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1からわかる!「首都直下地震」【上】全ての就活生に関係あるってどういうこと?

2019年12月03日 (聞き手:井山大我 鈴木マクシミリアン貴大 田嶋あいか)

就活生向けニュースサイトで「首都直下地震」。関係ない・・・、いや関係するんです。大災害は、あらゆる業種の企業活動に影響しますし、誰もが被災者になりえます。これから社会に出る就活生だからこそ知っておきたい「首都直下地震」。1からわかる初級編です。(取材日 2019年11月25日)

教えてくれるのは社会部・災害担当の金森大輔デスク。災害現場での取材経験が豊富で、地震のメカニズムにも精通。災害報道のスペシャリストです。

 

「1からわかる!首都直下地震」【中】 こちらからご覧ください。

 

学生

よろしくお願いします!
就活と首都直下地震は関係があるんですか?

すごくあるよ。

これから君たちが社会に出て、どんな仕事に就いていても、もし首都直下地震が起きたら、必ず何らかの形で関わることになると思う。

金森
デスク

東京周辺に住んでいたら、被災者になるかもしれないし、勤務先も被害を受けるかもしれない。

東京以外に暮らしていても、首都東京の経済活動が打撃を受ければ、地方の企業でも、あらゆる業種が影響を受けることになる。

そんな時代に、自分たちがどう社会に貢献できるのかは君たちが直面する課題なので、ぜひ考えて欲しいと思います。

首都直下地震
政府の地震調査委員会が今後30年以内に70%の確率で首都圏で甚大な被害が出るおそれがあると予測しているマグニチュード(以下M)7程度の大地震。

この地震について専門家などで作る国の検討会は、平成25年に最大クラスの地震による被害想定と今後の対策の方向性を公表。

どこで起こるの?

学生
鈴木

なるほど。誰もが影響を受けると。

で、具体的にはどこで起こるか、分かっているんですか?

2011年の東日本大震災を受けて、(国が)「関東で起こる地震の最悪の想定を作りましょう」と話し合ったんだ。どこでどんな地震が起きるか、場所を特定する作業が進められたんだよね。

国の検討会が策定したマグニチュード7クラスの地震を想定したモデルは、実は19パターンあります。

出典:内閣府「首都直下地震の被害想定 対策のポイント」より

19パターン・・・関東で発生が想定されるM7級の地震

都心のほか、千葉市やさいたま市、横浜市、川崎市、羽田空港、成田空港などが発生場所として想定されている。

19全ての地震について検討したんだけど、最終的に被害想定が出されているのは、都心南部直下地震(注:図左上の赤枠内)。

この地震のマグニチュードは7.3と想定されている。

すごく心配なのですが、M7.3だと、どれくらい揺れるんですか?

震源が直下にあると、マグニチュードと震度は大体一致すると言われている。
地上の震度は7か6強くらいになるとされている。

都心南部直下地震 想定震度(出典:中央防災会議)

図で言うとね、オレンジが震度6強。

東京はまだ、震度6強以上の地震を経験したことがないんだよね。

想定震度

震度7  東京都江戸川区 江東区
震度6強 東京 千葉 埼玉 神奈川の4都県

実は、関東の地下はプレートにひずみが溜まりすぎて、世界的に見ても一番危ないところと言われている。

えぇ!

歴史的にみると、東京に人がたくさん住むようになってからそんなに古くないんだ。

秀吉の影響で増え始めたんだよね。

秀吉!?

豊臣秀吉が徳川家康を江戸に追いやったからなんだよ(笑) それからいままで、まだ400年ほどしか経っていない。

徳川家康と江戸(東京)

1590年、当時政治の実権を握っていた豊臣秀吉が、徳川家康に関東地方へ本拠地を移すことを命じたとされる。その後、徳川家康は現在の東京都に江戸幕府を開くことになる。

歴史が極めて浅いので、正直、(多くの人が密集する東京で)地震の影響で何が起こるかわからないんだ。

「冬の夕方」が最も危険!?

学生
井山

東京で6強が起きたら何が起きるかって全然イメージできないんですけど、どういう被害が想定されてるんですか?

被害想定ね、すごい数字がいっぱいあるんだけど、最悪のシナリオでは、死亡する人がおよそ2万3000人って言われてる。

学生
田嶋

そんなに・・・。

けが人が12万3000人救助が必要な人が5万8000人避難している人は最大で720万

だから、首都直下が起きたら、必ずどれかのカテゴリーの被災者に君たちも、俺らもなる可能性が高い

ただ最悪のシナリオには、ある設定がされているんだ。ちょうど今の時期。冬で乾燥していて、夕方で、火をたくさん使うっていう条件のもとで計算してる。

冬ですか?

