2022年03月28日
(聞き手:石川将也 梶原龍)
プロ野球の東京ヤクルトスワローズで投手としてリーグ優勝にも貢献した久古健太郎さん。
2018年に球団から戦力外通告を受けましたが、その3か月後には大手コンサルティング会社でセカンドキャリアを歩むことに。
久古さんがマウンドで培った「緊張しない心構え」を教えてもらいました。
久古さんは、どうしてコンサル業界に興味をもったんですか?
社会に出るっていう決断をしたときに、なるべく短い期間で、ビジネススキルや社会人としての土台を作りたいなと思ったんです。
あとは、これまでは球団の中で選手としてプレーをしていたので、経営側の目線での仕事に携わることにも魅力を感じました。
久古健太郎さん
1986年5月16日生まれ 2018年 東京ヤクルトスワローズから戦力外通告を受けて転職活動を開始 2か月で6社から内定を得て、大手コンサルティング会社「デロイト トーマツ コンサルティング」に入社
転職活動はどんなふうに進められたのでしょうか。
引退を決めてから、まずは職務経歴書だったり履歴書を書くわけなんです。
でも、書き方がどうしてもわからなくて大学の先輩や、その知り合いの人に相談したりしていましたね。
書けたら、あとは、企業のホームページに直接エントリーをして。
直接?
エージェントや人材紹介会社にも登録してアドバイスをもらったりしたんですけど、プロ野球選手がコンサルティング会社に就職した前例がないので、紹介してもらえなくて。
だから、直接エントリーしてましたね。
プロ野球の世界から大手コンサルティング会社へ 転身の詳しいいきさつを聞いた「教えて先輩!デロイト トーマツ コンサルティング 久古健太郎さん【前編】」はこちらからご覧ください
何社ぐらい受けられたんですか。
全部で30社ぐらいですかね。
大体2か月弱の間に、書類を出して、面接を受けて、みたいなことを繰り返していました。
なので、体力的にもしんどかったですし、自分のポテンシャルを評価してもらうために、スポーツの経験を言語化する作業をひたすら繰り返していました。
とにかく寝不足だったことを覚えています。
これまでの経験をどのようにして言語化していったのですか?
ビジネスと野球って、やっている事は別々でも、突き詰めていくと共通する部分が必ずあると思っていました。
ビジネスの世界で、何かしら仮説を立ててそれが本当に正しいのかどうかを検証して、本当の課題を見つけていくサイクルがあります。
これってピッチャーが、なぜ打たれたのかの原因を分析するサイクルとプロセスが同じなんですよね。
こうやって自分がやってきたことをビジネスのシーンに置き換えて、会社に貢献できることをアピールしていました。
なるほど、説得力があります。
一方で、1つのことに打ち込んできたが故に、「いろいろな事を知らない自分が不安」と感じることもあるのではないかと思います。
そうですね。自分が面接官で「僕はスポーツしかやってきてないんで、勉強はちょっと苦手です」と言われて、その学生を採用したいと思わないですよね。
あまり魅力的だとは思えないですね…。
でも「スポーツ一筋に打ち込んで、チームのマネージメントや自分を高めるためにこういった取り組みをしてきました」という答えだったらぐっと印象は変わります。
同じ経験をしている人でも、自分が向き合った事を言語化してアピールできる方が、ポテンシャルを感じさせられると思います。
まずは相手の視点に立って、どういうことをアピールされると自分はその学生を取りたいと思うかと考えておくことがすごく大事なんだと思います。
周りでは、コロナ禍で大会などが中止になってESに書くことがないという不安を抱えている学生もいます。
それは、逆に、チャンスじゃないですか。
そういう逆境の中で、例えば「オンラインをつないでみんなで練習しました」でも良いし。
「こういう工夫をして取り組んできました」というは、今のコロナ禍の状況だからこそアピールできるポイントだと思います。
表面上の結果って偶然が関係することもあるし、僕は正直、あまり大事じゃないと思っています。
でも自分がそこに行き着くまでのプロセスというのは、偶然でもなんでもなく、自分が取り組んできたことそのものじゃないですか。
なので、表面上の結果よりも、そこに行き着くまでのプロセスの方が大事だと思います。
面接ってどうしても緊張しちゃうんですけど、緊張しないようにする方法ってありますか?
試合でも今の仕事でもそうなんですけど、本番で不安になる時ってそこまでに至る準備ができていない時だと思っています。
マウンドですごくピンチでも落ち着いて投げられる時って、準備がちゃんとできている時なんですよ。
「こういう場面ではこう投げる」というような想定をしておくとか、そこに至るまでの取り組みがちゃんと積み重なっていると落ち着いてプレーができるんです。
逆にそれができていないと、やっぱり不安になっちゃうんですよね。
なるほど。やっぱりまずはしっかり準備をしておくということですね。
そうですね。でも、他人が決める結果をコントロールすることはできないので、あとは、自分ができることを精一杯やるしかないですね。
コントロールできない部分のことを考えても仕方ないですから。
確かに…。
そういうことを理解しておけば、ある程度、緊張してもしょうがないなと割り切っていけるんじゃないでしょうか。
だから、僕もマウンドに上がるまではめちゃくちゃ緊張してましたけど、上がってしまえばそんなに緊張しなかったです。
就活ってうまくいかないことが多いなって思うのですが、うまく気持ちを切り替える方法ってありますか?
「正しく自己評価する」ことだと思います。
「もう少しうまく説明できたんじゃないか」とか「もっと言語化できた部分があったんじゃないか」とかいうように、自分を日々評価して、次の面接に備える。
結果以外の部分で、自分がやるべきことができていたかをちゃんと反省することが大事なんじゃないかなと思います。
モチベーションってどうしても結果に左右されると思うんですけど、あまり気持ちで動いちゃダメだと思うんですよ。
久古さんにとっての「仕事」ってなんですか?
基本的に仕事は、手段でしか無くて、目的はその先にありますよね。
たとえば、こういった社会課題を解決したいとか、いつまでにいくら貯金したいとか。
こういった目的は、自分が一番ワクワクしたりとか、一番モチベーション上がったりする達成したいと思うものであれば何でも良い。
みなさんも、就活をしてその会社に入る事をゴールにするのではなくて、自分がどういうふうになりたいか、どういう自分でいるべきなのかっていうことを明確に持っていれば、そこでブレないと思うんです。
就職はゴールではない。
そう。僕自身、みなさんぐらいの年齢の時にそこまで冷静に先を見ていたかと言われると、分からないですけど。
振り返ってみると、そういう考え方ってすごく大事になってくると思います。
最後に就活生へのアドバイスをぜひお願いします。
この「ことは必然」っていう言葉が好きなんです。
自分の思いどおりにいかないことが、これからもいろいろあると思います。
でもどんな経験でも、そこから何か1つでも学びがあれば、無駄になることはありません。
就活って周りの状況がどうしても気になると思うし、嫌でも人と比較したくなっちゃいまよね。
確かに、そうです。
でも、自分がどこに就職したとか、どこに行けたっていうのは、あくまで縁でしかありません。
そのあと自分がどういう過ごし方をするかで、その後の人生っていくらでも変わるので、最初のステップに固執しすぎる必要はないと思います。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
編集:清水阿喜子 撮影:佐藤巴南
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