2022年10月28日
(聞き手:小野口愛梨 梶原龍 阿部翔太郎)
「ビリギャル」のモデル小林さやかさん。慶應義塾大学を卒業後も自らの意志で人生を切り開いてきましたが、今度はなんとアメリカの超難関大学に挑戦し、見事合格。30歳を過ぎてからの新たな挑戦の背景に大きな目標と“ギャル”ならではの「自己肯定感」がありました。
学生
梶原
この秋からコロンビア大学に行くとネットのニュースで見ました!
そうなんです。私、「ビリギャル」ってすごいコンプレックスだったんですよ。
ビリギャル
小林さん
そうなんですか!?
ただ受験しただけなんですよ、私は…って。
メディアに出て話しているだけで、いったい何がすごいんだろうと…。他人と自分を比べてすごく落ち込むこともありました。
【小林さやかさんプロフィール】
書籍『学年ビリのギャルが一年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』の主人公。子どもたちへの講演活動を続ける中で自らの使命を見いだしたことから海外の難関校への挑戦を決意。2022年にアメリカのコロンビア大学教育大学院に合格しニューヨークに。
講演活動でお金もらって東京でちやほやされて。それ相応の生活はできるけど、それに甘んじることが逆に辛かったんです。
そうだったんですね・・
だから留学して、私のことなんか誰も知らない世界でもう一回積み上げてみようと。
それで自分に自信を持ちたいと思いました。
不思議なのが留学しようって決めた瞬間に、自分の気持ちがすごく楽になったんです。
学生
阿部
楽になった?
「今からまた1年頑張るぞ」って思った瞬間、自分を他人と比べなくなったんです。
コロナ禍で講演も減った時期だったので「いまだ」って思って英語の勉強を始めて。この1年間は、1日8時間くらい勉強していました。
すごいですね。コロンビア大学に留学して実現したいことって何なんですか?
実は「日本を世界一幸せな子供が育つ国にしたい」という目標があるんです。
日本の子どもたちって、自己肯定感がものすごく低いんじゃないかって思っていて。それを変えられるのは教育だと思うんです。
だから、私は、残りの人生すべてをそこに費やしたいと思っています。
小林さんが学ぶコロンビア大学は、ハーバード大学やイエール大学などと同じくアメリカの名門8大学・アイビーリーグにも名を連ねる伝統ある私立大学。世界大学ランキングでも常に上位で、入学の難易度は「最難関」ともいわれる。多くのノーベル賞受賞者を輩出している。
学生
小野口
なんでそう思うようになったんですか?
学校で講演活動をしていると、先生が「うちの生徒は素直なんですが自信がないんです」というところがよくあるんです。
でもそういう学校って、先生が「おい列からはみ出ているだろ」とか「失礼だから話をちゃんと聞け」って厳しく言うから、みんな講演中は微動だにしないんですよ。
先生からは「一人でも慶應に」とか求められたけど、私が伝えたいのはそういうことじゃない。
小林さんが伝えたかったことは?
自分で意志を持つということ。自己肯定感を持ってほしい。自信をもってほしい。一歩踏み出す勇気を持ってほしいってことです。
その時に持っている学力とかは後で変えられるからはっきり言ってどうでもいいんです。自分ならできると信じている人が一番強い。
でも、途中で子どもたちだけに伝えても無理なんだと気が付いたんです。
どういうことですか?
講演を聴いて、子どもたちは「自分もできるかもしれない」という気持ちになってくれるみたいなんです。
それで「きょうビリギャルの話聞いて私も慶應行く」って気持ちになっても、大人たちに「あの人はもともと頭良かっただけ」って言われちゃうんです。
あ~~
そうすると「そうなのか、じゃあやめとくか」って、結局なってしまう。だから、私がやるべきことは大人を変えることじゃないかと思いました。
「大学は行ったほうがいい」とか「偏差値の高い大学は素晴らしい」とか、30歳超えてから海外の大学なんて考えられないとか。
周りの大人たちがそういう社会観をつくっているんです。
そういう価値観をなくしたい?
