教えて先輩!バンダイ中村梨紗さん

枝葉でなく、本質を考える

2019年04月26日
(聞き手:勝島杏奈)

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3月に放送したNHK「就活応援TV」。就活生が模擬面接にチャレンジするコーナーで面接官となったバンダイの中村梨紗さん。鋭い質問と存在感で、就活生をタジタジにさせていました。そんな中村さんは、何を大事に、仕事に、人生に向き合っているのでしょうか?そこに迫ろうと学生リポーターが取材しました。

2006年入社。昨年度は人事部で採用を担当。この4月に異動し、現在は、キャラクターの権利を扱うメディア部に所属

学生
勝島

よろしくお願いします。学生リポーターの勝島です。まずは1日のスケジュールを教えてください。

中村さんのとある1日のスケジュール

すごく基本的なことですけれども、「各事業部の商慣習や課題感の理解に努めています」はどういうことですか、学生としてはイメージが湧かなくて…

そうですよね。例えば、ショッピングセンターに行くと、おもちゃ売り場って例えば3階の奥の方にあったりしますよね。

中村さん

はい。そういうイメージがあります。

本来であれば玩具も食品もアパレルも、キャラクターごとに何もかも置けて、一大売り場にできたら目立たせたりできるんですけど、そこはルールというか、業界それぞれの商慣習、売り場のすみわけがあるんですね。

そうなんですね。

いま、メディア部で権利元と商品を発売する事業部の橋渡しをする仕事をしていますけど、例えば食品業界の常識やルールを全然わかっていない状態でビジネスの話をするのは厳しいじゃないですか。

なるべく“その業界の常識とかルール”をその事業の方と同じぐらいのレベルまで理解できるように努めています。

どうやって知識を得ているのですか?

直接は関係ないような話でも、打ち合わせ中にメモをしてますね。あとで「あれは、どういうことですか?」とか「どういう仕組みですか?」とか聞くようにしています。

知らない事を潰すようにして、なるべく自分の(知識の)範囲を増やそうという感じですね。商慣習に限ることじゃないんですけど。

雑誌も読まれるのですね。経済誌ですか?

経済誌…そんなに意識が高いわけでもないので…。

経済オンリーになっちゃうと結構しんどくて読めないんで(笑)

世の中の大きなトレンドとか、広く網羅している感じの情報雑誌が多いですね。

キャラクタービジネスを展開している会社なのでIP(※キャラクターなどの知的財産)に関する特集は気をつけるようにしています。

エンタメも全般的にチェックしてます。

あとは、新しい商業施設ができましたよ、とか。最近では聖地巡礼とか、そういうスポット的な話題もわりとチェックしますね。そうそう、最新技術とかも。

技術ですか!?

VRとかAIとか、そういった技術の記事も見るようにしています。

幅広いですね。

そんなに真面目に網羅しようと思ってやっているわけではなくて、表紙買いみたいなところも含めてですけどね。

会食は大事な情報源

夜7時の欄に書いてある会食ですが、どういう方がお相手ですか?

バンダイはキャラクターの権利を他社からお借りして商品を作っていて、その権利の交渉や契約をする仕事をしています。会食は権利元様やテレビ局、広告代理店、出版社が多いです。

会食では、どのような情報を収集するのですか。

まずお相手の会社のあり方や人事系のニュースはいち早く取るようにしています。

組織は「箱と人」で見ているんです。箱が変わるということは、そこには絶対に会社の考えがあるわけですよね。

この分野を伸ばしたいから、この部署を新設しますとか。この部署とこの部署を統合したほうがより相乗効果が生み出せるから改編するとか。

箱が変わる時って絶対に経営戦略が関係しているので、組織が変わるとか人が変わるっていう情報は知っておきたいと思っています。

「箱と人」が大事…、そうなんですね。

権利元様との会食では、お預かりしているキャラクターの3年後5年後、どう育てたいかというビジョンを伺うようにしています。

その認識がずれてしまって求めているものに応えられないと、先方にとってもバンダイと組む意味がないと思うので。そこのベクトルを合わせるためにも、会食は非常に貴重な機会ですね。

聞きたいことを聞くようにしていますし、こちらの情報も話せる限りのことは全てしゃべります。お互いにWin-Winでおつきあいしたいと思っているので。

会食は週何回ぐらいあるのですか?

