目指せ!時事問題マスター

1からわかる!「首都直下地震」【中】 暮らしはどうなるの?

2019年12月06日
(聞き手:井山大我 鈴木マクシミリアン貴大 田嶋あいか)

とんでもない大災害になるおそれがある首都直下地震。地震が起きた後は何が起きるの?そして、そんな地震はいつ来るの?学生リポーターが災害報道のスペシャリスト、社会部の金森大輔デスクに聞きました。

(取材日 2019年11月25日)

帰宅困難者800万人 ハロウィーン状態

学生
田嶋

火事が最も被害が出るということなんですが、それ以外にも危険はあるんですか?ビルが倒れてくるとか…。

一番危ないのは歩道とか歩いていて、古い看板やガラスが、どんどん降ってくること。だから、揺れの直後は身を守るのが重要。

金森
デスク

建物だけでなくライフラインや鉄道も大きな被害が・・・

あと、やっぱりね(首都圏は)人が多すぎるから、帰宅困難者は800万人と想定されている。

2011年3月 東日本大震災で帰宅困難な人のために開放された東京国際フォーラム

学生

800万人!

そう、800万人。

首都直下地震では、物が落ちてきたり火事が起きたりで、みんな我先に逃げようとする。

800万人がいっぺんに「わっ」て外に出て、おしくらまんじゅうみたいになっちゃうおそれがあるんだ。

ハロウィーンを思い出してほしいんだけど。ハロウィーン行った?

ハロウィーン当日 渋谷駅前のスクランブル交差点

学生
井山

行かなかったです。

首都直下地震では、都心でハロウィーン状態のようなことが起こるおそれが指摘されているんだ。

どんな被害が出るんですか?

地震直後は、DJポリスとか、誘導してくれる人はいないよね。だから、身動きがとれなくなって、たくさんの人が圧死してしまうんじゃないかって。

群集雪崩

密集した群衆が動けなくなり、次から次へと折り重なって倒れておしつぶされて死んでしまう現象。

最大800万人の帰宅困難者が予測されている首都直下地震では、多くの人が集まる丸の内や渋谷、新宿などでの発生が危惧されている。

想像も出来ないことがいろいろな場所で起こりうるんですね。

死亡者数2万3000人は、最大ですか?

首都直下地震による直接的死者は、2万3000人と想定されているけど、このほかに「災害関連死」がある。

災害関連死?

避難生活で調子を崩して亡くなったり、けがをした人が治療を受けられず悪化して亡くなったりするケース。

でも、実は2万3000人にカウントされていないんだ。ある研究では、治療を受けられず死亡する人だけで7000人ぐらいにのぼると言われています。

避難所に入れない!?

避難者もたくさん出ますよね?

想定では、けが人が12万3000人、救助が必要な人が5万8000人、避難者が720万人。

もし首都直下地震が起きたら、東京に住んでいるみんなは、必ずどれかのカテゴリーに入ることになると思うよ。

720万人が一気に避難所に行くと、なにが起きるんですか?

食べ物の奪い合いとか…

まず、避難所には全員入れません。

720万人は地震から2週間後の推定なんだ。

地震翌日は300万人とされている。このうち避難所に入れるのは180万人。

2016年4月 熊本地震 混雑する避難所

残りの120万人は、公園でのテント生活、もしくは郊外の知り合いの家への疎開、壊れた自宅に住むなどを強いられる。

避難所からあふれちゃう人たちは、テントもないと、冬場だったらやはり過酷になるよね。

厳しい状況ですね。

そうだよね、仮設住宅を建てようにも、用地がないから。

仮設住宅不足

国の被害想定では最悪の場合、都内で約57万戸の仮設住宅が必要になるとされている。

しかし▽プレハブの仮設住宅を建てる土地が限られていること▽みなしの仮設住宅として提供できる、賃貸住宅の家賃に上限があることなどから十分な数が確保できず、都内で約18万戸の仮設住宅が不足すると専門家が指摘。

そういう状況になる人が何万人もいるんですね?

そうだね。
最近、タワーマンションが増えているけど、一部損壊くらいなら在宅での避難が勧められています。

この前の台風19号では、タワーマンション、浸水で大変でしたよね。

タワーマンションはスプリンクラーが整備されているから防災の拠点みたいなっている。

だから、ひどいことにはなりづらいけど、やっぱり電気が通らなくなると、給水が大変。

ようやく水をくんだとしても、それを持ってまた何十階か上がるのがしんどくなる。ただ、優先してエレベーターを回復するように、管理側も考えているけどね。

タワーマンションに住む人たちができる備えはなにがあるのでしょうか。

備蓄は絶対した方がいい。あとは「この階段を上がるのか」とか、想像をしておくことも大事。

パンをめぐって

ほかにどんなトラブルが考えられますか?

