目指せ!時事問題マスター

1からわかる!「北朝鮮とミサイル」【下】

2019年10月11日 (聞き手:工藤菜摘 鈴木マクシミリアン貴大 西澤沙奈 )

発射が続く北朝鮮のミサイル。ミサイルを止めるには何が必要か、朝鮮半島が専門の「国際報道2019」(月~金 22:00~ BS1)の池畑修平キャスターに聞きました。

学生
工藤

ここまでミサイルを発射する理由や背景にある南北の歴史について伺ってきました。

どうしたら北朝鮮は核・ミサイル開発をやめてくれるのでしょうか?

これがポイントだと思います。

池畑
キャスター

「保証」は北朝鮮の体制の保証。

もうひとつの「検証」。北朝鮮が本当に核を廃棄したか、徹底的な外部の検証が必要だということです。

学生
西澤

ポイントは2つあるんですね。最初の「保証」ですが、なかなか難しいと思うんですが・・・

北朝鮮がこれまで一貫して主張しているのは「自分たちは世界一の軍事大国アメリカから敵視されている」。

その中で自分たちの体制を守るためには核兵器は欠かせないということ。

でも、これ、裏を返せば「体制を保証してくれれば核兵器を持つ理由は無くなる」ということなんです。

たしかに。

実際、キム委員長もそのようなことを公の場で言っているんです。

体制の保証だけでは・・・

体制が保証されればミサイルも発射しないんですか?

ミサイルに関しては、防衛のための軍事力として必要だから、一発残らず全て廃棄することは難しいと思う。

ただ、核兵器に関しては国の防衛という目的を超える兵器だから、廃棄させることはできるんじゃないかと。

でも、北朝鮮が核を廃棄するという約束を本当に守るかどうかは疑わしいよね。

学生
鈴木

そのために「検証」が必要と。

過去に、原子力の国際機関が北朝鮮の核施設を査察したことがあったんだけど・・・

申告している核活動と実態が違うことがバレたことがあった。

査察を行ったIAEA=国際原子力機関

なぜバレたんですか?

国際機関の査察官が核施設の壁のほこりや、施設周辺の水や土を採取して分析したんです。

すると、申告している内容より明らかに放射性物質が多く見つかったんです。

そんな細かいところから分かるんですね。

北朝鮮は当時、そのことを理解しておらず、ウソをついてもバレないと思っていた。

だからその後、査察官を追放。それ以来、国際機関による検証を嫌がっているんです。

「保証」と「検証」はどちらが先ですか?

「保証」が先でもいいんじゃないかと思う。

アメリカ政府の中では「北朝鮮がどうしても朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に変えて正式に終戦したいと言うなら、そうすればよい」という議論が結構あります。

なぜですか?

実態は変わらないから。1953年に休戦状態になって半世紀以上、ずっと今のような状態が続いている。

つまり正式に終戦しても現状は何も変わらないんです。だから、先に体制を保証してあげて、その代わり核兵器を捨てて外部の検証を受けなさいと交渉するという考え。

ではいつぐらいに交渉がまとまりそうですか?

時間はかかるかもしれない。その理由は北朝鮮の交渉の「サラミ戦術」にあります。

サラミって、おつまみの?

そうそう。サラミって薄く切られていますよね。それと一緒で、北朝鮮が初めから切られていないサラミを一本丸ごと差し出す、つまり「核兵器をすべて捨てます」と言ってくれればいいんだけど・・・。

彼らはいつもサラミをとても薄く切って、「これを出します、これを出します。その代わりにこれをください」という駆け引きをしてくる。これが「サラミ戦術」。

それは時間がかかりそうですね。

そうですね、北朝鮮が「サラミ戦術」をやっている間は時間がかかりますね。

解決に向けて日米韓は?

トランプ大統領とキム委員長の今後の会談の注目点はどこですか?

