教えて先輩! タレント・ボディービルダー なかやまきんに君さん

“チャンスは必ずやってくる” 筋肉も仕事も、負荷をかけ成長していく

2023年04月28日
(聞き手:堀祐理 西條千春)

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鍛え抜かれた筋肉とさわやかなその笑顔から発される「ヤー!パワー!」。

若者の間で大流行し去年はZ世代トレンドアワード2022の年間大賞にも輝きました。

2度のアメリカ筋肉留学を経て事務所から独立、自分を信じて道を切り開いてきた なかやまきんに君さんに、挑戦し続ける「パワー」の源を聞きました。

「負ける気がしない」日本の筋肉芸のパイオニア

学生

筋トレのYouTube、いつも拝見しています!!

本当ですか、嬉しいです!!(笑)

なかやまきんに君さん

学生
西條

これまで一度も芸風を変えず筋肉ひとすじでやってこられたんですか?

そうですね。

僕が19歳で吉本興業の養成所に入った時に、同期が600人ぐらいいたんです。

その上に、オーディションを受ける先輩、またその上に、劇場に出る先輩がいて、さらにその上に劇場のトップの先輩、テレビに出ている先輩…と。

すごい数ですね…!!

何か目立たなきゃいけないということで、筋肉キャラをやってみるようになったのがきっかけです。

ただ、ずっと続けてきた理由としては、筋肉は養成所に入る以前からずっと鍛えていたので、筋肉の動きとお笑いを合わせると何か新しい面白いものが生まれるかもしれないと。

予感というか、期待する気持ちはありました。

タレント・ボディービルダー なかやまきんに君さん

1978年生まれ。NSC(吉本お笑い養成所)22期生として2000年にデビュー、よしもと新喜劇などで活躍。2006年から2011年にかけ2度アメリカへの筋肉留学を経て、2021年に独立。現在は社長を務めながらタレント、ボディービルダー、YouTuberとして幅広く活躍中。

当時は、大阪では特にコントより漫才のほうが人気がある時代でした。

ピン芸人よりはコンビのほうが人気で。

ピン芸人で、キャラクターで笑いを取るなんて人は注目されていなかったですよね。

そうだったんですね。

だから不安もいっぱいあったんですけど、周りに誰もそういう人がいなかったので、他とは違うものを見せながら新しいことができるかもしれない、と。

根拠はないけど自分を信じてみようかなと。

きんに君さんがパイオニアで、そのあと次々と筋肉芸人さんが活躍されるようになったことは、どう受け止めていますか?

僕はいろんな筋肉キャラの人が出てきた方が面白いんじゃないかなと思ってるんです。

見方を変えたらライバルになるかもしれないんですけども。

ほかの人は、本業は漫才で趣味の域で筋肉キャラをやって仕事の幅を広げる人がほとんどだと思うんですけど、僕は筋肉のみでやって来たので、そこは負ける気がしないです。

別に向こうが戦ってないので、言い方おかしいですけど(笑)、何も変わらないですね。

全部辞めてアメリカへ!! 筋肉留学の裏側

活動を続ける中で2度アメリカに行かれたそうですが、筋肉留学ってどういうことですか?

アメリカのロサンゼルスはフィットネスの最先端の情報を発信しているので、そこで暮らすことはトレーニングを始めた17歳の頃からの夢だったんです。

もう1つは、キャリアを考えるにあたって3年とか5年ぐらい先、自分がどうなっているのか考えた、当時28歳ぐらいでしたが、「30代になる前にもっといろんな経験を積んでおかないと、目の前にある仕事はしばらく続いていくかもしれないけど、その先がないかもしれない」って思いました。

そうだったんですね。

だったら今、新しい挑戦をしようかなって。

失敗しても成功しても、いい経験になるとは思いましたね。

それで日本でやっていた仕事を全部辞めて、アメリカに行ったんです。

全部辞めて留学されることに対して、周りの反応はどうでしたか?

先輩芸人の皆さんはおもしろがってくれて、「実行するのがすごいな」って言ってくれました。

ただ、心配して「行ってどうするの」とか、「仕事全部なくなってどうするの」とか、「そんなの無理だ」っていう声もありました。

筋肉留学中、映画にも挑戦

筋肉留学中は何をされていたんですか?

