教えて先輩! コピーライター 梅田悟司さん

人気コピーライターに聞く“伝え方の極意” 【後編】

2020年02月05日
(聞き手:高橋薫 土井湧水 西澤沙奈)

エントリーシートに面接、どうすれば自分のことがきちんと伝わるか、就活生にとっては切実な問題です。ビジネスや人間関係の上でも「言葉にできる」ことは大切ですよね。人気コピーライターの梅田悟司さんに「伝え方の極意」を聞きました。

伝えるときは 9.5:0.5

学生
西澤

人に何かを伝える時に大事なのはどんなことでしょうか。

言葉にするって「自分が考えていることを切り取りながら話すこと」なんです。つまり、知らないこと、考えていないことは話せないですよね。

梅田さん

自分のことを話すなら、自分の感情をいかに知っているのかがカギになります。

自己紹介をする時に、出来事の羅列をする人が多いですよね。でも、それはあくまで表面的な話で、自分のことを話していることにはならないんです。

なるほど。

あと、語彙力があれば上手に話せるというわけじゃないんです。

何に悩み何に不安を感じるのかや、新しいことをする時にどんな感情が生まれやすいのかなど、自分の中にある無意識に対して意識を向けていくことがすごく大事だと思います。

テクニカルな話って、10のうちの最後の0.5くらいなんです。大事なのは中身の9.5のほう。だからうまくしゃべろうとしないで、感情のままにしゃべるのが一番いいと思います。

うまくしゃべろうとすると、この比率が6:4くらいになるんです。すると言ってることは理解できるんですが、薄っぺらくて納得や共感を得られないんです。

あー、確かに。

表現方法はすごく上手だけど話自体が薄っぺらいので、表現だけが目立ってしまって内容が全然入ってこない。それもそのはず、話の中身がないからなんです。

それよりは話は上手じゃないんだけど、中身がすごく共感できる、なぜならその人の感じていることがそのまま出ているからというのが一番いいと思います。

学生
高橋

すごく自分の就活に刺さるものがありました。

学生
土井

いろいろ情報を入れすぎて、考える余裕がない就活生もいると思いますが、どうすればいいでしょうか。

脳って基本的なキャパシティーがあるので、情報を入れたら出してあげることがすごく大事だと思います。ノートに走り書き程度でもいいので、その時に私はこう思ったと列挙して。

一回、書いたら頭からなくしてしまっていいんです。ちゃんと外に出してあげる事によって、考える余裕が生まれますから。

悩みとかもそうです。頭の中であれこれ考えて夜眠れないような時も、メモに残すことによって頭がスッキリして眠れたりするんです。

へぇー。

自分にどういう感情が生まれたのかを書き出していくことが大切です。それって、自分の中から出てきた語彙力なんです。

それを僕は「内なる言葉」と呼んでいて、いつでも振り返ることができる状態にしています。

自分の中で言葉への認識が変わるし、自分の中から出てきた言葉だから使えるじゃないですか。感情と言語が結びつけば、「内なる言葉」は自分だけの強力な武器になり得るんです。

感情を深掘りするための3WAY

やっぱり感情って最初は解像度が荒いんです。「うれしい」とか「悲しい」とか、「やばい」みたいになる。もうちょっと詳しくと聞かれても「やばいものはやばい」で終わってしまう。

「やばい」みたいな話って基本、解像度が低いから「なぜ」を深掘りできないんです。どうすればいいかというと、幅をまず広げていくんです。

何かが頭に浮かんだら「それで何が起きるのか?」と前に進めてみることと、「本当にそうなの?」と聞いて自分を疑ってみることをやるんです。

同じ「やばい」でも「それで?」と進めると、「心が震えた」とか、「人生が変わるかも知れないと思った」とか、「本当に?」と戻すと、「実はそんなにやばくなかった」とか。

幅が広がるので、深掘りできるようになる。すると大きな逆三角形を描けるようになっていくんです。

なるほど。

自分の中にどんな言葉があるのか、どういう言葉がまず生まれたのかをちゃんと認識した上で、その言葉を使って言語化していくことがすごく大切です。

なんか、自己分析みたいですね。

同じことだと思います、自分のことを知ることなので。

例えば、「世の中の役に立つ何かをしたい」と思っていても、自分の経験をひも付けながら頭の中でぱっと出てきた物を羅列して話すだけでは、薄い話をし続けることになってしまいます。

でも、それを広く考えたり深く考えたりすればもっと解像度は上がっていきます。

「世の中が明るくなる」とか「人が笑顔になる」とか、「達成感がある」とか話が前に進むと、今思っていることの未来像みたいなものが見えて、話に現実感が出てくるんです。

あと、疑う時は、単語を疑うのが大事です。

単語ですか?

「世の中の役に立つ何かをやりたいって本当?」って考えても、「本当だよ」で終わってしまう。そこで、「世の中」「役に立つ」「何か」という単語に区切って疑うんです。

「世の中」よりももしかしたら、家族や隣の人のために働きたいんじゃないかとか、会社の売り上げのためではなく社会のために仕事がしたいと思っていたなとか。自分の本音に一歩踏み込むことができるんです。

なるほど、なるほど。

エントリーシート用に自分を作るのではなく、もっと自分にフォーカスすることが大事です。

自分が考えていることの本当の意味や理由を知る。そのためにまずは羅列して、その中から特に重要そうなものを選び、幅を広げる、深めるという作業を繰り返す。

そうして出てきた言葉を材料として、まとめあげていくんです。

そこまで考えられる学生っているんですか?

