教えて先輩!井上あさひアナウンサー

ニュースは歴史だと思っています  

2019年04月26日
(聞き手:土井湧水 佐々木快)

4月に始まった「ニュースきょう一日」。夜の顔としてキャスターを務める井上あさひアナウンサー。もともと、学生時代は小学校の教師を目指していたそうです。情報が行き交うニュースの現場で、井上アナウンサーは、日々、どのように向き合っているのでしょうか。

岡山県玉野市出身。2004年入局。鳥取局、広島局を経て東京アナウンス室。

これまでに「ニュースウオッチ9」「ニュース7」などを担当。4月から始まった新番組「ニュースきょう一日 総合毎週月曜~金曜 午後11時20分」のキャスターを務める。

武内陶子アナウンサーに憧れて

学生
佐々木

アナウンサーを目指したのは、いつからですか?

高校生くらいでしょうか・・・。でも、具体的に目指すというよりは、ずっと小学校の先生になりたかったので、アナウンサーは夢でしたね。

井上
アナ

まさか実際に受かると思っていなかったですし。でも、何もしないのも心が痛いので、アナウンススクールに通ってみたりしましたね。そういう消極的な人間なので。

憧れを抱いたきっかけは何ですか?

先輩アナウンサーの武内陶子さんに憧れたのがきっかけです。情報の伝え手というのが、すごく大きなウエイトを占めている仕事なんですけど。

「武内さんがニコニコしてて素敵だな、今日も一日頑張ろう!」とか思いますよね。そういうこともできる仕事なんだなと思ったのがスタートでしたね。

学生
土井

自分にもアナウンサーを目指せるんだって思った瞬間やきっかけがあったんですか?

ずっとなりたいけど、人に言うのも恥ずかしいみたいな感じで。受からないのに何を言ってるんだろうと、きっと思われるから…。

心の中では現実の仕事として捉えていたんですけどね。こういう風になれたらいいなってのもちろんあったんですけど。

そうなんですね。

華やかな部分も、もちろん素敵だなと思う一方で、地に足をつけて。NHKに入る時に「君たちはみんなジャーナリストだ」って最初に言われるんですよね。

でも私は記者のような取材の仕方はしないし、ディレクターのように長期で番組を作るわけでもないから、現実として「ホントにジャーナリストなのかな」って思う時ももちろんあるんですけど、私は私の職責を全うしようと思っている気持ちが強いんです。

そう思ってお仕事されているんですね。

華やかに見ていただくことが多い仕事ですけど、アナウンサーというのは、伝え手の一人であるという、NHKとしてのチームの一員だという気持ちの方が軸になっている感じがします。

大学時代。エントリーシート用の写真

自分の経験と、やりたいことはつながっている

学生時代に頑張ったことを教えてください。

私もう本当に普通で、特別なことがなんにもない人間だなって、試験を受けるとき本当に悩みました。

悩んだんですか?

「こういう経験をしてきました」っていう胸を張って言えることがなくて。そんな材料がない中から、私は教員免許を取ろうとしていたので、プラスして授業を受けて頑張っていたとか、数少ないアルバイト経験から感じた事とか、本当に日常ですよね。

私ってこんな人間だなって思いますと、色々な角度から書いて。(それをもとに)面接官に質問してもらって「こういう人なんだ」とわかるようにして…なんとか乗り切りましたね。

調べさせていただいたんですけど、お箏(こと)をされていたとのことでしたが、そういう話はしなったんですか?

しました!数少ない材料の1つですよね。お箏をしていたっていうのは。「あ、具体的に言える話あったー!」って感じで。

中学校の時にね、希望して手を挙げれば出られる全国大会がありまして。

いやいや、全国大会は誰もが出られないですよ。

お箏の生産が盛んな(広島県)福山市の近くの岡山県で育って、たまたま先生もいらっしゃって、部活があって、しかも団体戦だから私の能力と関係がなく賞が取れたんです。

ただエピソードとしては、お箏って周りの人の音をちゃんと聞いて、自分の出している音もちゃんと聞いて、合わせていかなきゃいけないんですよね。

その経験は生かされていますか?