まず、学生ビザで行ったので語学学校に。

月曜から金曜まで授業がありました。

高校卒業以来の勉強だったので、10年ぶりに当時のペンケースのチャックを開けようとしたら、やっぱりちょっと錆びてて(笑)、ギギギギギみたいな。

あはははは(笑)

一から勉強し直したんですよ、過去形とか未来形とか。語学学校の教科書でちょっとずつ宿題やってみたり。

それから4か月後の2007年の2月9日が金曜日で。

語呂合わせで筋肉日(金・2・9)って勝手に決めて、そこに向けてイベントをしようって決めて。

まだ英語も、過去形、未来形大丈夫かな?って時期だったんですけど、ショーをやったんですよ。

1時間、英語だけで。

英語だけで!

イベントやショーを開くことをモチベーションに勉強しました。

それから、1年目で自分で映画も作ろうと思って。

ロサンゼルスはハリウッドもあって俳優志望の人が多いので、オーディションで人を募集して、僕が台本を書きました。

えええ!!

英訳してもらって、カメラマン、音声さんも探して、雇って、撮影して編集して、それを上映したりしていました。

現地のボディービルの大会に挑戦したり、テレビやCMのオーディションも受けていましたね。

色々なことに取り組まれていたんですね。

そこに住んでみたいというのが昔からの夢だったし、とにかくワクワクしていました。

新しいことに挑戦すると、何か楽しいんじゃないかという思いもあって。

失敗したらどうしようっていうのはほぼなかったですね。

筋肉とお笑いは“反比例”!? 筋肉から人生を学ぶ

1つのジャンルを極め続けることの難しさって、どんなところにありますか?

筋トレってダンベルを上げたり下げたり、単純作業な感じもするじゃないですか。

でも単純な中にも奥深さがあります

筋トレはすべてのスポーツの究極の基礎トレーニングだと思うんです。

たとえば野球選手は、プロになっても素振りをし続けますよね。

筋トレも極め続ければ奥深いものが出てきて、1年目ではわからなかったことが3年目で分かったりとか、10年後にこういうことだったのかって発見があったりするんですよね。

なるほど。

あとよく言うのは、筋肉があるとお笑いもウケるんですよ。

どういうことですか?

筋肉量があると脱いだ時に「おお!!」って反応がいただけて、筋肉ルーレットで胸を動かしたらすごいウケる、ウケたら仕事が増えていく。

けど、忙しくなると時間がなくて筋トレができない、筋肉量が無くなっていく。

するとあまりウケなくなるんです、これが不思議と!!

ウケなくなると仕事がなくなってくるんで、時間ができて筋トレができるんです。

だから、筋肉と笑いは反比例の関係になっていて。

そこは難しいですよね~(笑)。

すごい反比例ですね(笑)。

筋肉芸人を究める難しさですよね。

でも、そういうところから人生も学べるというか。

忙しくてもうまくいく時もあれば、うまくいかない時もある、みたいな。

僕は筋肉から学べるんです。

独立「筋肉留学は終わっていない」

独立された理由は、何だったんですか?

アメリカへの挑戦がまだ終わっていないので、その続きのために独立を選びました。

筋肉留学したときは、オーディションも受けていたのに学生ビザだったので仕事ができず帰国しましたが、もっと経験を積んで条件が整えば、アメリカのエンターテインメントで挑戦できるんじゃないかって思っていて。

そのためには事務所にいてサポートがある環境で3年、5年と過ごすよりも、大変なこともあるけど独立して自分でいろいろ経験して過ごしたほうが、キャラクターを広げられると思ったんです。

独立されて社長になって、新しい“筋肉”になったなと思うところはありますか?

ははは(笑)。

独立して1年たった2022年が、今まででいちばん忙しくさせてもらった時期だったんですよ。

お仕事をいただいて慌ただしく毎日走り続けているので、どこが成長したなって落ち着いて自分を振り返る時期ではまだないかもしれないです。

僕は地球上の「ラストマッスル」

今後のいちばんの目標は何ですか?

みなさんには意味がよく分からないかもしれないですけども・・・

僕はもう、自分のこと、「ラストマッスル」って呼んでるんですよね。

いったいどういうことですか?

