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1からわかる!トランプ再選は?(1)“再選確率60%!?”

2020年01月28日
(聞き手:伊藤七海 鈴木マクシミリアン貴大)

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トランプ政権がさらにあと4年続くのか、それとも別の人が大統領になるのか。11月に迫るアメリカの大統領選挙は日本の行く末にも大きな影響を与えます。トランプ大統領は再選されるの…?そもそも大統領選挙って…?ギモンを1から取材しました。

2017年に大統領になり、現在1期目のトランプ大統領。アメリカの大統領の任期は4年で2期まで。再選されれば8年、大統領を務めることに。トランプさんと大統領の座を争う民主党の候補者は7月に決まる。

学生
鈴木

さっそく、今回のテーマ、トランプ大統領の再選は、ズバリあるのでしょうか?

そうだね・・・

髙橋
解説委員

解説はワシントン特派員などを歴任したアメリカ担当の髙橋祐介解説委員。学生時代から今まで、アメリカの動きをつぶさに追ってきた“アメリカウオッチャー”です。

私、個人的には60%ぐらいの確率で再選されるのではないかと思っています。

“60%の確率でトランプ再選”なぜ?

学生
伊藤

トランプ大統領が再選される確率のほうが高いということなんですね。

そう。でもここの(?)が大事。結局のところまだわからない部分が多いんです。

ただ、アメリカの大統領選挙にはそもそも現職有利の法則があってね。あ、勝手に法則と言っているだけなんだけど。

そうなんですか(笑)

現職は日々の活動や政策がそのまま選挙運動にもなるから選挙戦の主導権を握りやすいよね。

大統領が何か発言したり、トランプさんだったらツイッターで発信したりするとすぐに注目が集まるじゃない。

そうですね。よくニュースになっているのを見ます。

トランプ大統領のツイッター

一方で、現職に挑戦するチャレンジャーのほうは選挙資金を集めて、テレビ広告をやったりして知名度を上げないといけない。

トランプさんへの挑戦権を得るためには民主党の候補者選びで勝たないといけないしね。

そうですよね。

だから現職は圧倒的に有利。

戦後の大統領はトランプさんの前に12人いるけど、このうち再選を目指して果たせなかったのは3人しかいないんですよ。

3人…少ないですね。

ジェラルド・フォード、ジミー・カーター、ジョージ・H・W・ブッシュ、パパブッシュね。

この3人がなぜ再選を果たせなかったのかというと、大きな原因は2つだと言われている。ひとつは党内に造反があったこと。

造反?

1期目で失政や何かスキャンダルがあったりして党内で「この人がもう1回やるのは嫌だな」ということになると造反が起きる。

現職の再選を阻止する動きが党内から出るということね。フォードさんやカーターさんはこれで再選を果たせなかった。

もうひとつは?

再選を阻む原因、2つ目は景気の悪化。これはパパブッシュさんがそうだったんです。

パパブッシュはね、冷戦の終結を宣言した大統領なんですよ。で、そのあと湾岸戦争にも勝利して、支持率は一時89%までいった。

89%!!

そう。それなのになぜ再選されなかったのか。このときはビル・クリントンさんに負けたの。

クリントンさん、知っています。

クリントンは、当時アーカンソー州の知事で全く無名だったんだけど、政治的な嗅覚が鋭い人で。

「冷戦終結!」「湾岸戦争勝利!」と実績ばかりを強調していたブッシュさんに向かって、「It’s the economy!(問題は経済だ)」と言い放って、この一言で形勢がガラッと変わったんです。

当時景気が悪化していたのでそこを突いた。それでクリントンが地滑り的な勝利を収めた。

へえ~。

ただね、逆に言えるのは党内の造反、景気の悪化というこの2つの要素さえなければ、基本的には大統領は再選される。

一度大統領に選んだ人は2期8年やらせましょうというのが普通なんだよね。

再選を阻む2つの要素、トランプさんはどうなんですか?

まず、党内の造反はありそうで・・・、実はないんだよね。

へえ、そうなんですか。

トランプさんは共和党にとって今までの共和党員だけではなく、新しいお客さんをつれてきてくれた得難い援軍なんです。

新しいお客さんというのは?

