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1からわかる!中国「一帯一路」(下)構想が変容!?米中対立の根源に?

2019年11月01日 (聞き手:伊藤七海 井山大我)

中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」。実は、今の米中貿易摩擦の根源となったとも指摘されています。中国駐在11年の加藤青延 専門解説委員に詳しく聞きます。

加藤専門解説委員

世界に浸透する3つの“中国”

中国とアメリカは貿易問題で衝突していますが、一帯一路も関係しているのでしょうか。

深く関係しています。一帯一路で中国が影響力を増していることに、アメリカが危機感を持っていることが背景にありますね。

具体的にどういったことで、影響力を増しているのでしょうか?

1つは、経済力だよね。一帯一路構想で海外への投資を増やして、いわゆるチャイナマネーが世界を席巻しています。

そして、14億人の国民も購買力がついてきて、中国自身が世界最大の経済市場となっている。

GDP=国内総生産でも、日本を抜いて世界第2位になりましたよね。

中国は世界の工場にもなっているよね。iPhoneが中国で組み立てられていることは意外と知られていない。

そうなんですね。アメリカでつくられていると思っていました。

「フリーチャイナ:中国製品なしの1年間」っていうベストセラーの本を知っていますか?

いえ、、聞いたことがありません。

もしアメリカ人が中国製品の購入をすべて拒否したら、ものすごくお金がかかってしょうがないっていう内容なんですね。それだけ中国経済は影響力があるっていうことです。

おもしろいですね、日本でも中国製の服や電子機器がたくさん使われているから、なんとなくわかります。

2つ目は、文化。ソフトパワーとかシャープパワーと言われるんだけど、中国は、「孔子学院」っていうのを世界中につくっています。

コーシガクインですか。

簡単に言うと、中国語とか中国文化を教える場所ですね。

「世界孔子学院フォーラム」(写真・共同)

【孔子学院】

中国政府が、中国語と中国文化の普及を目指し、世界の大学と共同で設置している非営利の教育機関。中国共産党の機関紙「人民日報」によると、現在154の国と地域に548校が設立され、学生数は187万人にのぼる。

そういえば日本の大学にもあると聞いたことがあります。

日本だけでなく、アメリカの大学にも設けられています。

アメリカと中国の対立が徐々に表面化した頃、この孔子学院がアメリカで問題視され、取りつぶしになるなど、ニュースにもなりましたね。

そうだったんですね。

それから、中国は世界のメディア戦略にも乗り出している。

メディア戦略ですか。

世界各地に国際放送局の拠点を設けて、現地の言語で放送を行っているんです。

現地の有名なキャスターを雇ったりして。ロンドンでキャスターを募集したら6000人集まったという話もあります。

そんなに!

中国はどうしてメディア戦略を進めているんですか?

中国に対するイメージを良くする戦略なんだ。ある意味、アメリカや欧米が作ってきた価値観をぶち壊して、中国のイメージを良くしようとしているんだ。

中国からしてみれば、欧米諸国の報道機関が全然、中国のことを良く書いてくれないという不満がある。

ならば、自分たちで発信しようということですか。

そのとおり。正しい中国の姿を自分たちで伝えようというのが、中国のメディア戦略の背景にあるわけです。

中国から見るとそう見えるというわけですね。

対立しているアメリカから見れば中国の「プロパガンダ」。つまり政治的な宣伝と映るわけですけどね。

中国経済が勢いを増しているのは、なんとなく知っていましたが、メディア戦略でもそこまでしているとは。

それだけじゃありません。3つ目は、安全保障の問題もあるんです

これは情報・通信と関係してくるんだけど、中国は、高速で大容量の次世代の通信規格「5G」を一帯一路の沿線国に広めようとしています。

中国の通信機器大手、ファーウェイに対するアメリカの規制が盛んにニュースになっていましたよね。

背景にあるのは、安全保障の問題です。中国が、新たな通信規格を普及させることに、アメリカは脅威を感じているんです。

通信システムが、なぜ安全保障上の脅威なんですか?

アメリカは、諜報活動を通じて世界中の情報を握っているとされていますよね。アメリカから見れば中国の行動は、それに対抗しているように見えるんですよ。

5Gが中国の設備になるだけで、情報が握れるんですか?

少なくとも、アメリカなど欧米諸国はそう懸念している。アメリカが通信を傍受するシステムを世界中に張り巡らせてきたように。

アメリカ自身が行ってきたことだから、何が可能になるかを知ってるってことなんだろうね。

なるほど。

米中対立へ

一帯一路を通じて、中国は何を目指しているんですか?

中国の理屈は、自分たちの仲間や価値観を共有できる人々を世界に広げていきたいということなんだよね。

目的はなんでしょうか?

中国の存在感が増す中で、何かをやろうとすれば、国際社会から注文が入る

さらに言えば、自由と民主主義を重んじる先進国からは、中国の共産党一党支配体制に対して文句を言われてしまう。

そうさせないために、経済力を通じて仲間を増やそうとしていると?

そう。それが一帯一路の狙いでもあるわけです。

なるほど。

ところが、世界を牛耳っているアメリカからすれば、「自分たちへの挑戦・中国の世界戦略」というふうに見えるわけ。

今のアメリカと中国の貿易摩擦って、単に貿易赤字が原因かと思っていましたが、それだけではないんですね。

そうなんです。アメリカの貿易赤字は今に始まったことではない。なのにトランプ大統領は、中国との対立を先鋭化させてきた。

5G技術でトップを走る中国の通信機器大手、ファーウェイにも攻勢をかけている。

中国の一帯一路構想がアメリカとの対立の遠因のように感じますね。

中国は意図していなかったけど、一帯一路の構想が、結果的には、本来、避けて通りたかったアメリカとの本格的な衝突まで招く事態になってしまったと、私は見ています。

中国としては、アメリカとの衝突を避けたかったのですか?

そうだと思います。中国は、アメリカが懸念しているように「中国人が世界中を支配してやろう」とは思っていない。

意外ですね。

中国の専門家に聞くとね、「事を急ぎすぎた」とか「もう少しスローペースでやっていけばよかった」と言うわけですよ。

一帯一路は今後、どうなっていくんでしょうか。

私は一帯一路は、貧しい国との格差を是正することができる可能性をもつツールだと思います。

だけど中国に対しては欧米諸国を中心に警戒論が根強いですね。

それでも一帯一路は進みますよね。

そう。今後も一帯一路は進むだろうし、確実に世界の構図をつくり変えていくと思う。

中国がどう変わっていくか、世界がどう対応していくか、国際ニュースを見る上で、一帯一路を知っておくことは大事だと思いますね。

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