昔、「ラスト サムライ」という映画があったんですよ。

渡辺謙さんやトム・クルーズさんが出演された作品なんですけど、その筋肉版といいますか、「ラストマッスル」に自分で就任したんです。

筋肉ルーレットとか、「おい、俺の筋肉」とか、「ヤー!パワー!」とか、スパゲッティにチーズかけるとか飴ゲームとか、あらゆる筋肉芸をやってきて、そんな人、僕以外にもういないだろうと。

最後の筋肉芸人ということですね。

僕の中では、ラストマッスルを完結させるために、「これができたら、地球の筋肉芸が完成する」って目標があるんです。

地球の!!どんな芸なのか聞いてみたいです。

僕がいつも芸で使わせていただいてるボン・ジョヴィさんの曲「イッツ・マイ・ライフ」でイベントの幕が上がるんですが、それがボン・ジョヴィさんの生演奏なんです。

で、会場は「え、ボン・ジョヴィ来てんの!?」ってなるじゃないですか。

そこで僕が登場してきて、「ヤー!」って決めて、「ボン・ジョヴィさんです!じゃあ、粉チーズかけましょう。(お客さんに)え〜、やりたい人!」って聞いたら、手を挙げてる人がいて。

「じゃあ、そこのあなた舞台に上がって来て」って、出てきたらなんと、それがアーノルド・シュワルツェネッガーさん!!

「え、来てたんですか!!何で来てくれたんですか?」って聞くと、「飛行機で来ました」とかいってボケるんですよ(笑)

そこで、ボン・ジョヴィさんもコミック・バンド風に、「デデン」って鳴らすと。

「いやいや、ボン・ジョヴィさんもボケたタイミングでデデンとかしなくていいんですよ」って言いながら、大ロックスターと大映画俳優と一緒に粉チーズをかける!

これがラストマッスルしかできない、地球の筋肉芸の完成版です。

すごい目標ですね!

僕のこれまでは、ラストマッスルに全部つながっているんです、独立も、アメリカも。

始まりは17歳の夏です。

高校最後のバスケの大会が終わって、運動不足になるのが嫌でジムを探したんです。

隣町に自転車で30、40分行った、個人でやってるような小さいジムだったんですけど。

そこで初めてベンチプレスして、次の日筋肉痛になるけどそれで筋肉がつくかもしれない。

そこから始まっていたんです、ラストマッスルは。

負荷をかけるから成長する

きんに君さんにとって、仕事って何ですか。

ボケと思われるかもしれないけど、「仕事とは筋トレ!」です。

実は筋トレをすると、まず筋肉繊維が傷つくんですが、そこに栄養と休養を与えることによって回復して筋肉が大きくなるんですよ。

ただ栄養と休養だけ与え続けても、何も成長しないんです。

ちょっと負荷を与えたり、やり続けることで、仕事での成長もあるかもしれないし、人生の中での成長もあるかもしれないですよね。

筋トレと同じで、仕事も大変なことをして傷つくことが成長のきっかけになるのかなと思います。

就活生にメッセージ 「チャンスは必ずやってくる」

最後に、就活生にメッセージをお願いします。

もし将来に迷っていたら、やっぱり好きなことをやってほしいっていうのはあります。

今、好きなことがないという人も、18歳ぐらいまでの自分を振り返ってほしいと思うんですよ。

その時に必ず1回か2回は、ワクワクしたことや好きだったなって心が動いた瞬間があると思うんです。

それが、周りの人は全然興味を持たないことだったとしても、極端な話、ゴロゴロ寝るのが好きだったとしても。

こんなの仕事につながらないとか、だらしないと思われるだけだって思うんじゃなくて、そこに心が動いたなら、すぐには仕事にならないかもしれないけど、大切にして、自分が何を目指したらいいか考えてほしいなと思います。

好きなことや、やりたい仕事があるけど、うまく行かないという場合、何かアドバイスはありますか。

短期間で、自分を勝手に評価しないことです。

芸人として一緒にやってきた先輩も同期もみんな、活躍したり、しなかったり、いろいろあるんですよ。

例えば劇場では劇場での評価しかないんですけど、もしかしたらテレビかネットではウケたかもしれないし、お笑いじゃなくて音楽や絵で評価されたりすることもあるんです。

お笑いではコンビで目立ってない方が「じゃない方芸人」とか言われるけど、10年後に見たら「じゃない方」が活躍していたり。

人生、いつか必ず自分に出番が回ってくるんですよ。

そこに向けて大切に基礎トレーニングを積み重ねて挑戦し続けたら、必ずチャンスが来るっていうことは伝えたいです。

ありがとうございました!!

撮影・編集:秋元宏美

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