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DeNA会長 南場智子さん 失敗で気付いた「理想のリーダー」とは

2022年12月22日

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DeNAの創業者、南場智子さん。経団連の副会長も務める日本を代表するリーダーの1人です。昔はとにかく指示するタイプだったと言う南場さん。ひとつの”失敗”をきっかけに「みんなに頼る」リーダーに変わったそうです。

“頼る”リーダー

学生
本間

南場さんはご自身をどのようなリーダーだと考えていますか?

私は何でもできるスーパーマンみたいなリーダーじゃないんです。

南場さん

みんなに頼る」リーダーです(笑)

1962年生まれ。津田塾大学卒業後、1986年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。マッキンゼーで役員(パートナー)を務めたあと、99年に退社してDeNAを創業。2011年に夫の看病を優先するために社長から退く。2015年にDeNA会長と横浜DeNAベイスターズオーナーに就任。2021年から女性初の経団連の副会長も務める。

グイグイまわりを引っ張っていくようなイメージを持っていました。

最後はしっかり決断しないといけないし、「目指す頂はあそこですよ」って絶対言わなきゃいけないんだけど。

でも、そこに向かっていくまでに自分ではできないことがいっぱいあるんですよね。

2021年に経団連の副会長に就任 女性として初めて

それぞれの分野で自分よりできる人たちがいるので、その人たちに任せて、なんなら私は迷惑にならないように気をつける。

結局、チームとしてゴールに到達することが目標なので。

“凡人だ”と気づいて

南場さんのリーダー像ができたきっかけってなんだったんですか?

もともと私はマッキンゼーっていうコンサルティング会社に勤めていたんです。

当時はとにかく自分で指図をするタイプでした。

真逆ですね!

ところがマッキンゼーを辞めて、DeNAを創業してすぐ大きな失敗をして、自分の能力が全然足りないというのが即座に分かったんです。

高い仕事の質には執着するけど、それを実現させるためには私がやらないほうがいいことの方が多かった

取材はオンラインで行いました

だから才能を持つ人を連れて来て、その人たちにがんばってもらう。

何でもこなすスーパーマンみたいなリーダーもいるけど、私の場合は会社の外にでたら“凡人だ”って気づかされて、みんなを頼りにするリーダーに変わったんです。

失敗はチャンス・・・?

学生
梶原

変わるきっかけとなった失敗って、どんな失敗だったんですか?

DeNAを立ち上げてネットオークションのサービスを始めようとしていた時の話なんですが…

DeNA創業時の南場さん

DeNA
1999年に創業しネットオークションサイトの事業を始める。2006年には携帯向けのゲームサイト「モバゲータウン」を開始。その後も「怪盗ロワイヤル」などのゲーム開発を行う一方で、横浜DeNAベイスターズの運営などのスポーツ事業やヘルスケア事業も展開している。2021年度の売上高は1308億円。

私は企画やマーケティングといった自分が得意なことばかりやっていて、システム開発の部分をパートナー企業に全部丸投げしてしまっていたんです。

そうしたら、今日からサービスのテストを始めますという日に、システムのコードが1行も書けていないことが判明したんだよね…。

えー!

そのシステム開発会社の人は「できてます」と言ってたんだけど、その会社の中でいろいろ問題があったみたいで、結局、作業が行われてなかったんです。

スタートから大変!

タイミングが悪いことに、当時は投資家の人たちが私たちの会社に出資をするかどうか検討している最中でした。

サービスをいつ立ち上げて、どのくらい売り上げがたちますという事業計画を出していたんだけど、肝心のシステムがゼロだから、少し開始が遅れますっていうレベルじゃないわけで…。

私なら立ち直れなさそう…。

一日中ずっとパニックで、もう手が震えてパソコン立ち上げられないくらい。

でも、その時に夫から「とにかく諦めるな」、それから「自分が起こした大失態について過少に伝えたら駄目だよ」と言われて。

会社の死活問題だったわけだけど、それで投資家の人たちには「こんな大失態をやらかして、お伝えした計画通りにはなりません」って伝えて回ったんですね。

それと同時に、会社を一緒に立ち上げたメンバー全員で結束して、この状況から何ができるのかを必死になって考えました。

これは後から聞いた話になるんだけど、この時に失敗を誠実に伝えた上でやるべきことを全力でやって乗り切ろうとしていたところを投資家の人たちは評価してくれたみたいで。

結局、その後もずっとサポートしてくれたんだよね。

逆に認めてもらえたんですね…!

