教えて先輩! NHK 桑子真帆アナウンサー(2)

心動かすものを伝えたい

2022年09月02日
(聞き手:小野口愛梨 佐藤巴南 本間遥)

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NHKの報道番組「クローズアップ現代」のキャスターを新たに務めている桑子真帆アナウンサー。ちょっと“お堅い”仕事のようにも見えますが、桑子さんを突き動かすのはいつでも「好奇心」。ニュースキャスターとしてのお仕事、聞きました。

キャスターは好奇心で

学生
佐藤

クローズアップ現代のキャスターになって3か月ほどたって(取材当時)、今はいかがですか?

ほんとうに正解ってなくって。

桑子
アナウンサー

視聴者の方や私も含めて、これまで描いていたクローズアップ現代というイメージにはなっていないんじゃないかと思うんです。

だけど私なりに一つ一つのテーマと向き合って、伝えきるっていうことを頑張っています。

NHK 桑子真帆 アナウンサー

2010年、NHKに入局。長野放送局、広島放送局を経て東京アナウンス室に勤務。「ブラタモリ」や「ニュースウオッチ9」などさまざまな番組を担当し、2022年4月から「クローズアップ現代」のキャスター。

学生
小野口

クローズアップ現代では毎回違うジャンルで、毎回違うゲストがいらっしゃいますが、どうやってうまく向き合うんですか?

やっぱり好奇心、知りたいっていう気持ちかなぁ。

ゲストはその道の専門家で自分は知らない側だから、「これが分からないから教えてください!」っていう姿勢で、打ち合わせでもいろいろ聞きます。

本番中の問いかけも視聴者代表として分からないことを聞くっていう役割だと思っているので、そこに引け目は感じなくていいのかなって。

学生
本間

分からないという人の声になって聞くってことですね。

視聴者は何が気になるだろう?

そうそう。でも、本当に何も分からないだと、何を聞いたらいいかも分からないから。

聞きたいって思えるぐらいまでは勉強して、こう疑問が浮かんでくる。

それを私一人じゃなくて番組チームみんなで話し合って、「VTRではこういうところまで取材できているけど、ここの部分気になるよね」って議論をしていくんです。

クローズアップ現代を見ている方々は、VTRを見ながらさまざまな情報や知識が入ってきますよね。

情報や知識が入った段階でゲストに何が聞きたくなるかって、質問を先読みするみたいな感じですね。

VTR後のスタジオで私があまりに無知な状態だと皆さんとズレが生じるから、番組全体の流れの中で設計を考えるんです。

なるほど!

でも、VTRを見終わった段階で視聴者がどういうことを気にしているかってどうやって分かるようになるんですか。

いえ、分からないですよ。

視聴者の方からすると「何でこんな質問してるの?」って思うことも、もちろんいっぱいあると思うんです。

だけど私一人じゃないので、みんなで話し合いをする中で「こういう疑問を投げかけると、視聴者の方に『そうそうそれ聞きたかった!』って思ってもらえるかも」というところに行き着くんです。

クローズアップ現代の企画打ち合わせ

打ち合わせの中なんですね。

ふだんからいろんなテレビも見るし、お友達と会話したりする中でも、どういうことを今の人たちは考えてるんだろうって常にアンテナを張るようにはしています。

やっぱり情報収集って大切なんですね。

ニュースの何が新しいか

いただいたスケジュールを見たらいつもニュースを見ていて、驚いてしまって。

そうですか?

でも皆さんと一緒で、今何が起きてるんだろうってSNSで調べたり、ネットニュースを見たりみたいな感覚ですよ。

さらに、自分が番組で扱う話題に関してもうちょっと深く知っておかないといけないものは調べたりしているくらいです。

ニュースを見る時どういうポイントをチェックされていますか。

何が新しいかは気にしています。

ある事件の続報が続く時ってあって、ちょっとずつ情報が分かってきて容疑者が捕まってとか。

そこで、これが今回分かったことなのかというのはやっぱり知りたいことだと思います。

なるほど。

あとは、きょうで、ある出来事から何年になりますという節目みたいなものは意識しています。

去年はどういう状況で、そこから何が進んで何が変わっていなくてとか。

あまり意識してこなかったニュースの見方でした。

ニュースを担当する中で節目というのは自然に体で感じるようになっています。

でも、それがいいかって言ったら実はそうではなくて。

例えば大きな災害で被害を受けた地域でも日々大小さまざまな出来事が起きて、そこには日常があるわけじゃないですか。

ある時期だけ大きくニュースで取り上げることには申し訳なさもあります。

取材の熱量を

改めて、報道とかニュース番組を担当されている中で意識されていることって何ですか。

意識していること…一面的にならないということですね。

物事っていろんな捉え方があるから、自分はこう思うけどそう思わない人もいるっていうのは常に自分に言うようにしています。

自分が思うことは正しいと思いがちで、だから「何でこうなの」って人は怒るわけだけど、違う考え方の人がいると思うと「あっそうか」って受け止めることもできる。

じゃあ、報道番組を担当する面白さってなんですか。

「クロ現」って毎回違うテーマにあわせていろんなディレクターや記者が番組をつくっているんですよね。

毎回打ち合わせの時にものすごい熱量で「今こういうこと知ってほしいんです」ってぶつけてきてくれるんです。

そういうプレゼンを受けると、自然と「そうなんだ!」っておもしろがれるから、自分はありがたい立場にいると思っています。

心が動くものを伝えたい

桑子さんにとって「伝える」とはなんですか?

知識や視野を広げるツール

伝えたことで何か発見だったり、想像力だったり、いろんなものが広がるといいなって。

そのツールだと思ってるんですよ。

じゃあ、一番伝えたいことって何ですか。

人の心が動くものを伝えたいですよね。

ハッピーなニュースも悲しいニュースもあるけど、人って無関心でいるのが一番もったいないと思っていて。

たしかに。

せっかく生きてるんだったら自分の心も動かしたいし、他の人の心も動いてもらいたい。

そうやって人としての厚みとか、想像力が養われると思っています。

私はテレビの仕事でいろんな人のさまざまな心の動きを伝える事で、そこに共感したり、それをきっかけに見た人の心が何かしら動いて活性化する。

難しいんだけど、そうできたらいいなと思います。

一生懸命の中で成長を

アナウンサーのお仕事をいろいろ経験されていく中で、自分なりのやり方っていうのを確立されたんですか?

10年ちょっとやって、自分なりの信念とかやり方みたいなものが何となく分かってきて、そこから理想の人物像になるべく、今は進んでるっていう感じですかね。

理想に近づくために、何に気を付けられていますか?

やっぱり日々、一生懸命向き合うことでしか得られないんだろうなと思いますね。

しっかり人の話を聞いて、どう思うかどう感じるかっていうのを自分の中でそしゃくして、どう言葉にするかっていう作業を繰り返していくしかないんだろうなと思います。

ちょっと引いて見た時に、人として成長できていたらいいなあって。

好奇心を大切にしながら日々の出来事、報道の現場に臨んでいる桑子さん。実は、学生時代は必ずしも「アナウンサー志望」ではなかったそう。次回は桑子さんの就活についてあれこれ聞きます。近日公開です。

編集:加藤陽平 撮影:加藤隼也

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