多い時はすごいですよ。週のほとんどが埋まるときもあります。

すごい…。疲れないんですか(笑)

体力面では慣れですね(笑)

慣れるものですか?

はい。普通に楽しいんですよ。仕事って言いましたけど、やっぱり(情報を)いろいろ知れますしね。

(話していると)課題も一気に明らかになって「あ、明日からここ気を付けよう」とか、「ここ早急にやろう」とか明確になるんですよね。

本質を知りたい

夜10時、帰宅後に色々なサイトをご覧になっている中、特にSNSをチェックされているのが気になりました。何を目的にしていますか。

SNSって、すごいポジティブか、すごいネガティブか、いずれにせよ人の琴線が大きく振れた時につぶやくと思うんですよね。

なぜ見るのかと言うと、単純に、一つの出来事がどう受け止められたのか、どういう意見が生まれたのかに興味があるし、その意見を生み出した原因は何なんだろうなと。

「なんでというのを2、3回繰り返していくと、結構、本質みたいなものに近づいたりするので、そこに非常に興味があって。

何のために、そのように意識しているのですか?

純粋に知りたいという自分の欲求もあるんですけど、根本を知る事で、その根本を利用した何かを生み出すことができるかもしれないし、自分のすべきことが浮かび上がったりするので。私は枝葉にあまり興味がないんですよ。

本質を理解したうえで、最短距離で、かつ、より得るものが多い形でゴールする事を自然に考えているんです。すべて、真意は何なんだろうっていう気持ちで聞いています。

直感は無視しないほうがいい

学生時代についてもお聞きしたいのですが、当時、ニュースはご覧になっていましたか?

いや、見ていなかったですね。でも、活字は好きだったんですよ、私。なので本や雑誌からは情報を得ていました。

活字がお好きなのですか?

結構読んでいましたね。物心ついた時から。勉強のためというよりは、単に活字が好きだったからなんですけど。

学生時代は、アルバイトに明け暮れていたという中村さん。ゴルフ雑誌の記事を書いていたほか、お弁当屋さん、イベントコンパニオン、MC、引越など、30職種ぐらいのアルバイトを経験したそうです。新卒採用で企業に入らず、個人で仕事をしてもいいかなと考えたこともあったそうですが・・・。

たくさんの経験をされてきて、 なぜバンダイに入社したのでしょうか。

組織で働くことを知らないまま、個人の仕事が向いているって選択していいのかなという気持ちもあったんですよね。組織で働いてからどっちか選んでもいいんじゃないかなと思ったんです。

本に興味があるから出版社を受けてみようかなと思っていたんですけど、たまたまショップで手に取った雑貨がバンダイ製だったんです。

おもちゃ屋さんだと思っていたら、わたしが手に取るような雑貨も作ってるんだと思って、縁のようなものを感じて受けようと思ったんですね。

調べてみたら私服の自由度もポイントが高かったです(笑)。自分が大好きなものが抑制された状態で人生の大部分を過ごすのは苦痛だと思ったので。私服の自由度もバンダイにひかれた理由の一つです。

実際の選考はどうだったのですか?

初めは軽い気持ちで参加して。そしたら面接官として出てくる社員、出てくる社員が面白くて、受けるたびに、この会社すごく魅力的だなと思って。

印象的だったのは、自分がまだ内定をもらってもないのに「バンダイの中村です」といって名刺を差し出す姿が具体的に想像できたというところが大きくて。ビビッと来てたって事ですよね。

感覚的にですか?

はい。その時に、他社も含めて「どこどこの中村です」ってイメトレしていたんですけど、どこもあんまりしっくりきてなくて。バンダイは結構しっくりきたんですよね。だから結構直感ですね。

(就職先を)直感で決められるものでしょうか?