調子のいい時って、元気いっぱい仕事するのも冷静でいるのも楽なんです。

だけど、大失敗をやらかした時に本当に誠実になれるか、ブレない勇気を持てるか。

ドツボにはまった時にこそ、リーダーとしての真価が証明されるものなんじゃないかと、当時を振り返ると思います。

「ピンチに陥った時こそチャンスだ」ってよく聞きますが、なかなかそういう風に思える人って少ないと思います。

わたしも、この失敗の経験があったからですよ。

その後、もっと大きな失敗をして、震え上がるような思いをしたり全身から汗が出るような思いをした経験も幾度となくあります。

でもそういう時はすぐに「底力を見せるチャンスにしよう」って意識的に言葉に出すようにしています。

決して逃げない。誠実な姿を見せるチャンスにしていこうよって、言い聞かせる。

言葉に出すんですね。

これから君たちも失敗をたくさんすると思うけど、そういう時こそ、しっかりとした大人であることを証明するチャンスだって自分に言い聞かせたらいいと思いますよ。

やってみます!

失敗してもプロセスを見る

DeNAでは、社員の方が失敗しやすい環境づくりを意識されているんですか?

失敗のプロセスを大切にしていて、そこを見るようにしています。

怠けた結果の失敗は大きなマイナスになりますが、一生懸命やっていたんだけどちょっとしたことを見落としていたり、ちょっと運が悪かったりしてうまくいかないこともあります。

そういう失敗は全くマイナスにはなりません。

むしろ、もっと大きなチャンスを与えて、この機会に挽回してくださいって言っています。

印象に残っている社員の方の失敗ってありますか?

たくさんあるよ(笑)

例えばいま、成長している「ポコチャ」というライブストリーミングサービスの責任者。

彼は、過去に事業を立ち上げたけど人気が出ずに撤退するという“失敗”を2回はしてますね。

ライブ配信と視聴ができるコミュニケーションアプリ アメリカなどにも展開

責任を感じちゃいますよね…。

だけど、こういう大きな失敗を経験した人ってその痛みが分かるから、次からは同じ失敗を繰り返さないように必死になるわけです。

それでも、失敗しちゃうことだってあるわけなんですけどね。もう、失敗なんてそこら中にある

失敗も織り込んで考える

社員は成長のきっかけになるかもしれませんが、会社の経営を考えるうえではリスクじゃないんですか?

そのリスクを織り込んで事業を進めるのがリーダーの役割ですね。

会社全体が成功しているなら、当然、利益を出している事業があるわけです。

2013年には当時の米バイデン副大統領がDeNAを訪問 南場さんら女性経営者と懇談した

一方で失敗する事業もある。

失敗した当人はえぐられるような気持ちになるんだけど、会社としてはその失敗を確率の問題として織り込むんです。

DeNAはスポーツ事業やヘルスケア事業までたくさんのプロジェクトが走っているんで、あちこちに成功と失敗があります。

社員全員が100点じゃないっていう前提で、ここが失敗したらこうというシミュレーションは常に行っていますね。

組織を率いるリーダーにとって一番大切なことってなんですか?

チームのみんなの情熱と力を引き出して輝かせる、活かす。

ほかにも、いろいろな要素があるかもしれないけど、この役割が大事かなと思いますね。

後編では、南場さんが一緒に働きたい人はどんな人か聞きました。成功しているチームから、あえて大黒柱を引っこ抜く南場さんならではのチームの作り方に迫ります。

撮影・編集 岡谷宏基

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