2021年11月05日
(聞き手:堤啓太 徳山夏音)
これからのビジネスには必須だと注目されるプログラミング。でも、本当に身につけないといけないの?世界27か国で展開する無料のスクールの日本版、42Tokyoで責任者を務める長谷川文二郎さんに、就活生が率直な疑問をぶつけます。
学生
徳山
プログラミングが必要な力だと就活でも言われるのですが、なぜ求められてるのでしょうか。
プログラミングって「はやり」だとは思うんです。
42Tokyo
長谷川さん
でも、何で今それが言われているかって、やっぱり需要がすごいからだと思います。
1000年前は多分、字がきれいだと「すごいぞ」みたいな時代だったと思うんですけど。
はい。
今は主戦場がパソコンというか、デジタル上になっています。
だったら、それがどう動いてるか知らないとだめだよねっていう意味でプログラミング、デジタルの知識が求められているんです。
42Tokyo 長谷川文二郎 事務局長
フランス発のプログラミングスクール「42」。その日本版の責任者を務め、試験やカリキュラムの管理などを行う。2020年に開講し、現在の受講生は427人(2021年6月現在)。大手IT企業への就職を決めて卒業する人も。
ただ、アプリを自分で開発できたからといって就活で通るかというと、そうじゃなくて。
どういう考え方でデジタルなビジネスが成り立っているのかを理解して。
そのうえで、何かしら自分の特色みたいなものを積んでいったほうが、求められる人材としては高いレベルかなと思ってます。
学生
堤
あえて極端なことを聞くんですけど、今、就活生ってプログラミングの技術を持っておいたほうがいいんでしょうか?
極論、好きにしたらいいんだと思います。
でも例えば日本語の「50音」ってありますよね。
じゃあコンピューターにおけることばって何かというと、プログラミング言語なんですよ。
それは知っていたほうが、デジタル上は強いわけですよ。
でも、学校の授業でプログラミングをちょっとやったんですけど、やっぱり難しくて・・・
プログラミングのおもしろさってどこにあるんですか。
「デジタル上での自己表現」ができるんですよ。
例えばNHKのサイトのトップページを変えますって時に、皆さんは多分変えられないんですけど僕は変えられます。
ここの青を赤にしたいとなった時に、誰にお願いしてどういう感じでやれば赤に変えられるか分かるので、すぐできるんですよ。
なるほど。
「スマホを使えるのと使えないのとどっちがいいですか?」っていうような話だと思っていて、スマホ使えたほうが楽しいじゃないですか。
カメラ撮れるし、かわいくなれるし、友達とつながれる。
プログラミングが嫌だなと思ったらそこで止めるんじゃなくて、何となくウェブページってこういうふうにできていて「ここを直すならデザイナーさんとかに聞かないとな」くらいの知識を持っておけばいいと思います。
向き不向きで判断しないほうがいいんですか。
いや、実際向き不向きはありますよ。
得意じゃないって思ったら、そこで諦めてもいいんじゃないかなと思ったりはします。
だったら得意な友達を探しておいて、会社に入った時に困ったらLINEして「ちょっと2000円渡すからやってくれない?」って聞けたら、それで最高じゃないですか。
たしかに!!
