2021年12月24日
(聞き手:石川将也 佐藤巴南)
「どうせ、自分にはムリだろう」…こんな風にやりたいこと、諦めていませんか?
ちょっと考え方を変えて、1歩踏み出してみたらできることってたくさんあるかもしれない。人気コピーライター、阿部広太郎さんから、すべての悩める人へのメッセージです。
コピーライターとして活躍されている阿部さんのように、自分に合った仕事ってどう見つけたらいいですか。
自分の中で、大切にしたい気持ちは何かを考えたいですね。
仕事をするうえでゆずれない気持ちってあると思うんですよ。
阿部広太郎さん プロフィール
1986年生まれ。慶應義塾大学卒業後の2008年に電通に入社。2013年に新語・流行語大賞となった「今でしょ!」のフレーズで知られる東進ハイスクールのCM「生徒への檄文」篇の制作に携わる。テレビ、映画、作詞、ラジオ番組など、幅広い分野で活躍中。著書に『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』など。
ゆずれない気持ち…。
こういうことに貢献したいとか、こんなやりがいを感じたいとか、こんな気持ちを味わいたいとか、心が求めていることがきっとあるはずなんです。
でも、どんな仕事が自分に合っているかなんてやってみなきゃ分かんないところもありますよね。
確かに、そう思います。
だから、“なんだかやっていけそうだな”というかけらを集めていくことが大切だなと僕は思っていて。
OB訪問やインターンシップを通じて「ここなら自分も楽しめそうだな」というような片鱗を、宝探しみたいに見つけて、集めていく。
自分らしい仕事にたどりつける方法ってその積み重ねなのかなと。
「やれそうなことを探す」というお話でしたが、よく言われる「才能」ってなんだと思いますか?
「才能」ってかけた時間だと思うんです。
誰かから「君は才能がないよ」って言われて、心が折れてしまいそうになることってあると思うんですよ。
かつて僕自身もありました。だからこそ思うんですけど、「才能」ということばに丸め込まれちゃいけない。
自分でやりたい事があるのであれば、どんなふうに続けていくか、そこには工夫が生まれると思うんです。
阿部さんがコピーライターになるまでを記した「教えて先輩!阿部広太郎さん(前編)」はこちらからご覧ください
なるほど…。
そうしてかけた時間というものは、自分を裏切らないと思っていて。
ある1つのことに機械のように向き合い続けたとしても、人にはやっぱり心があるので。
なのでああでもないこうでもないと時間をかけて続けていくことで、育まれていくものや、豊かになっていくものがあると思っています。
かけた時間こそが自分の力になっていく、才能になっていく。
雪が降り積もって、何cmにも積み重なっていくみたいに、自分のかけた時間って才能として積もっていくものだと信じてます。
すべての人にチャンスがあるって捉えることができますね。
そうなんです。本当に解釈次第だと思っています。
どうせやっても仕方がないと自分を低く見積もってしまうことや、自分自身の力を見くびってしまうことも、時にあると思うんです。
それって悔しいですよね、やっぱり。
夢を諦めざるを得ない状況になってしまっても、なんかやりようがあるんじゃないか、こういうことならできるんじゃないかと解釈を変えて、ちょっと踏み出したらできることって案外たくさんあるかもしれない。
自分の中での受け止め方をちょっと変えると活路が開かれることってあると思うんです。
「“どうせ自分なんか”と思わずに取り組んでみようよ」と。このことは、強く伝えたいです。
阿部さんは、ラジオを通じて、就活生にメッセージを出されていますよね。なぜ、このような取り組みをやってらっしゃるんですか?
若手のころに、学生のみなさんの力になれたらいいなという気持ちでOB訪問をできるだけ受けていたんですよね。
#好きに就活 好きに進もう羅針盤ラジオ
阿部広太郎さんがパーソナリティとして就活生に寄り添ったアドバイスやヒントを届けるポッドキャスト
コロナ禍になって就活生のみなさん、OB訪問が難しくなったり、選考がオンラインで完結したり、すごく大変なんじゃないかなって思ったんです。
…はい。手探りの状態でした。
コロナで状況が劇的に変わる中で、何か少しでも力になれたらいいなと思ったのがラジオを始めたきっかけです。
そうだったんですね!
就活における自分の見つめ方や、志望動機をことばにどうやってたぐり寄せていくかだったり、コピーライター目線で力になれることがあるかもしれないなって。
僕が絶対的な正解を出せるとは思わないんだけど、一緒に悩んで考えることはできるんじゃないか、寄り添うことならできるんじゃないかと思うんです。
それこそ、みなさんが1人で走れるようになるための「補助輪」のような役割を果たせればと。
心強いです。
ちなみに、阿部さんが就活から学んだことってありましたか?