学生さんには、業界研究や自己分析もやってほしいんですが、直感は無視しないほうがいいと思いますね。私みたいに直感で決めろとは言いませんけど(笑)。

20年以上生きてきた中で譲れないものとか好きな物とか、これからやりたい事とかって、自分の中に必ずあると思うんですよね。

“ビビッと来た”感覚って無視するべきじゃないと思っていて、ぜひ直感は無視せずに、最後は自分で決めてほしいなと思いますね。

ビビッとくる時が来ますかね。

うーん、来ないとしたら、まだその時じゃないんでしょうね。その時自分ができることを精いっぱい頑張って考え抜いた人は、タイミングは就活じゃないかもしれないけど、いずれ来ますよ、焦らないでねと思います。

自分の物差しをつくってほしい

いま、情報があふれかえっているじゃないですか。情報収集や活用でアドバイス頂けますか?

情報があふれている時代だからこそ、なにを拾うか、拾った情報をどう使うかという物差しを自分の中に持つ必要があると思うんですよね。

その物差しがないとAって言われたらA、Bって言われたらB、って振り回されてしまうので。学生時代は、その物差しの基盤をつくっていく時期だと思うんです。

はい。

就職活動で業界を早めに絞る人もいますけど、是非ちょっと広めに見て、情報も広めに収集して、どうしてそのことは起きているのか、自分だったら何をするのか、そういうことを考えてもらいたいなと思います。

仕事は枝葉を覚える暗記ゲームじゃないので、自分の物差しを作って、根っこを理解して、自分の価値を出せるかが大事だと思います。

そうなんですね。

この前まで人事部で働いていたんですが、学生さんを見ていて、自分自身の根っこが理解できてる人と枝葉しか見ていない人ってわかるんですよね。

だから、学生さんに機会があれば言ってるのは、ぜひ業界研究と同じぐらい自己分析をしてください、と。

自己分析も、“自分はこれが好きなんだよね”で終わるのではなく、“何でそれが好きで、いつから好きなのか、どの部分がいいのか”っていう根っこまで考えて、自分はこういう人間なんだ、これは譲れないんだというところまで理解したうえでチャレンジしてくださいねって言っています。

質問を10も20も想定して問答集つくって(面接に)来る学生さんもいますけど、どんなにマニュアル作ったところで想定外って生まれるんですよね。

就活もそうだし、その後の仕事でも想定外のことは絶対に起きるので、その時に勝負できるのは根っこの部分を理解しているかだし、根っこに立ち返って自分はこう思うっていう軸があれば、別にどんな問題にぶつかっても平気なんですよね。

だから、自分っていう人間を理解して語れるようにしてね、みたいな話をしています。

なるほど。ほかに、普段から心掛けている事はありますか?

仕事でキャラクターのイベントに行って漫然と子どもたちを見ていると、わかったような気になって何の収穫もない時があるんですよね。

私がやっているのは「今日は髪型だけみよう」「靴だけ見よう」とかテーマを決めるんですよ。

これは新人時代の上司からのアドバイスで今でも意識しているんですが、テーマを決めて見続けると「ポニーテールの女の子がいない!みんなツインテールだ!」とか、「男の子のスニーカーは全部このブランドだ」とか、その時のトレンドが感じられるんですよ。

そういうものなんですね。

自社の製品にとどまらず、世の中のトレンドや「じゃあ何でそれなのか」という大事な部分のきっかけがつかめるんです。

周りの人を喜ばせたい

最後に、「中村さんにとって仕事とは?」を書いてもらいました。

人を喜ばせたいっていう気持ちは私にもあります。ただ、私の場合は、まず自分のまわりの人を楽しませたい、幸せにしたいと思っています。

身の回りの人の楽しい、うれしいという気持ちが派生した結果、エンドユーザーの喜びになっていくと思っているからです。

関わったすべての人に不幸な事があってほしくないな、幸せであって欲しいなと願ってるので、仕事を通して人に喜びを感じてもらえたらいいなと思っているんですね。

そういった意味では、仕事は自己実現の手段なのかなと。プライベートだと範囲が知れていますが、お仕事っていうツールがあるからそれが叶えられるのかなと思います。

情報の枝葉の部分を知って満足せずに、根っこの部分まで考えることの意味を学ぶことができました。本質を考えながら、自分なりのものさしを作って、自分の根っこを理解して、自分という人間を語れるようになりたいです!

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