目指せ!時事問題マスター

1からわかる!英EU離脱「ブレグジット」日本人が学ぶこと

2019年05月24日
(聞き手:高橋薫 田嶋あいか)

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ニュースでよく聞くイギリスのEU=欧州連合からの離脱問題、「ブレグジット」。

気になる日本への影響や教訓を、前ロンドン支局長の国際部デスクに詳しく聞いていきます。

国際部の松木昭博デスク
現地で実際にブレグジットを取材されていました

日本人が「ブレグジット」から学ぶこと

外国人受け入れで日本は・・・?

学生
田嶋

日本人はこのブレグジットをどう見ていけばいいんですかね?日本への影響も含めて教えてください。

イギリスには大体1000社弱の日本企業が進出していて、イギリスの工場で製品を作ってヨーロッパ側に売るというビジネスをやっている企業も多いんですよ。だって関税なしでヨーロッパの5億人の市場に売れるんですから。

松木
デスク

それがこんな先の見えない状況が続いて、イギリスとEUが今後どういう関係になるのかも一向に見えてこない。

皆さんが就職したいと思うような企業でもイギリスに進出していれば不安な状態をかなり長く抱えてしまうことになりますよね。

企業側はどう対策しているのですか?

よく各メーカーが言っていたのは、今の事業は維持するけど、新しい投資は他の所に振り向けると。

イギリスには、もう投資しないと?

そう。あと仮に「合意なき離脱」になったらマーケットは大混乱に陥るよね

実際3年前、国民投票の結果が出た瞬間は、まさかこんな結果になるとは思わなかったと、株価が急落して、円高が急激に進んだんです。

円高になると日本の輸出企業にはマイナスですし、日本にも様々な影響がありますよね。

学生
高橋

企業がイギリスから撤退を始めているとニュースで見たのですが、移民に規制をかけても、企業が撤退して、雇用が減ってしまっては意味なくありませんか?離脱強硬派の人たちはそれについてはどう考えているんですか?

短期的にはそういうことがあるかもしれないけど、EUから離脱して、EUと新しい関係を築いていけば、やがてよくなると。中長期的に見ればイギリスはもっと繁栄するはずだと考えているんです。

ここまでゴタゴタになって国が真っ二つに割れてしまうような事態って予想されていましたか?

いや、こういう展開は全く予想していませんでした。どこかで妥協点が見つかると思っていたので、議会でこんなにまとまらない状態が続くというのも想定外でした。

そうなんですね。

イギリスってもともと寛容な国でね、さっきも言ったようにロンドンはいろんな国の人を受け入れる都市であり続けてきたし、それで経済もよくなってきた。

だから国民投票になったときも、もっと冷静で実利的な判断をするだろうと思っていたんです。でもふたを開けたら全然そんなことはなかった。

イギリスの多くの人は寛容なはずなのに、こういう判断を国としてしてしまったというのは、なんていうかな、外国人を人材として受け入れることの難しさを問いかけているような気がします。

日本も外国人をもっと受け入れようとしていますよね。日本も将来イギリスのようになる可能性はあるのでしょうか?

「外国から人を受け入れる」というのはどういうことなのか、しっかり考えてやらないといけないというのはあると思います。人手不足のときに来てもらって仕事をしてもらい、景気が悪くなったら「ありがとう、じゃあ帰ってね」というわけにいくんですかとかね。

それは難しいですよね。

経済は、良くなったり悪くなったりするじゃないですか。常に人手不足だとは限らなくて、仕事が減って人が余ってしまうこともあるわけです。

そういうときに、外から来た人に目が向いて悪い感情を持ってしまうことは、どこの国でもあり得ることだと思いますね。

日本人にとっても、他人事ではないのですね?

そうですね。そう思います。

反移民でいいますと、アメリカでもトランプ政権が誕生しましたよね。こうした動きが世界中で出てきているような気がするのですが。

そうですね、そういう面はあるでしょうね。グローバル化の反動というのかね。

グローバル化によって人が自由に動くようになって、それで利益を得ている人はたくさんいるけど、そこからこぼれ落ちた、恩恵を受けられない人たちもやっぱりいるわけで。

トランプ現象に通じるところはあるかもしれないですよね。

国民投票の重みと…

あとね、日本が学ぶべき教訓としては、これだけ国民の意見が真っ二つに割れる話を、国民投票でギリギリで決めることの怖さだね。

どちらかが勝ってそれを実現しようとしても、もともとすごく割れているから、必ず半分近い人たちが不満を持つことになる。

これは、国民投票でEU離脱を決めたことをイギリスの人たちが正しいと思っているか、間違いだと思っているか、アンケートの推移をまとめたグラフなんだけど。

2016年の国民投票の後は、青の「正しかった」という人がわずかに上回っていますよね。

でもずっと接戦なんですね…。

そうそう。去年からことしにかけては、一連の混乱を見てだと思うんだけど、緑の「間違いだった」が10ポイント前後上回る状態になっているよね。

ここまで真っ二つに割れ続けていると、もう修復不可能なのかなと思うんですけど。

そうですね。議会が決められないんだったら、もう一回国民投票をやるということになるのかもしれませんけど、それで結果が覆ったとしてもやっぱり多くの人が不満を持つことになる。どっちに転んでも、しこりが残りますよね。

そうですよね…。

イギリスは、本当に修復の難しい大きな溝を、自分たちの手で作ってしまったんだなと思いますね。

編集:水谷彩乃

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