いまの仕事にも、つながっていると思うんですよね。人の話をまずちゃんと聞く。自分が言うのではなくて、自分も喋るとしたらその人と調和するとか。

あとは本当に意味がある言葉になっているかを考えながら話すとか、そういうこととつながってると、面接で言った気がします。

「アナウンサーの仕事に繋がるかもしれません」なんて。何にも知らないくせにですよね(笑)

“これをやった”というよりは、“自分の人となりが伝わるように話すこと”が大事なんですね。

そうですね!まさに。

そういうことも当時は意識されていましたか?

していましたね。例えば、同じ事をコツコツ続けるのがわりと好きな性格とか、そういうことがだんだんわかってくるんですよね。

同じ事を毎日続けることが苦にならない性格だとしたら、仕事でもこういう事に生かせると思いますって言えると思います。

自分の強みはどこにあるかなと、具体的なエピソードをみつけて、相手に分かるように伝えて、仕事だったらこういうことに向いているかなと思ってもらえるように、面接で話せるように準備したという感じです。

研修時代。同期の鈴木奈穂子アナと岩野吉樹アナと。

ニュースの考え方や見方は、学生時代からアナウンサーになって変わりましたか?

恥ずかしいですけど、学生時代は(ニュースの見方とか)全く考えてなかったです。皆さん考えていらっしゃるのがすごいなと思います。

学生の頃は、こういうことを面接で聞かれるのかなとか、知っておかなきゃいけないかなという程度しか思ってなかったです。

当時は、まだニュースに対して関心が薄かったですか?

今に比べたら随分薄かったですね。(自分の)世界がそれだけ狭かったのかなと思います。

自分に関わることだとすごく知りたいなと思うけど、遠い話だなと思った瞬間に情報としてもそもそも入ってこない、アンテナを張ってなかったかなと、それはすごくもったいなかったなって思います。

新聞は全紙読む 視聴者の疑問を意識

井上アナウンサーの1日のスケジュールはこちら。

どんな媒体でニュースを見ていますか?

NHKの政治部や経済部など、各部が出している原稿は社内のシステムで全部目を通します。新聞も読みますし、ネットでニュースも見ますし、興味があることについて深く解説している動画とかも見ますね。

もちろん民放さんの番組もチェックしています。池上彰さんの番組を見てニュースを勉強することもあります。

朝起きてから、情報を随時チェックされるということでしたが、新聞は何紙読んでいるのですか?

職場に全部あるので、全紙ですね。自分の気になったところを、この新聞ではどういう風に書いてあるんだろう、どういう説明をしているんだろうという確認です。

こっち側から見るとこう見えるとか、そういうふうに書くんだなとか、この情報にフォーカスを当てるんだなとか、見えてくるんですよね。

番組で、アナウンサーがコメントを入れることがあると思いますが、自分の意見なのですか?それとも局の色を反映させた局の意見なのですか?

番組によって自分自身の思った事を表現する時間や場面があるかどうかはかなり違うんですね。今、担当している番組や直前まで担当していたニュース7では、全部原稿です。

大事なのは、原稿の意味をきちんと理解して音声化する。そういうと、機械みたいですけど、きちんと聞いて分かるように、できるかぎり間違えないようにお伝えするのが仕事で、意味が分かっていないと切るところも違ってくるので、まず文章の意味を理解する。

あと、文章の意味以上に大事なのが前後関係ですよね、このニュースはどういう経緯で今日の時点を迎えているのか、関連している出来事や背景を知るということです。

基本はニュースは全部歴史だと思っているんです。

歴史ですか。

歴史という観点から何年前の出来事があって今があるということも理解しておかないといけないと思っています。

聞いている方も関係性が分からなくなってしまうかもしれないので、できるかぎり長いスパンで深く理解した上で、目の前の原稿に向かうことが私の仕事だと思っています。

以前担当していた「ニュースウォッチ9」の場合は、キャスターが少し感想を言ってから次のニュースに進む場面がありました。

そのときは、30代の女性として、このニュースを見た時に感じることを一言挟んでから、次(のニュース)に行った方が見ている方も、ああこういう風に、この人は捉えているんだなと感じて頂けるでしょうし、考えるきっかけになるかもしれないですよね。