北朝鮮がどんな提案を出してくるかです。今まで北朝鮮が出してきたサラミみたいな提案は「これ以上核兵器はつくらない」というものばかりでした。

例えば、「ニョンビョンという場所にある核施設を潰します」というのも、新たに核兵器をつくらないという意味があります。

ただし、これまで「開発済みの核兵器を捨てます」という提案は一つもない。こうした提案が今後の会談で出されれば、体制保証と取り引きが成り立つ可能性があります

北朝鮮の核施設

次の米朝首脳会談はいつぐらいにありそうですか?

北朝鮮は年内の会談にこだわっています。

なぜですか?

理由は2つ。1つ目は来年が北朝鮮の経済再建5か年計画の最終年だからです。それまでに会談して、経済制裁が一部でも解除されれば、もっと物が入ってくるので豊かになります。それを国民にアピールしたいんです。

2つ目は来年秋のアメリカ大統領選です。

アメリカの大統領選が、北朝鮮にどう関係しているんですか?

トランプ大統領は来年11月の大統領選に立候補を表明している

北朝鮮にとって、トランプ大統領はこれまでの常識では考えられないくらい交渉しやすいアメリカ大統領です。

でも、来年秋の大統領選で負ければ、新たな大統領との関係を一からやり直さなければなりません。だから大統領選の時期を逆算して、トランプ大統領と交渉をまとめたいと考えているんです。

そして、大統領選の前という時期は、北朝鮮にとって有利に働く可能性があります。

どういうことですか?

トランプ大統領は自分が再選するためなら何でもやります。

「核兵器をこれ以上つくらない」という約束だけで満足して、「すでにつくった核兵器はそのままでいい」という中途半端な合意をしてしまうかもしれない。

それは困りますね。

日本政府はこれを心配しています。このような合意だと、日本に飛んでくるミサイルやそれに搭載する核弾頭も残ったままなので。

では、日本は今後北朝鮮にどう対応していくのでしょうか?

日本と北朝鮮の間には核・ミサイル問題もありますが、もう1つ重要な問題があるよね。

拉致問題ですね。

そう。安倍政権はこれまで「拉致問題が解決するまでは絶対北朝鮮と交渉しない」と言ってきました。

でも、トランプ大統領がキム委員長と首脳会談をしたことをきっかけに、「前提条件なしでキム委員長と会う」という姿勢に転換した。

アメリカしだいで変わってしまうんですね。実際に会談は実現するのでしょうか?

短期的には難しいと思います。最近、北朝鮮は「拉致問題は解決済みだ」とまた言い出している。

北朝鮮としては日本と対話するモチベーションが上がっていないんです。

なぜですか?

日本が北朝鮮に、貿易を禁止するなど独自の制裁を課しているからです。まずは制裁を解除してくれないことには対話ができないと。

時間がかかりそうですね。

ただ、日朝首脳会談が電撃的にあれば、何かが動くはず。首脳会談は、開催に向けて双方の外務省などが一生懸命準備するので「首脳会談の失敗はない」という言葉さえあります。

トップが会う以上は互いに成果を出そうと頑張る。そういう意味で、日朝首脳会談が行われれば、何かしら前進はあるはず。

本当に北朝鮮は成果を出そうと頑張るんですか?

北朝鮮という国は「トップが来てくれれば悪いようにはしません。面目は潰しません」と必ず言うんだよね。

2002年、当時の小泉首相がキム・ジョンイル総書記と会談したことで、北朝鮮はそれまでずっと否定してきた拉致を認め、一部の被害者の帰国につながりました。

2002年、日朝首脳会談でキム・ジョンイル総書記が初めて拉致を認め、5人の拉致被害者が帰国した

アメリカと北朝鮮の交渉がうまくいけば、日本との交渉も進展するのでしょうか?

北朝鮮が日本を焦らせるためによく言うのが「日本もぼやぼやしているとバスに乗り遅れますよ」ということ。

どういうことですか?

米朝首脳会談が何度も行われ、韓国も北朝鮮に融和的な今、「タイミングを逃すと日本は北朝鮮との交渉が不利になりますよ」ということ。

実際、不利になるんですか?