冬の夕方…、そうそう。冬の夕方の設定で風が強いっていう。冬場って風が強い日があるでしょ。西風が吹くんだけど、西高東低っていうね。そういう日の夕方に火を使っている時に起きると、およそ2万人が死ぬと想定されている。

なぜ細かく条件を設定しているんですか?

東日本大震災の反省は、最悪の事態を想定して対策していなかったことなんだ。想定外を2度と起こしてはいけないということで、最大限の被害を見積もっている。

この条件だと、火事がたくさん起きることを想定しているんでしょうか?

そのとおりで、2万3000人のうち、7割の1万6000人は火事で死亡する想定だ。

建物の被害は倒壊と火災による焼失があわせて61万棟このうち41万棟が火事による焼失なんだ。

えー。

この図を見てほしいんだけど、赤いエリアが、住宅が多くて火事で焼けてしまうところ。木密(もくみつ)地域って言って、木造住宅が密集している地域なんだ。

焼失棟数(都心南部直下地震 冬 夕方 風速 8m/sの想定)(出典:中央防災会議)

僕の家が含まれてますね・・・。

実は俺の家も含まれているんだよね。

世田谷区とか杉並区、中野区とか練馬区とか豊島区もそうだけど、あと葛飾区とか江戸川区とかね。そこら辺の木密地域というのは、家と家の間が狭い場所が多くて消防車が通れない。

都内の木造住宅密集地域

それ結構深刻ですよね。

深刻だよ。さらにね、首都直下地震の時は出火件数が2000件の想定
1日2000件火事が起きることなんて通常はありえないでしょ。

で、東京で考えると1000件の火事に対し、消防のポンプ車が700台しかない、これだと火は消せないよね。

はい。

1件の火災を何台かで消さなきゃいけないので、対応するというのはほとんど不可能。シミュレーションでも出てるけど、1か所が燃えると、もうどんどんどんどん延焼していっちゃうので、火が回っちゃう。

さらに、逃げようとしたり自宅に帰ろうとしたりする人たちで交通渋滞を起こして、消防車が来ない間に、どんどん延焼してしまう。

延焼のイメージ

深刻な火災の被害が想定されている木密地域では、四方を火災で取り囲まれ、避難が遅れると危険な状況に。高温の炎や煙が竜巻のように渦を巻く「火災旋風」が発生し、被害を拡大させるおそれも指摘されている。

火災旋風のイメージ

どこに逃げればいいの?

外出中に被災したら、家に帰りたくなってしまいますよね。

(家の近くで火事があったとしても)途中までは、家の方向が危険だって分からないでしょ。でも、家の方からは「火事だ!」って言ってこっちに逃げてくる人がいるわけで。

それが衝突し合って「群集雪崩」って言うんだけど、ぶつかり合ってギュウギュウになって、圧死するっていう人も出てくるっていう。だから留まらなきゃいけないんだよね。

そうなんですね。

生きてさえいれば家族に会えると思って、危険な場所に行かないっていうのが一番重要ではあるかな。

道とかも封鎖される?

道はね、災害時優先道路っていうのはあるんだけど、大きな道路には。道路の看板に出てるんだけどね、ここは災害時には優先道路になりますって。

家の近くで見たことあります。

あるでしょ。問題は、それに従うかどうか。気持ちの問題だから。誰かが封鎖して「入らないで下さい」とやるわけじゃないから。

あんまり有効じゃない?

火が、どんどん延焼する理由の1つとしては、道が渋滞して消防がたどりつけないということがあるんだけど、それを解消するために災害時優先道路を作るんだよね。

でも、通行規制をうまくできるわけじゃないから。車を使って逃げようとすると、ほとんど動かなくなる。

東日本大震災当日夜の仙台市内 上空から

そういうことを想定するとやっぱり、3日から1週間は、安全な場所に残った方がいいって言われているんだよね。まあ少なくとも3日間、火が消えるまでの間は。

3日間、ビルの中とか…。

そうだね、ビルの中とか…。ただあふれるよね。だから大学にいるなら、大学にいた方がいいだろうし。

津波の心配は?

津波の心配は?

想定では、都心南部の直下地震の場合は津波はあまり起きないんじゃないかと考えられている。

ただ、過去には東京湾でも数メートルの津波が発生していたことがあるんだ。

どのあたりまでくるんですか。

えっとね、高さ3mぐらいだと護岸で高潮の警戒もしているので、ある程度は大丈夫なんだけど、怖いのは江戸川とか荒川があるところ。

地震で堤防が壊れちゃったりしてたら、決壊する。複合災害というんだけど、そういうのも起こりうるっていう事は一応想定はしている。

首都直下地震では、インフラやライフラインにも大きな被害が出ることが想定されている。国の機関や多くの企業が集まる東京で、都市機能が麻痺するおそれがある。

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