なるほど。

あとは本当に悲しいニュースだと、そのままさっと次のニュースに行くとどうしても見てる方もきっと辛いだろうと思う時は、少しの間、2,3秒の間があって次にいくとか。

もう少し時間があればひと言、そのつらさをしっかり受け止める時間にするとか、その時々でニュースの制作の担当者たちと考えながら言っていましたね。

状況によって、さまざまなんですね。

だから、全部自分の考えというのは、実はあまり存在してないんですけども、自分の考えとか感じ方が全くないと成り立たないんですね。

やっぱりチームで作っているから、“伝えたい気持ち”を表現するそれぞれの形が、原稿であったり、私たちの場合はコメントであったりっていう、表現の仕方が違うというイメージですかね。

毎日ニュースを読んでいて、情報の重要性を実感する瞬間はどういう時でしょうか?

例えば熊本地震から3年というニュースをお伝えする時に、3年という月日を私たちはこう過ごしたけど、熊本の方はこういうふうに過ごしてたんだなとか。

熊本の方たちを一括りにできないので、それぞれどういうお気持ちだったのかとか、今どういう状況なのかとか、仮設住宅にいらっしゃるとか、現地局が取材したものにできる限り目を通しています。

それだってほんの一握りだと思いますが、そのことを知ったうえで、地震から3年って伝えるようにしています。

伝わり方も違いますね。

違うと信じて、という感じですね。

わたしはスタジオにいて放送を守るという役割分担なので、現地で取材している人たちが出したいと思っている放送と、私が最後、バトンを受け取った放送ができるだけずれないようにと思って準備をしています。

仕事は・・・「人生」

「井上キャスターにとって仕事とは?」という質問に・・・

私は、私生活の全てがアナウンサーみたいなところがあって。帰ったら放送を見直して。

本当に不器用なので、アナウンサーである自分が、「じゃあ何時に放送が終わりました」「じゃあここからはオフで!」というのは全然できないんですよね。

じゃあ24時間アナウンサーということですか?すごい!!

そんな偉そうなことじゃないんですよ。ただ、自分の中で切り離せないっていう。そういう意味で前向きに捉えると天職だと言えるかもしれないんですけれども。

ただ、不器用なので、全てを捧げてやっと成り立つというぐらいの重みを感じることでもあるということですかね。

例えば疲れた顔でテレビに出ないようにちゃんと寝ておこうとか。

土日もどこか行きたいけど、体を休めた方がまた次の一週間頑張れるなと思ったらどこにも行かないようにするとか。

家で本読んでおこうとか。インタビューをどなたかにさせていただく場合は、その人の本をできる限り読んでおこうとか。

そういう過ごし方なのですね。

使える時間は、すべて良いパフォーマンスをするために使いたいって思っちゃうんです。

 

たまに「切り替えられなくて疲れませんか」と聞かれるんですけど、それ以上にちゃんとしたいんです。

自分の精神状態も「ちゃんとできなかったな。あの時、私がちゃんとしなかったからだ」と思うよりは、その方が幸せなんですよね。

自分がどっちが心地いいかというのを、少ない経験の中で考えて過ごしてきた結果がそうなので、やりがいもありますし、それが幸せなのかなと思います。

井上キャスターにとってニュースとは・・・「窓」

「最近あまり手書きしないから、緊張しちゃいますよね。字間違えたらどうしよう」と恥ずかしがりながら書いてくださいました。

私自身がニュースを通じて、世界ってこういうふうに広がってるんだっていう事を日々感じているので。

「ああ、こんなことがあったんだ」とか、知ろうとしてなかったんだけど入ってくる事とか。起きてる事を知るとかそういうところに、すごく魅力を感じいて。伝え手としてもそうあったらいいなと。

そこからまた広がっていくし、深まっていく。深まっていけるようにする。そのきっかけになるし、したいっていうところですよね。

今までの話と関連してるんですが、わかります?伝わります?

伝わりました!

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