日本として切れるカードは、制裁の解除や経済援助など経済的なカードしかないわけです。歴代の日本政府は、国交正常化すれば、戦後処理として北朝鮮に莫大なお金をあげると言っている。

だけど、例えば、先にアメリカと国交を樹立し、韓国からの経済支援が拡大すれば、アメリカや韓国の企業が北朝鮮に入り、豊かになるよね。

そうすれば、日本の持つ経済的なカードの魅力がどんどん薄まり、北朝鮮に足元をみられちゃうというわけです。

ではどうすればいいんですか?

日本が先に動く必要があると思います。当時の小泉首相も拉致問題がいつまでたっても解決しないということで先に動いて、一部の拉致被害者が帰ってきた。

日本が主導権を持って交渉にあたることが重要だと思います。

核・ミサイル問題の解決に向けて、韓国はどうなんですか?

韓国は、日本やアメリカと足並みをそろえて北朝鮮に対応することが大切です。

いま日韓関係が悪化していますが・・・。

日韓関係悪化の一因に、実は北朝鮮も関わっています。

どういうことですか?

GSOMIAという日本と韓国の間で軍事情報を直接、交換するための協定を韓国が破棄しました。

韓国としては、南北は融和状態で、米朝も対話が続いているので、「軍事的緊張は和らいでいる」と考え、協定を破棄しやすかったんです。

一方、日本は北朝鮮の脅威は変わっておらず、日米韓の軍事的な連携は必要だという考え。北朝鮮をどう見るかについて日韓にずれがあったというわけです。

2019年8月、韓国政府は、日韓の軍事情報包括保護協定=「GSOMIA」の破棄決定を発表した

日韓関係の悪化は北朝鮮問題の解決にどんな影響を与えますか?

北朝鮮としては、日米韓3か国の仲が悪くなっているのは、してやったりという状況です。

なぜなら3か国の言うことがバラバラになると、個別に交渉しやすくなるからです。

北朝鮮だけみると、日本と韓国はもめている場合ではないと。

昔、韓国にムン大統領と同じような革新系のキム・デジュン(金大中)大統領がいました。

彼が打ち出した北朝鮮政策は「太陽政策」と言われました。どういうことかというと、イソップ童話の「北風と太陽」って知ってる?

キム・デジュン元大統領

旅人のコートをどちらが脱がせられるか、北風と太陽が勝負する話ですよね。

そう。北朝鮮に軍事的圧力や経済制裁をかけるのが「北風政策」だとすると、北朝鮮を支援したり体制を保証したりするのが「太陽政策」。

キム・デジュン大統領はこの「太陽政策」をとったわけ。

その時はどうなったんですか?

たしかに南北関係は良くなり、緊張は緩和されました。ただ、核開発は止まらなかったんです。

北朝鮮の姿勢に応じて、関係国が一致して「北風」と「太陽」を使い分ける必要があるんです

2000年、キム・デジュン大統領とキム・ジョンイル総書記はピョンヤンで初の南北首脳会談を行った

今みたいに、韓国は北朝鮮に対して「太陽」だけど、日本は「北風」というようにバラバラなことをやっていると北朝鮮には効かない。

そういう意味で日米韓が違うメッセージを発信するのはよくない。

日韓関係が悪化する中、北朝鮮問題はゆっくり解決していくしかないのでしょうか?

うーん。今まで時間をかけてきたからこそ、その間、北朝鮮はどんどん核開発を進めてきたという側面もあるから、あまり時間をかけすぎてもよくない。

かつて、北朝鮮の核問題を解決するために、日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、それに北朝鮮の6か国で話し合う「6か国協議」があった。

一時は北朝鮮が核を放棄し、アメリカが体制を保証するというところに近い合意がされたんだけど、協議に時間がかかりすぎた結果、北朝鮮は裏で核開発をして約束を破ったという経緯があります。

解決するためにはある程度のスピードをもって協議することが重要です。

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