2020年08月05日
(聞き手:石川将也 勝島杏奈 高橋薫 )
日本各地の伝統産業の職人と一緒に、赤ちゃんや子ども向けの工芸品を製作し販売する企業「和える」。社長の矢島里佳さんは大学4年生の時に創業しました。矢島さんは、新しいことへのチャレンジを躊躇する学生に対し、「何を恐れるの?」と問いかけます。「自由に動けるのは学生の特権だ」という、「挑戦のすゝめ」です。
さっそくですが、お仕事について教えてください。
「和える」は日本の伝統を次世代につなぎたいという思いから、私が大学4年生のときに創業しました。
矢島里佳さん(32)
1988年7月24日、東京都生まれ。ジャーナリストを志して慶應義塾大学に入学。在学中に日本各地の伝統産業の職人を訪ねる連載を雑誌に持った経験から2011年、株式会社「和える」を起業。日本全国の職人とオリジナル商品を生み出す“0歳からの伝統ブランド aeru”を立ち上げる。その他、日本の伝統を暮らしの中で活かしながら次世代につなぐ様々な事業を展開。
創業時から変わらないことは、日本の伝統を次世代につなげることです。
学生のころ、就職するという選択肢はなかったんですか。
日本の伝統を赤ちゃんや子どもたちに伝える会社を探したのですが。
見つからなかったのでビジネスコンテストに出場して、それがきっかけで創業しました。
ないなら、つくればいいと。
そうですね。
ゼロからやるのは大変なので、私もぴったりの会社が見つかっていたら就職していたと思います。
でも、社会のせいにして、大人のせいにして、自分のやりたい事がなかったとか。
「しかたなくこの仕事してるんだ」という人生だけは嫌だなと思って。
そうですよね。
そんな気持ちで働いていたら、一緒に仕事をしている仲間やお客様に失礼ですし。
自分の人生なのに社会とか他人とか大人のせいにして逃げて生きてくってかっこ悪くないですか。
お話を聞いていて、すごくアクティブなイメージを持ったんですけど、実際どのような学生だったんですか?
自分に素直に生きている学生でしたし、今もそうです。
生き方はずっと幼稚園くらいから変わってないんでしょうね(笑)
そうなんですか(笑)
当時は「学生だから」とも思ってなかったですし、20歳過ぎたらいい大人ですよね。
18、19歳も、もう(大人の)プレエントリーみたいなものなので。
自分の責任で社会に迷惑かけない中で挑戦できる事なら、それを自分でかなえてあげるのはすごく大事です。
「やりたいことがない・・・」っていう学生も多いと思うんですけど・・・、どうすればいいですか?
それは動いていないからかもしれませんね、やりたいことを持てるまで。
私もそんなにきれいにこの仕事を思いついたわけじゃなくて。
インターンに参加したり、社会人の方とお話したり、いろんなチャンスに自分で応募したり、開かれている扉は全部たたきました。
やってみるという姿勢が大事なんですね。
最初、職人さんを専門的に取材するフリーのライターとして仕事がしたいなと思ったんです。
それで企画書を書いていろんな方にお願いして回って。
ある旅行会社にその企画書をつないでいただけたのがきっかけで、職人さんの取材を大学3年間させていただきました。
企画書というのは何かの連載ですか。
そうです。連載の仕事をいただけて、各地の職人さんの工房を周り、自分で文章を書いて写真を撮っていました。
行動力がすごいですね。
私たちも学生ですけど、なかなか自分で企画書を用意してチャレンジしようって踏み込めないところがあって・・・
踏み込まない理由は何ですか。
失敗したらどうしようって・・・
失敗しちゃいけないですか。
やっぱり、恐れてしまう気持ちがどこかにあるんです。
恐れるほど何か持っているんですか。
あっ、そう言われると何も持っていないです。
何も持ってないんだったら、何を恐れるんですかね。
その考え方はしたことなかったです。
だから私は動いたんですよ。
自分は何も持ってない。だから失う物がない。
こんなにも何も持たずに自由に動けるのは学生の特権ですよね。
むしろ、今だからこそできることなんですかね。
何歳になってもできるとは思うんですけど、若いほうがやりやすいですよ。
ちなみに、生きていくのはこわいですか?
正直、社会人になるのもこわいです。
仕事があんまり楽しくなさそうにしているのを見てしまうと、ポジティブなイメージを持ちきれなくて。
私は両面ありますね。
大変そうだなっていう面もあるし、自分でなんでもできるようになれるのは、すごくいいことだなとも思います。
子どもたちに働くのってこわいなと思わせている大人に大きな問題がありますね。
そこは大人の反省すべき点です。
でも、何人の大人を見てその話をしているのか、それが全てだと思うのはすごく視野が狭いと思うんです。
実は、いつも楽しそうにしている人は、心地よいと思う環境に自分を置く努力をしているんです。
はい。
尊敬できる人が周りにいないって嘆く人ってけっこういると思います。
でも、尊敬できる人に会いにいく努力をあなたはしましたかって、私は思います。
実際に職人の方々とお仕事して、なかなか受け入れてもらえないとか、大変だったことはありますか?
そうですね。半端な感じだとそうなるかもしれないですね。
職人さんを訪ね始めた19歳のときですが、その私を受け入れてくれた人たちがいるから今があるんですけど。
今も「『何で、何で』ってずっと聞くよね」って言われるんです。
「自分が考えた事もないような質問をしてくれた」って言って下さるんですよね。
考えたことないような質問ですか。
例えばこの津軽塗のコップ。
作るのに菜種油に使う種で模様をつけているのですが、「何で菜種油の種なんですか?ほかにもありますよね」といった質問をします。
はい。
職人さんも代々受け継がれているので、「疑問を持たずに受け継いでたなぁ」とおっしゃって。
その現場にいる人に「ハッ」とさせる質問ができるのはすごく重要です。
確かに。
熱意というか、「真剣に興味あります」っていうのはキャッチしていただけました。
物を作る側で「質問する力」についてお話される方はいなかったので、意外でした。
「質問力」と「疑問を持つ力」は大切ですよね。
今20代に戻れるとしたら、やっておけば良かったことはありますか?
え、戻りたくない絶対(笑)
おー!
今のほうがいいもん。
若いうちにこんなこともできたんじゃないかとか・・・。
やりきったから大丈夫!
そう思えるようになりたい。
秘けつは自分に素直に生きることです。
死ぬか死なないかで考えて、死なないんだったら全部やったほうがいいよっていうことです。
「0歳から伝統工芸に触れてほしい」という矢島さん後編は、こちらからごらんください。
こちらもご覧ください。挑戦する女性たちに聞きました。