都心に近づけば近づくほど、帰宅困難者が水や食料を求めて避難所に殺到するよね。そうすると、そこで奪い合いやいがみ合いになるケースもあるかもしれない。

僕は伊豆大島の出身で昔、伊豆大島で噴火が起きた時、住民みんなで東京に避難したことがあったのね。もともとコミュニティーがある島だけど、東京に避難して仲がどんどん悪くなっていったんだ。

「あいつだけがたくさん食べてる」とか。もともと仲が良かった住民同士ですらそうだから、知らない人同士が避難所で暮らすと…。

パンも1人1個って言われてるのに、2つ持っていく人がいたらそこでイラっとなって、いざこざが起こるケースがあるかもしれない。

伊豆大島出身の金森デスク。こどものころ、避難所暮らしを経験していました。

経済被害は国家予算

会社やお店はどうなるんでしょうか?

物流とか何もかも停止します。
補給もないのでとりあえず3日分の水と食料を用意した方がいいと言われてるけど、本音では1週間分必要だと思う。

1週間たつとどうなるんですか?

ある程度食料とかが入ってくるようになる。

首都直下地震が起きると日本中のペットボトルが東京に集まってなくなると言われてるよ。

首都直下地震という名前ですが、影響は全国に広がりますね。

経済的な被害は95兆円と言われている。国家予算およそ1年分だよね。

国家予算!

被害金額が大きすぎてピンと来ませんけど、どんな被害なんですか?

1つは、建物や道路などの直接的な被害が40兆円くらい。

残りは、東京にある大手企業の中枢機能が失われて生産や物流が止まることなどによる被害だね。

さらに、土木学会という学会が作った想定では、地震から20年間の経済的な被害は730兆円にのぼるとされている。

道路や港湾のダメージによる物流の停止、工場の生産機能などがストップしたことを考慮したものだ。株価の暴落や、日本が国際的な競争力を失うことも考えると被害額はさらに上がっていく。

東日本大震災の5倍

とんでもない被害額になるんですね。復興するにあたって一番の課題となるのは何ですか?

復興のために費用がかかるのが、がれき。東日本大震災の時に出たがれきの、5倍って言われてるんだ。

61万棟壊れるだけでも、相当ながれきなので、それをずっと放置されていると復興できない。交通も遮断されたままだし。

相当ですね・・・

がれきの処理というのは大きな問題なんだ。

東京湾に捨てる訳にもいかないんだけど、具体的なことはまだ決めてないんだよね。

2016年4月 熊本地震 避難テントそばにある災害ゴミの仮置き場

一番最悪なシナリオが起きてしまったら、言い方悪いかもしれないけれど、日本が機能しなくなる?

完全に国難級だね。

日本が、完全に世界的にも没落していくし、東京に首都があるのはおかしいとなるかもね。

復興の専門家の中には「地獄絵図になる」と言う人もいる。

東京は、火災が多発すると想定されている

30年70%の根拠は?

「いつ」起こるかは分かるんですか?

えーっとね、これはね、今後30年間に70%の確率で「首都直下地震」が起きるっていう予測。

だけどね、ピンポイントの「予知」は絶対不可能、いまの科学ではね。

難しいんですね。

そのうち何度も何度も地震が繰り返されて、データを集計していけば、できるようになるかもしれないけど。

我々がもう生きてる時代じゃないかもしれない。

そこで重要なのが過去の地震の分析なんだ。

過去に起きた関東の地震

1923年に起きた「関東大震災」を引き起こした「大正関東地震」はM7.9。

関東での同規模の地震は、1703年に起きた「元禄関東地震」でM8.2。

いずれの地震もプレートの境目、関東南部の沖合の「相模トラフ」で発生。

関東の下に何があるかというと、フィリピン海プレートが南から北へと潜り込んでいるんだ。

しかも太平洋プレートが、東日本大震災を起こしたプレートなんだけど、それも沈み込んでいる。

なるほど。

ふたつのプレートが陸側のプレートに沈み込んでちょうど関東でぶつかってるような状況になっているんだ。

関東の地下はプレートにひずみが溜まりすぎて、世界的に見ても一番危ないところと言われている。

関東大震災クラスの巨大地震(M8前後)は、ひずみがたまっていって弾けるまでには、大体200年から250年かかる。

30年で70%の根拠

2014年、政府の地震調査委員会が過去に発生した8つの大地震を根拠に示した数字。

8つの地震は、1703年の「元禄関東地震」(M8.2)と1923年の「大正関東地震」(M7.9)の間に発生したひとまわり規模が小さいマグニチュード7クラスの大地震。

いずれも「相模トラフ」ではなく、今回想定されている首都直下地震と同じように、人が多く住む地域の直下で発生し大きな被害をもたらした。

大正関東地震の220年前にも元禄の関東地震が起きている。大体250年周期で巨大地震が起きているけど、その間に必ずマグニチュード7くらいの地震がポツポツポツポツと起きるんだ。

つまり、大正関東地震後に起きる直下地震で、いろいろな計算をした結果、最悪のケースとしてM7.3の地震が東京都心南部で起きる可能性があるということなんだ。

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