就活サイトに書かれていないリアルな声は実際に働いている人に聞くのが一番だと思って、OB・OG訪問には力を入れていましたね。
僕ら学生にとっては、ものすごく緊張する場だと思うんですけど、OB・OG訪問ってどういうマインドで臨めばいいですか?
やっぱり、緊張しますよね。怒られるんじゃないかとか、下手な質問できないぞとか、考えることたくさんありますもんね。
でも緊張することって全然悪いことじゃないんです。むしろ、あらゆる事態を想定して準備運動をしているような状態なんじゃないかと。
緊張をむしろ受け入れていくべきだということですね。
そうですね。むしろ望ましいと思っています。
あとは、何かを聞くだけで終わりにするんじゃなくて、僕はこういう社会課題に関心がありますとか、こんな職種に就きたいと考えているんですがどう思いますか?と、自分を売り込む話をさりげなく織り交ぜていくことが大事です。
学生の自分が考えていることを共有して、OB・OGと見ている世界を交換することが大切なんですよね。
なるほど。勉強になります。
就活って自分の考えていることを相手に伝えなくちゃいけない機会が出てきますよね。
自分の志望動機や自己PRを相手と共有するために練って、自分の思いがうまく伝わっているのかの反応をみながら、それをまた練り上げていく。
すり合わせるってことですね。
僕、お笑いが好きなんですが、漫才師の方って舞台に立ってお客さんの反応を見ながらことばの言い回しを変えたりして漫才を鍛え上げていくと思うんですね。
やりながら磨かれていく、鍛えられていく部分が就活もそうなんじゃないかなと。
確かに…。
台本があるわけではありませんが、相手の反応を見ることで自分の中で話すリズムができたり、ことば選びが定着していったりとかして、自分のものになっていくと思うんです。
なるほど。
いただいた1日のスケジュールの中で、ニュースに関してはテレビや新聞ではなく、YouTubeでチェックされているとあります。
人って身近にあるメディアに、より長く触れていく習性があると思うんですよね。
今、みなさんもスマホやパソコンで情報にアクセスをしていると思うんですけど、僕自身リモートワークになって、触れる機会がより増えていて。
その流れで、ニュースで言うと、YouTubeの中で各社のテレビ局がチャンネルを持っているので。
ニュースの部分を短い尺で紹介している動画を見て、世の中で何が起こっているかを、チェックしています。
もちろん、テレビをつけてそのタイミングでニュースをやっていることもあるんですけど、いまは、自分が主体的にどんな情報をピックアップするのかを選ぶ時代になってきていると思うんです。
そういう感覚でニュースを動画でチェックしている感じですかね。
なるほど。
最後に、阿部さんにとって仕事とは何ですか。
「起承転々」です。このことば、僕は生きていく上でもすごく大事だなと思っています。
どういう意味ですか?
物語って「起承転結」って言われますけど、僕は転がり続けていくことが何より重要かなって。
もちろん、つまずくこともあるかもしれない、上手くいかないこともあるかもしれない。
けど、大切なことは、人との出会いを大切にしながら転がり続けていくこと。僕も、いろんな出来事があって、今の自分に至っています。
ボブ・ディランという人が「Like a Rolling Stone」っていうタイトルの曲を書いているんですけど。
聞いたことあります。
変わっていく、孤独になっていくことを歌っている曲なんです。
僕の解釈では転んだ分だけ、自分になっていけるし、心が自由になっていくっていうことでもあると思うんです。
だから転ぶ事を怖がらずにいていいと思っています。
なんだか安心します。
仕事もそうだということですか?
まずはトライしてみて、何かはまるものが1つでもあればいいと本当に思います。
「七転び八起」って言ったりしますけど、個人的には「七転び一起き」くらいでいいというか。
たくさん転ぶ中で、1つ手につかめれば儲けもの、そんな心持ちでいて良いと思うんです。
最後に就活生にエールをお願いします。
よく自己分析をしようっていうじゃないですか。
それで、自分の中で答えが見つからなくて苦しくなってしまうことってある気がするんです。
そういう経験をしている人、多いと思います。
僕は、自己分析ではなく、「自己選択」でいこうと提案したいんです。
自己選択?
習い事でも趣味でもサークルでも、自分がそれを選んだ理由にこそ、その人らしさがあるんじゃないかって僕は思うんです。
何か答えを見つけようとせずに、自分が選んできたものを振り返りながら、そこにどんな意志や気持ちを込めてきたのかということが、自分らしさであり、オリジナリティなんです。
ぜひ自分が選んできた道を、自分で信じてあげてほしいなと。
何か、変わった趣味とか特殊な資格を持ってなきゃいけないということでは全然ないんです。
だから、自分が歩んできた道を振り返って、書き出して、そこにある「らしさ」を解釈によって導いてもらいたいと思います。
なるほど!すごく響きました。きょうはありがとうございました!
編集:秋元宏美 撮影:白賀エチエンヌ
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