2019年04月08日
40歳を前に妊娠した保育士の女性。子どもを産んで、また、いまの職場で働きたい。そう思って、育児休業を希望しましたが、認められませんでした。理由は非正規雇用の臨時職員だから。そんなことあるの?・・・実は、法制度の”スキマ”に落ちてしまっているのです。
“妊娠したら雇用継続できない”
埼玉県ふじみ野市の公立保育園で臨時職員として働いていた高野麻美さん(39)。去年6月、2人目の子どもを妊娠しました。職場の雇用契約は半年ごとの更新。この保育園で働き始めてからおよそ2年がたち職場の雰囲気にも慣れてきました。やりがいも感じていました。出産後もこのまま仕事を続けたい。育児休業を取得したいと職場の上司に相談しました。
しかしその後、雇用主のふじみ野市からかかってきた電話。思ってもみない内容だったそうです。
「出産予定日に合わせて仕事を切り上げたらいかがでしょうか。臨時職員の育休制度はありません」
40歳を目前にした出産。出産後の体調は大丈夫なのか・・・、不安はありました。でも高野さんは、夫の収入だけでは生活が苦しいと考えて、出産前6週間・出産後8週間の産休を終えた後には職場へ戻りたいと伝えました。
ところが、市の回答はNOだったのです。
「『産休の途中で契約が切れてしまうので、そこから先は契約を継続できない』と言われました。まさかと思い『妊娠したから雇用継続できないということでしょうか?』と聞いたら、はっきり『はい。そうです』と言われました。こういうことが本当にあるのだとすごくショックでした。妊娠したことがすごく悪いことなのかなと感じてしまいました…」(高野さん)
公務員だから大丈夫だと…
高野さんは以前は埼玉県内にある公立病院で正規職員の看護師として働いていました。4年前に長男を出産した時には産休と育休を取得し、職場に復帰できました。
その後、自宅に近い場所で働きたいと、3年前からふじみ野市の公立保育園の臨時職員として働いてきました。保育園では酸素吸入が必要な子どもや、ダウン症の子どものケアを担当。採用時に育休についての説明はありませんでしたが、公務員だから、育休もとれるものだと考えていました。
労働局は指導できない
育休がとれない・・・まさかの事態に、高野さんは労働局に相談しました。しかし直面したのは“公務員の壁”でした。労働局の担当者からは「この勤務条件なら産休も育休も十分に取れるはずだが、公務員の場合、労働局は指導に入れない。自分で交渉してください」と言われたそうです。
弁護士や総務省の相談窓口などにも相談しましたが、去年12月に保育士をやめざるをえませんでした。
「民間企業で働く友人が同じようなことがあって相談して解決していたので、何とかなると思っていました。なぜ、自治体の臨時職員だけが法律で守られない状態にあるのでしょうか。他にも悩んでいる人は多くいると思います」(高野さん)
高野さんはことし1月に無事、女の子を出産。しかし、保育士の仕事を失ったことで、4歳の長男は3月末で保育園を退所することになってしまいました。正規の職員であれば、育休を取得できれば給料の7割程度にあたる「育児休業手当金」を受けることができましたが、高野さんはそれもないため貯金を取り崩すしかないといいます。
ふじみ野市に取材したところ、書面で回答がありました。
臨時職員を雇用している理由については「時々刻々と変化する保育所入所児童人数や成育の状況に応じた保育の必要量に柔軟かつ早急に対応するため、臨時職員を雇用することで、配置基準を順守した体制を整えています」としています。
また育休制度をもうけていない理由は「民間労働者の関係法が適用除外とされておりますことから、育休制度を設けておりません。ただし、地方公務員の育休制度については国、他の地方公共団体の職員との均衡を失しないよう配慮を払わなければならないとされておりますので、今後においてもこうした関係法令等の趣旨を踏まえ対応していきたい」としています。
法律の枠組みから外れた臨時職員
全国の自治体で臨時や非常勤として働く「非正規公務員」の数は増加していますが、中でも急激に非正規化が進んでいるのが保育の現場です。
総務省が2016年4月1日の時点で行った調査によると、全国の市町村と東京23区にある公立の施設で働く保育士のうち、非正規が占める割合は43%にのぼっています。
以前は正規職員の保育士をサポートする仕事がメインでしたが、待機児童をなくすために保育士不足は年々深刻に。そうした中で非正規保育士はどんどん増えて正規職員と仕事の内容や責任がほぼ同じだというケースも増えているといいます。
しかし待遇面では大きな差があるのが現状です。それは賃金やボーナスだけではないのです。
地方公務員の育休について定めた法律では
▽自治体で働く正規職員には子どもが3歳になるまで
▽一般職の非常勤職員は少なくとも1歳になるまで
は育休を取得できる権利を認めています。
ただし、この法律は臨時職員には適用されません。
理由を総務省の担当者に取材すると「もともと臨時職員は1年を超えない任用(雇用)を前提にした制度です。公務員が育休を取得できるのは『同じ職に在籍した期間が1年以上である』ことが条件です。この条件は民間企業も同じです。制度上、働く期間が1年を超えない臨時職員はこの条件を満たさないから法律では育休を取得できる権利を認めていません」と話していました。
ただ、取材の中で臨時職員という契約でありながらも実際には何年も働き続けている臨時職員が少なくないことがわかりました。普通に考えると1年以上、働いている職員と何ら変わりはないと感じます。
臨時職員のもともとの前提が変わっているのであれば、働き方にあわせて育休の取得を認めることができないのか。そう尋ねると総務省の担当者はことばに詰まりながら「今の法律では難しいのが現状だと思います」と話していました。
労働問題に詳しい圷由美子弁護士によると育児介護休業法には「公務員に関する特例」が定められ、国や自治体で働く公務員の場合は労働局も改善に向けた指導や勧告をすることができないのだそうです。
「臨時職員はどの法律からもこぼれ落ちている。制度のはざまに落ちてしまっている状態だと思います。本当の意味で臨時的な仕事だったら育休も必要ないかもしれませんが、何年も同じ仕事で働いている場合、本来であれば、臨時職員として雇用すること自体がおかしいと言わざるをえません」
新たな「非正規公務員」の制度
総務省は2020年度から地方公務員の新たな人事制度として「会計年度任用職員」と呼ばれる制度を導入することにしています。新たな制度では、「特別職非常勤」や「臨時的任用」の要件を厳しくし、多くの「非正規公務員」を「会計年度任用職員」という枠組みに移行するとともに、ボーナスの支給を可能にするなど、これまで認められてこなかった待遇面の改善ができるとしています。
一方で専門家や労働組合などからは、新たな制度も形骸化するのではないかといった懸念や、賃金面などでは依然として正規職員と非正規職員の間に差が残されたままだという批判も出されています。
この「非正規公務員」の問題。私たちはこれからも取材を続けていきたいと考えています。読んでいただいた皆様からの情報提供をお待ちしています。寄せられた声を取材して記事にしていきたいと考えております。
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