何かに没頭してきた人たちは、すでにできる人が多いです。そういう人たちが就活に強いのは、成果が出ているからではなく、成果にたどり着くための試行錯誤があるからです。

文字通り「考えながら走る」ことをしているので、その過程の中で自分と向き合っているし、向き合わざるを得なくなります。

でも、そういう人だけじゃないのが実際の就活です。出来事の勝負じゃなくて内面の勝負、自分がどういう時に心が動いていくのかを分かりやすく伝えることが大事だと思います。

面接の際の心構えって、どう臨めばいいんでしょう。

出来事と感情を結びつけて話して欲しいと思います。格好つけずに、思ったことをそのまま言ってみてはどうでしょう。引かれることもあると思いますが、本当の話をしている人って分かるんです。

プレゼンテーションではなく、本当に自分のことを分かって欲しいという気持ちで話す態度が大事だと思います。

黒いウソはダメ でも、白いウソならいい

面接の時についていいウソと、ついていけないウソがあることを知っていますか。

どういうことでしょう。

本当は部活の副部長なのに、「部活では部長をやっていました」って言うのは黒いウソ。これはダメなんです。

でも、「私が入ることで、あなたの会社を2倍にします」って言うのは白いウソ。これは、超ウェルカムです。目標だし、意気込みだから。

なるほど。

結婚で考えると分かりやすいです。「絶対、僕が幸せにする」と言い切るのは、白いウソです。そこに本気度を感じますよね。

一方で、「幸せにする自信はないけれど。結婚しよう」と言われたらどうでしょうか。

うーん、ちょっと考えちゃうかも。

自分の気持ちに正直なのかもしれませんが、そこは強く言い切って欲しいですよね。

その中に意思があれば、白いウソはいくらでも言っていいんです。自分が入社した時に、起こりうる可能性について、大いに語って欲しいと思います。

白いウソはちゃんと面接官に伝わりますか。

本音で話している人は、いかに話がつたなくても、コミュニケーションが上手じゃなくても伝わりますから、そこは安心して良いと思います。中身をがむしゃらに話すということがすごく大事です。

酸っぱいレモンをレモネードに

就活生など今の人たちを見ていて、感じることはありますか。

今でいうと、もう完全に自己肯定感の低ですね。自分が何かをすることによって、世の中が変わると思っている人たちが、圧倒的に少ないと思います。

どうしてだと思いますか。

SNSで情報に触れすぎることで、ふかんして物事を見すぎていると思うんです。すると、自分がやっていることが無意味のように感じてしまっているのではないでしょうか。

こんなに頑張ったって何にもならないとか、ここまではできるかも知れないけどこれ以上はできないとか、早めにあきらめてしまう世界観があると思っています。

世の中や日本が頭打ちになってるからということもありますが、結構、自分という存在を過小評価していると思います。

でも、すごくいい言葉があって。アメリカの『THIS IS US 36歳、これから』っていうドラマの中のせりふなんですけど・・・。

The sourest lemon that life has to offer and turned it into something resembling lemonade.

(人生がどんなに酸っぱいレモンを差し出してもレモネードを作ることはできる)

レモンをもらった瞬間って、酸っぱいだけじゃないですか。こんな酸っぱいものを食べろって、どんな罰ゲームですかと。人生で嫌なことが起きた、まさにその瞬間ですね。

でも、人生は長いし、色々なことがある。その過程で、レモンから、甘くてみんなが大好きなレモネードが作れる可能性があるんです。

しかし、そこには各自の工夫が必要になります。なぜならレモネードのレシピが提示されているわけではないからです。そのレシピを自分の頭からひねり出すことが大切です。

いい話ですね。

だから、レモンをもらった瞬間に、もう人生終わったみたいなことを判断しちゃいけない。レモネードに変えられるような出来事が絶対起こりうるわけで、現状だけで判断してはいけないんです。

日々、目の前で起きていることに一生懸命に取り組んでみることが大切だと思います。

仕事とは・・・

最後に、梅田さんにとって仕事とは何か教えてください。

「自分の時間を投資すること」ですね。

仕事をすることって、その業界や領域に皆さんの時間と能力をつぎ込むわけですよね。だから、自分がこの会社を成長させたいと心から思うことが大事です。

生産性は時間と反比例するので、入社したばかりの時は低くても、ある程度訓練を受けると、短時間で効率的にいい仕事ができるようになってきます。

だから最初から、生産性や効率ばかりを気にしてはいけません

なるほど。

生産性が高まって初めて会社や社会に貢献できるようになるので、そこまで頑張るということを念頭に置いてもらうといいと思います。

皆さんがその会社に入った時と入らなかった時で、世界にも差が生まれるわけです。その差は皆さんの時間に投資による効果なので、きちんとそこを意識してもらえるといいんじゃないかと思います。

3人

ありがとうございました。

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