そもそもですが、42Tokyoってどんなところなんですか。
フランス発のエンジニア養成機関で、学費無料、24時間ずっと開いている校舎、そして学歴不問で16歳以上であれば誰でも挑戦できます。
フランスで2013年に個人の資産家が始めたんです。
テストがすごく難しいと聞いたんですが。
簡単に言うと合格基準がないんですよ。
「ピシン」という4週間続く入学試験なんですが、4週間じゃ解ききれないぐらいの課題を渡されて、それをずっと解き続けてくださいと言われます。
でも、その課題を全部解ききったから合格かっていうとそうでもなくて、基準が一切明かされていないんです。
「どうやったら入れるかな」とずっと考えながら、いろんなうわさと闘いながらやるのがけっこう大変かなと。
「ピシン」
42の入学試験。フランス語でスイミングプールの意味。プログラミングにまつわる問題をヒントなしで数百問出題される。30日間で解くことを求められ、周りの受験者と相談することもできる。ただし合格基準は示されず、“プールでもがく力”を試される。
自主性に任せるって感じなんですかね。
そうですね。
入学したあとも卒業っていうものがなくて、自分が好きなだけ学んで実力がついたと思ったら出ていく。
「ここまでいったら合格」とか決めてしまうと数字だけ求めちゃうというか。
例えば大卒だからといってみんな実力が同じかっていうと、そうじゃないですよね。
そういう意味で、自分でちゃんと目的を定義して、それにコミットする。
なるほど。
今、学歴だけがすべてじゃないっていう風潮になってきていますよね。
大学に入ってなくても実力ある人がいるなら、その受け皿をわれわれがつくるっていう気持ちでやっています。
大学を選べなかった人とか、大学じゃなくてもいいという人が一緒に学習できるような場所はつくっていきたいんです。
ここは先生がいないと聞いたのですが、どういうことですか。
いわゆる学校ではないので、社会に即したような教育機関になりたいと思っているんです。
「社会に即した」って何だって考えると、会社とかだと先輩はいるけど先生っていないですよね。
はい。
そういった状況を作っているんです。
先生がいないから、うまくレビューをしてもらうスキルも必要なんですよ。
ニコニコしていたらもらえる情報があったのに、そうでないと損しちゃうとか。
そういう形で社会と同じような仕組みを作って、スキルを身につけてもらいたいって考えています。
実際、どういう方がここに入学しているんですか。
それが、いろんな人がいすぎてなかなか答えられないんですけど・・・
50%くらいが20代前半の方で、その中に大学生だとか専門学生とかが多くいらっしゃって。
そのほかにも高校卒業してここにフルコミットとか、大学をやめた方もいます。
もちろん社会人もいますし、5人のお子さんがいる女性の方が学んでいたりもしますよ。
いろんなバックグラウンドの人がいるんですね。
みなさんはどんなふうに取り組んでいるんですか。
開校当初、「日本人だと受け身の人が多い」って、呪いのように言われることもあったんですけど。
1年たって全然そんなことないなと。
今、学生が420名くらいいますが、それぞれ活発に学習を進めていて、フランスで見た光景と全然遜色ないなって思ってます。
学んでいる人の共通点とか特徴ってありますか。
「人と学ぶのが好きな人」っていうのは共通項としてあるのかなと思っていて。
入学試験が4週間あるって言ったんですけど、入学した後の学習方法も全く変わらないんですよ。
何の説明もなしに膨大な課題をただ解き続ける。
すごいですね・・・
それを解いたら他の人と共有して答え合わせしてまた進んでいくみたいなことの繰り返しです。
やっぱり人と学ぶのが得意じゃない人は耐えきれないんですよ。
プログラミングってパソコンの前で一人で黙々とやるっていうイメージが強かったんですけど、コミュニケーションとってやっていくのが得意な人がいいんですね。
そうなんですよ。
コミュニケーションできるエンジニアを多く輩出できるかなって思ってます。
ここでは誰も答えは教えてくれないし、自分で見つけていかなきゃいけない。
何か課題があったら、自分で何とか頑張ろうと思えるような人が「自走」できる人なのかなと思っています。
「自走」ですね。
社会で生きるためには多分他者との関わりって必要なんですよね。
それも含めて社会で「自走」する力って、コミュニケーション力と課題解決の能力かなと考えてます。
長谷川さんにとって、「学ぶ」って何でしょうか。
「楽しむこと」ってしました。
フランスの42に入学して体験したのですが、楽しかったんです。
何が楽しかったかっていうと、たぶん人とコミュニケーションすることもひっくるめて学ぶことができたからで。
学ぶことが先行していくより、何か楽しいから学ぶとか、知りたいから学ぶとか、そういうのが本来の「学ぶ」ってことなのかなって思います。
はい。
自分がすごく疑問なのが、学ぶことって努力みたいになってるじゃないですか。
本来、学ぶって人間がやらなくていいことというか、それこそ白米食べて、排せつをして、寝ていればOKなんですよ。
本来学ぶって、すごく「娯楽」。
学ぶことを楽しむとか、楽しいと思うことを学ぶとか、そういうふうになってきたらいいのかなと思います。
ありがとうございました!
編集:加藤陽平 撮影:小野口愛梨
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