェクトは立ち上げたその日からグローバルが舞台だと思っています。
“日本で勝ってから海外へ進出する”という人も多いと思うのですが、もうそんな時代ではないということを実感していますね。
Web3.0やブロックチェーンについての知識はどこで学んだんですか?
冒頭にシリコンバレーに行ったお話をしましたが、それが目的だったんです。やはりブロックチェーンの本場だったので。
いきなり、シリコンバレーに!
ただ、英語もできませんし、エンジニアでもないので技術も詳しくありませんでした。
でも、どうしてもブロックチェーンの企業で働きたいと思って、自分でブロックチェーンについて100ページくらいの資料を作って、100社くらいにメールしました。
そんなに!
そのうちの5件から返信があって、働きたいと思っていた1社で働けたんです。
僕がやっていることって特別じゃなくて、「誰でもできることをただ単に誰にもできないくらいやっている」だけなんです。
誰でもできることを、誰にもできないくらいやる・・・
そう。ただ、何かを始めるとき「お前には無理だよ」という人は必ずいて。
シリコンバレーに行った時も、現地の駐在員に「大学生だし、シリコンバレーの企業で働くのは難しいと思うよ」って、めっちゃ言われたんですよ。
でも、そういうことを言う人たちはたいてい、同じ挑戦をしたことなんてないわけですよね。
だから、勝手に諦めずに、やりたいことはやった方がいいかなと思います。大事なのは、気合いと好奇心ですね!(笑)
会社の舵取りを行うにあたって、大事だと思うことってなんですか?
「理想の社会を描いて現実とのギャップに葛藤しながら、それでも物事を前に進める力」です。
リーダーって世の中はこうあるべきだとか、自分はこうありたいというビジョンは不可欠だと思います。
でもビジョンを描くと現実とのギャップが見えるし、現実は残酷なので、四苦八苦することが多い。
ぶっちゃけ、仕事をしてると辛いです。
辛いけど、それでも物事を前に進めることができる力が大事なんじゃないかなというのは思います。
あついですね。
でも、みんなが、こういうマインドを持つべきだと思わないですね。
僕は意思決定とか突き進む力に長けているかもしれないけど、細かい作業はぜんぜん向いていなくて。
なので、一番重要なのは自分の性格ややりたいことを理解した上で、自分が納得する選択をして、人生を歩むことだと思います。
渡辺さんのやりたいことってなんですか?
インドの経験から一貫しているのは「地球規模の社会課題の解決」ですね。
ブロックチェーンで成功したいわけではなく、社会課題を解決するためにブロックチェーンで成功したい。
世の中がいい方向になるように影響力がある人間になりたいと思っています。
渡辺さんは、ふだん、どんな風に仕事をされているのでしょうか。
会社があるシンガポールを拠点に海外を飛び回っています。
ことしは日本に帰ってくる機会が多くて、最近ではトヨタ、ソニー、NTTドコモといった会社とやり取りしています。
例えば、この取材のあとは、M&Aのディールを詰めにハワイに行って、シンガポールに帰って、また日本に来て、それからシンガポールに1度戻ってから日本、そのあとは香港に行ってアメリカへ、という感じですね。
すごいですね・・・。
一日のスケジュールは、こんな感じで。
え!分刻みでびっしり・・・
体1つで足りますか?
足りないです。忙しすぎて(笑)
でも、いろんな企業と一緒にプロジェクトを動かすことが増え、プロジェクトの規模もかなり大きくなっている実感があります。
今や大企業からも注目の渡辺さんですが、起業後は周りの社員が立て続けに辞めて3人にまで減ったことも。そこから学んだチームワークの秘訣とは?後編で詳しく聞きます。
渡辺さんのこちらの記事もあわせてご覧ください
撮影:堀祐理 編集:岡谷宏基
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