そう。だからもう一回学ぼうと思いました。
「子どもたちはこういうきっかけがあればよく暗記します」とか「こういう環境で育った子は学力が高い」というデータがありますとか。
これまでのように私の経験談を話しているだけではなくて、ビリギャルをもう少し科学的に説明できるようになりたい、そう思ったんです。
なかなかそこまでやろうとする人って多くないと思うんですけど、違いはなんだと思いますか?
私にあるのは地頭のよさじゃなくて自己肯定感だと思っています。
失敗することはだめなことだという環境で育っていなくて、どんなに失敗してもお母さんに「ナイストライ」ってほめてもらえたんです。
だから「物怖じせずにやりたいことはやる」って考えが私の中で育ったのかもしれない。
もったいないですよね?目標に向かって挑戦していたらうまくいってたかもしれないのに、挑戦することを諦めてしまう子もいるんです。
やってみなきゃわからないんです。
就活をしていると、自分の選んだ道が本当にあっているのか不安に思っちゃいます。
あるある、でも違ったら引き返せばいいんです。別の道に行けばいい。一発で正解っていうのは無くていいんじゃないかと思いますね。
なんか違うなと思ったら「すいません違いました」でいいと思います。私もそうでしたから。
小林さんは自分で自分の道を切り開いている感じがあります。
今も「留学から戻ってきたら何をするんですか?」って聞かれますが、それってわからなくないですか?留学で見える景色とか絶対変わるのに。
もしかしたら「アメリカ最高だから日本には戻るもんか」と思うかもしれないし、逆にトイレの便座が暖かいのが恋しくなって一刻も早く日本に戻りたいって思うかもしれない。
でも、それって行ってみないとわからないですよね。
確かに
進学も就職も全部同じだと思うんです。「この選択が絶対正しい」と思って頑張ったけど、実際は全然違ったってことは往々にしてありえます。
特に会社なんて、入ってみたら部署によっても全然雰囲気違うかもしれない。だから「やってられない」って思ったら辞めればいいっていうぐらいの考え方でいいと思うんです。
だから私はいつも「帰国したら何するの?」って聞かれた時は「今と考えが絶対変わると思うんで」って答えています。
みんなが自己肯定感を高く保つためには何が必要なんですか?
「やってみなきゃわからないっしょ」っていう言葉を一番伝えたいです。
「ビリギャルになりたいけどなれない」と思っている子どもたちに向けてだけではありません。
周りの大人にも「やってみなきゃわからないっしょ、だから見守って」と言いたい。
私が慶應行きたいって思った時に塾の先生は「いけるよ」っていったんですよ。
「いまから努力すればいいんだから」って。
そうでしたね。
こういうことを言える大人が日本には少ないと感じています。
マインドが変わると、パフォーマンスも変わるのに、前例がないからダメだと決めつける。根拠もなく無理だという。
大人たちのこうした考えが子どもたちに伝わっている感覚があります。
自分の経験を振り返っても、そういうことがあったかもしれません…。
子どもたちのハードルやストッパーにならないで、っていう気持ちが強いです。
ハードルやストッパーだらけの環境では挑戦できないですから。
最後に、就活生へのメッセージをお願いします。
最後は直感!
そう、直感ほど頼れるものないですから。「違う」と思ったらちゃんと「違う」と思う感覚です。
例えば引っ越しする時に内見したときに「この部屋なんかいやだな」と思うことってありません?
逆に、駅から遠いけど「なんかここいいな」って思ったら、もうそこに決めちゃう。そういう感覚です。
なんとなく分かる気がします…。
就活でも「この会社なんか分かんないけど好きだな」って感覚があると思うんです。実は、それを言語化してみると「自分はこういうものに惹かれるんだ」ということが分かります。
私は必ず直感にヒントがあると思っているんです。だから直感が「違う」ってなったら一回決めた後でもやめるんです。
ありがとうございました。直感を信じて頑張っていきたいと思います。
撮影:加藤隼也 藤川弥央 編集:鈴木有
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