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ヤフー社長→東京都副知事 宮坂学さん ”異世界”で発揮したリーダーシップ

2022年11月11日

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44歳の若さでヤフーの社長に就任。その後、まったく畑違いの東京都の副知事に転身した宮坂学さん。庁舎にWi-Fiはなく、情報のやりとりはファックスで…。都庁のデジタル化の遅れに戸惑いながら、どうリーダーシップを発揮してきたのか聞きました。

(聞き手 小野口愛梨 佐藤巴南 黒田光太郎)

都庁は20年前の時代?

学生
小野口

ヤフーでは、まさにITの最前線にいたと思うんですが、都庁に入ってどんな驚きがありましたか?

デジタルに関しては想像以上に遅れてましたね、ちょっと予想外なぐらい。

1967年生まれ。山口県出身、同志社大学卒。1997年、設立2年目のヤフーに転職。2012年に44歳で代表取締役社長に抜擢される。スピード重視の「爆速経営」を掲げ、ヤフーの事業成長に寄与。2018年に社長を退くと、翌年7月に東京都の参与に選任され、9月より副知事として都政の改革にあたっている。「ライフワーク」と呼ぶほどのアウトドア好き。

学生
佐藤

そんなにですか?

例えば都庁の中にWi-Fiがほとんどなかったんですよ、有線でやっていたの最初は驚きました。

え!!

後は、新型コロナが発生した時の報告もそうでしたが、業務で日常的にファックスを使ってましたし、議会の資料も紙だらけ。

90分ノンストップで熱い思いを語ってくれました

ただ、都庁だけじゃなくて日本の行政全体がそうだったらしくて、2度びっくりしました。

行政全体の課題でもあったんですね・・・

時代が20年さかのぼった感じがしましたね (笑)

例えたら、鉄砲が伝来しているのに、弓矢で戦っているみたいな感じ。

やれなくはないけど、絶対勝てないって思うじゃないですか!

頑張る以前の問題なんで、こういうところは変えようと一生懸命やってきました。

地道でもペーパーレスから 宮坂副知事のもとで紙の削減が加速

学生
黒田

逆に改善の余地がまだまだあるって感じですか?

ポジティブに言い換えると、そういうことですね。

小池知事から”逆”営業

ヤフーの社長を辞めたあと、東京都で働こうと思った決断のきっかけはどこにあったんですか。

インターネットの会社ってすごくエキサイティングで、良いことも悪いことも含めて、いろんなことが起きるんで、すごく面白いんです。

2018年に「経営幹部の若返りが必要」と社長を退任 右は後任の川邊健太郎氏

でも、20年ぐらいやっていたんで、このまま同じことを続けていても、自分が成長できるのかギモンに思ったということもありますね。

だんだんこの業界に慣れ始めている自分がいました。

それでどうして都庁に?

もともとは、小池知事のところに営業に来ていたんです。

小池都知事のスカウトで2019年に東京都へ

東京都で仮想通貨を発行しましょうとか、自転車のライドシェアリングを推進しましょうとか。

営業していたら逆に営業されて、それなら都庁でそれやってみない?って。

そうだったんですね!!

まずは不便をなくしていく

宮坂さんは、いま都庁でデジタルを引っ張るリーダーとして、何をしていこうとしているんですか?

スマート東京」というビジョンを掲げて、都庁・都政にデジタルをしっかり入れていくことを進めています。

具体的にどういうところを改善していったんですか?

まず行政の手続きに限らず「並ぶ」ってやっぱり嫌ですよね。

並んでワクワクするのはラーメン屋くらいです。

可能なら、並ばなくて済む方がいいです。

ちょっとした申請をするだけなのに、半休を取って役所に行って窓口で並んでとか・・・。

こういう日常のちょっとした「並ぶ」をオンラインで「並ばずに」できるようにしました。

込み入った相談がある人だけが窓口に来てもらえるようになれば、その人に対してもっと手厚くサポートできるようになりますしね。

デジタルで効率化することで救われる人も出るんですね!

あとは、情報のやり取りで紙を使わないとか、ファックスじゃなくてメールを使うとか。

別にこれまでのやり方でもできるんですけど、前近代的で不便だなと思うんですよね。

都庁の複合機 ファックスの送受信を電子化し99%減を達成 いまは主に緊急時にのみ使用

あとは、ホームページを見やすくするとかね。

知りたい情報がPDFファイルで掲載されている場合がよくあって、これってスマホだといちいちダウンロードしないと見られないからすごく不便なんですよね。

あるあるですね・・・

こういう気になるポイントを1つ1つなくしていくというのが最初の第1歩。

あるべき当たり前のことができるようになって初めて、新しいことへの挑戦権が得られるんじゃないかと思っています。

“自分史上初”を

「変わる」「変えていく」ということは常に意識しているんですか?

