教えて先輩!キリン 山崎真理子さん【前編】

公式SNS“中の人”に聞く これからの情報発信

2020年06月23日
(聞き手:田嶋あいか 堤啓太)

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日々、様々なトレンドが行き交うSNSは、企業にとっても大きなPRの場です。大手ビールメーカーキリンの公式SNSの“中の人”山崎真理子さんに、消費者とのコミュニケーション術について聞きました。

“中の人”のお仕事とは?

学生

よろしくお願いします。山崎さんはどんなお仕事を担当されているんですか?

今はキリンビールの公式SNSの“中の人”を担当しています。

山崎さん

リモートでお話をうかがいました。

2016年から担当になり、途中、産休・育休も挟んで今4年目ですね。

SNSにも色々ありますよね?

そうですよね。LINEやYouTube、あとTikTokとかたくさんありますよね。

でも、キリンビールに関しては、フォローは20歳以上のお客様に限定させていただいているので、その年代によく利用されているTwitterやInstagram、Facebookを使って発信しています。

学生
田嶋

実際に拝見して、面白いツイートがたくさんあるなと感じたんですけど、これまでで一番印象に残っているツイートはなんですか?

すごく悩みますね(笑)どれも思い出があるんですけど、2017年のエイプリルフールですかね。

エイプリルフールは嘘をつく日ということで、各社ありえない商品の告知をしたりすることあるじゃないですか?

でも、そうじゃなくてビール業界全体を盛り上げられるような投稿をチャレンジできないか考えて、社内に提案しました。そこで投稿したのが、こちらです。

面白いですね(笑)。

社内の理解を得るのは苦労しましたが、エイプリルフールといううそを言う日に、あえて「本音だけど、少しいいにくいこと」をツイートすることで、皆さんにクスッと笑ってもらえるといいなと考えました。

親しみも感じてもらえますよね。

本当ですね。

あと、勤労感謝の日のツイートですかね。

全てのはたらく皆様へ“感謝状”という形で表現したんですけど、逆に「中の人、お疲れさま」と優しい言葉をくださるお客様がたくさんいて。

日々忙しい中だと感じられないようなお客様の存在を本当に感じましたし、ありがたいなって思いましたね。

それは、嬉しい気持ちになりますね。

SNSならではのコミュニケーション術

企業にとってはSNSの魅力ってどんなところにありますか?

テレビCMとかポスターとかのマス広告って、大衆向けのプロモーションなんです。

いかに店頭で目立つかとか、いかに記憶に残るかってことを重視しているので、同じメッセージや同じビジュアル、同じタレントでドンドンドン!って。

“中の人”にSNSならではのPR思考法を聞きました。

確かに。

でも、認知を上げるためのマス広告と、私が担当するSNSでは役割が異なると思うんです。

私たちのチームではマス広告で伝えきれない情報や魅力をより丁寧にお伝えすることを一つの目的にしています。

納得感が得られる情報を発信して、より強いファンになってもらうことを意識しています。

ファンを増やす秘けつはなんですか?

「かっこいいことをやりすぎない」ことかな。

かっこいいことをやりすぎない…。

私たちの商品って、全国どこでも手に入るので、すごく無機質に捉えられがちなんですよね。

でも、“人感”を持ってもらえるように、泥臭いところを見せてもいいんじゃないかなって。

好意や興味を持っていただいているお客様にはできる限りリプライするようにしていますし、“人らしさ”みたいなところを大切にして、情報発信していきたいなと思います。

インスタの投稿ではどんなことを意識していますか?やっぱり1枚目が肝心なんですか?

はい。いいところに気づいていただけました(笑)

私たちも「どういう表紙がいいのかな」というのを日々試しながら投稿しているんですけど…。

なんだかんだビールと茶色いおつまみが一番だなって感じています(笑)

(笑)

キリンビールをフォローしてくださっているお客様は、ストレートにビールが大好きなんですよね。

ビールグラスと焼き鳥とかがやっぱり一番お客さんも喜んでくださります。

でも、何でも「バズらせればいい」っていうわけじゃないんですよ。

えっ、そうなんですか?

たしかに私が着任した2016年当時は、企業アカウントはバズらせてなんぼみたいなところがありました。社内の評価指標も“リツイート数”とか“いいね数”で見られていたんですね。

ただ、バズることを目的にしてしまうと、本当に伝えたいことがだんだん薄れていってしまうんじゃないかと感じていて。

なるほど…。

キリンファンの方が本当にバズるような情報を欲しているのかっていうと、ちょっと違うのかなと。

最近では、「本当にお客様が喜んでくれる情報は何だろう」「メリットがある情報は何だろう」というのを意識して、日々の投稿を作成しています。

例えば投稿の最後に作り手が見えるようにすることで、親しみとか、人らしさというものを商品に対して持ってもらえるんじゃないかと思って。マーケティング担当者を出したりもしています。

確かに人らしさが感じられますね。

1ツイートに時間をかけて

たくさん魅力がある一方で、SNSは一歩間違えれば炎上してしまう危険性もあると思うんですけど、投稿するときに気をつけていることはありますか?

そうですね。「誰も傷つけない投稿」というのをすごく心がけています。

言葉って文字で見たときとしゃべっている時とは違うし、Twitterだと140文字しかないので細かく説明できないというのもあって、ちょっとした言い回しで間違って捉えられることもあるので。

基本的にはツイッターでも文字の向こう側にお客様がいると考えています。

ですから「本当にお客様が目の前にいた時にそういう言い方するかな」ってすごく気にしています。

投稿する時にはお客さんの顔を想像するんですね。

「こういう言い方のほうがいいんじゃないか」とか・・・、いろんなことを考えるので、ひとつツイートするのにも、すごく時間がかかります。

社内のチェックは入るんですか?

そこはちゃんとあります(笑)。チェックするフローやマニュアルみたいものがあるので、できる限りそれに沿って考えています。

でも、そのルール通りにやると結構ガチガチになっちゃったりするので、難しいところなんですけど。

面白さも同時に入れるってなると難しいですよね。

そうですよね。でも私一人だけでSNSを回しているわけではないので、チームのメンバーと「このツイート面白かったよ」って情報を共有したり、「こんなのどうかな」ってこまめにやり取りするようにしています。

その中で「あ、これいいね」ってワーッと盛り上がったのが形になって、ツイートに出てくるっていう感じです。

そうやって形になっていくんですね。

あと、実は、企業Twitterの“中の人”同士もつながっていたりするんですよ。

“中の人”が集まる飲み会もやっていて、そこでの情報交換は勉強になっています。

“中の人”飲み会・・・楽しそう!

へー!

同じような仕事をしていると、やっぱりみんな同じような悩みを抱えているんです。

日々のネタを考えるのはもちろんそうですが、あと会社の中では「これを伝えなきゃいけない」という方針があっても、Twitter上では広告っぽくなりすぎると嫌われてしまう。

やっぱりそういうせめぎ合いみたいなところは、どの企業の“中の人”もみんな悩んでいるところです。

▽山崎さんが“中の人”になった理由を聞いた後編はこちらからご覧ください。

▽教えて先輩!3Dアバター イトッポイドさんに聞いたはこちらからご覧ください。

編集 成田大輔

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