例えば中西部などの一帯に「ラストベルト」と呼ばれる地域があるんだけど。

「ラストベルト」ですか、初めて聞きました。

ラストは「rust」=「金属のさび」。使われなくなった工場や機械、つまり「さびついた工業地帯」。

かつては鉄鋼や石炭、自動車などの製造業がさかんだったけど衰退してしまった地域のことだね。

そこの白人労働者たちは大きな不満を抱えていた。でも政治には無関心だったし、忘れ去られていた人たちだったんだよ。

トランプさんって、マーケティングの才覚があるんだよね。「ここに不満を抱えている人たちがいる」とその存在に気づいた。

へえ~。

前回の大統領選の相手だった民主党のヒラリー・クリントンさんは、ここに不満の層があって潜在的なお客さんがいるということに気づかず、ちゃんとまわっていなかったんだよ。

でもトランプさんは愚直にここをまわって不満を抱える人たちを上手く惹きつけた。

大統領選挙の時って、議会の選挙も同時に行われるんだけど、投票用紙は一緒だから、大統領はこの人、上院議員はこの人と一緒に投票するんだ。

前回の選挙は「トランプ」という金看板があったから議会の選挙でも共和党が勝ったんです。

共和党にとって新しいお客さんをつれてきたというのはそういうことなんですね。

そうそう、共和党の議員にとってトランプさんは良い看板なんだよね。小さな町でも何万人という人を集める動員力があるし。

何がそんなに惹きつけるんですかね?

彼の才覚というのもあるんだと思う。

彼は民衆がどういう息づかいをしているか、どういう言葉に反応するか感覚としてわかってしまう。そういう力にたけているんだと思います。

トランプ大統領って好かれているの?嫌われているの?

トランプさんって、結局アメリカで好かれているのか嫌われているのかよくわからないんですけど、支持率ってどうなっているんですか?

トランプさんの支持率は、大統領に就任してからずっと、35%から45%ぐらいの狭い範囲で推移しています。

これを私は勝手にバケツの水にたとえているんですけど、水は絶対バケツからあふれない。支持率45%に壁があって、ここは超えられないの。

なぜかというと、トランプさんを嫌いな人は本当に嫌いだからなかなか支持が広がっていかないからなんだ。

嫌いな人もかなりいると。

でも逆に、水が減ることも絶対ないの。バケツの底は絶対に抜けない。

なぜバケツの底がしっかりしているのか、それは岩盤支持層があるから。だから35%は下回らない。これがね、彼の大きな強みなんだよ。

岩盤支持層…さっきの「ラストベルト」の人たちのような支持者のことですか?

そう。こういう人たちって極端な話、トランプさんがたとえ間違ったことをしたとしても絶対揺るがない。

どんなに失言をしても「トランプは正直な男だ」と。そういう人たちがこの帽子をかぶっている。

髙橋さんがアメリカで購入したトランプ支持者の帽子。
前回4年前の大統領選のキャッチコピーは「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(アメリカを再び偉大に)」。今回は「KEEP AMERICA GREAT(アメリカをこのまま偉大に)」。

トランプさんって過激なことを言っては炎上というか、物議をかもしてメディアに批判されて、みたいな場面が多い気がするのですが、それでも支持は揺るがないんですか?

アメリカのメディアってね、リベラル、民主党寄りの考え方のところが多くて、トランプ政権はダメだとか再選危うしみたいなことをどんどん書く。

トランプたたきは視聴率がとれるし、新聞も売れるからね。逆にトランプさんのことを良く言うのは、共和党寄りの保守系のテレビ局、FOXテレビぐらいなんだよ。

そうなんですか。

メディアによってトランプさんの取り上げ方は大きく違う。で、トランプさんの岩盤支持層の人たちは極端な話、FOXテレビしか見ない。

だからトランプさんがリベラルなメディアにいくらたたかれてもあまり影響はないんだよね。

世論調査でトランプさんを支持しますか、支持しませんかって聞くじゃない?

はい。

でも選挙はさ、支持するかしないかじゃなくて、投票に行ってくれないと話にならないんだよ。

アメリカの大統領選挙って、日本みたいに「選挙権が与えられる年齢になったら自動的に投票できる」ものではないから。

どういうことですか?

投票するためには事前に有権者登録という手続きをする必要があるの。

え?そうなんですか?

だからそういう面倒な手続きをしても絶対投票に行く、という支持者をいかに集めることができるかが勝負の鍵なんだよ。

選挙に行かないかも・・・みたいな人たちには嫌われても怖くはないということですか?

そうそう。世論調査で「嫌い」という人が多くても痛くもかゆくもない。答えた人が全員投票に行くわけではないからね。

トランプさんの岩盤支持層というのは、雨が降っても槍が降っても絶対投票に行きますという人たち。だから強いんです。

それからさっき言った再選を阻む2つの要素のもうひとつは経済、景気の悪化だったよね。

景気はどうなんですか?

アメリカの経済は絶好調。雇用情勢も良くて、失業率は過去50年で最低水準なの。

この経済状況が続いて、なおかつ岩盤支持層があって、党内の造反も抑えられている。

だからトランプさんは再選される可能性が高いのではないかと。ただ、まあ相手が誰になるかにもよるけどね。

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