新しいことをやりたい」という気持ちは常に自分の中に持っていて。

毎年、正月に振り返る時に「去年、自分史上初って何かやったかな」とか考えるんですよ。

自分史上初!

それが複数年ない状態の時って、自分がぬるま湯にいる状態なんだろうなと思いますね。

趣味でもプライベートでもいいんですけど、「自分史上初」のことって、大人になってからだと、意図的にやらないとできないことなんですよね。

行政ってそれまではまったく接点がなかった世界なので、自分の中では“違う大陸”ですよね。

言うなら、アニメによくある異世界の転生モノです(笑)

個人的には新しいことをしたくても怖くてできないことが多いんですけど、どういうマインドで挑戦されているんですか?

迷ったらワイルドな方を選ぶ“っていう格言を自分の中に持っていて。

要するに今よりも変化の度合いが激しい方を選ぶんですよね。

僕も性格が臆病なので油断すると「変化の度合いの小さい方にしよう」っていう選択をよくとってしまうから自分に言い聞かせてます

私は変化が怖いなと思ってしまいそうです・・・。

それがふつうだと思うんですよ。

自分の場合も、毎日毎日そんなワイルドな選択をしているワケではなくて。

でも、本当に大きな転換点が時々あって、そういう時は、どっちの方が変化が大きいのかをすごく意識しますよね。

これを意図的にやらないと、どんどん同じ事を続けて、結局、毎年正月に去年も自分史上初がなかったな~みたいなことが続いてしまう。

自分にストイックなんですね…

ストイックにやっているつもりはないんですが、自分の中で「ここぞ!」という時は変化を取りにいこうという気持ちがあってもいい気がします。

みんながみんなそうである必要はないですけどね。

付いていくのは“人”じゃなく“ビジョン“

ヤフーの社長を6年、いま副知事になって3年ですが、宮坂さんはご自身をどういうリーダーだと思ってらしゃるんですか?

自分はメンバーを引っ張るという考えがあんまり好きじゃなくて。

あんまり頼られても困ると(笑)。あんまり人にaddict(依存)するのって、実はよくないことだと思っています。

引っ張るというよりは、みんなで1つの答えを出して、ゴールに導くみたいな?

人に付いていくっていうのは、その人の“見てるもの”に付いていくんだったらいいんと思うんです。

この人が実現させたい世界や見たいものって自分が将来に見たい景色と一緒だな、と共感したから一緒にやろうだったらいいんです。

でも、「とにかくこの人に付いていく!」という気持ちだけだと、危うい思想にもなってしまい兼ねません。

人に対してじゃなくて、人が見ている「こと」に対して力を合わせていくっていうかね。

ビジョンが一緒ということですか?

そうそう、そこですね!

でないと、危ない。

リーダーは1人じゃなれない

宮坂さんがリーダーとして大事にしていることってありますか?

リーダーシップに絶対必要なものは“フォロワーシップ”だと感じています。

フォロワーシップ?

要するに「リーダーになりたい」と言って、リーダーになれるわけじゃなくて、「この人についていきたい」と思ってくれる人がいて初めてリーダーになれます。

リーダーシップって相手があっての話なんで。

たしかに!

今の僕の立場だったら「東京をこんな風にしたいな」とか、皆さんのような大学生だったら「こんなサークルにしたいな」とか色々な夢がありますよね?

それに共感してくれる人が集まって、初めてリーダーシップが成立するんです。

リーダーは「Lead the self」から始まる

宮坂さんのなかで、リーダーとはどういったものでしょうか。

リーダーは「『Lead the self』から始まる」ですかね。

野田智義さんたちが書いたリーダーシップに関する有名な本があって、その中に「リード ザ セルフ」って言葉があるんです。

自分がどこに行きたいのか、何をしたいのかを明確にして、まずは自分をリードする。

それを表明すると誰かが「俺も行きたい、一緒に行こう」って話になると、それが「リード ザ ピープル」になって、最終的には「リード ザ ソサエティ」になる。

まずは自分を見つめることからはじめて、その背中を見せるみたいな?

背中で見せる、そうかもしれないですね。

自分で自分の内側のパッションや夢を表現することを恐れてリードできない人って絶対に人をリードできない、フォローする人がつかないんで。

やっぱりそういう意味で、起点はやっぱり自分の内側

自分は何がやりたいんだ、ということなんだと思います。

後編では、都庁で変革するチームをどう作ってきたのか、そして、これからのリーダーを目指す若い世代に向けたメッセージについて聞きました。

撮影・編集 岡谷宏基

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