海外旅行のフロンティア!サウジアラビア観光の魅力は

    最近、何かとぶっそうな話でニュースに登場するサウジアラビア。ビザの取得が難しく、一般の観光客にとっては「閉ざされた王国」でしたが、このほど観光ビザを初めて解禁しました。でもサウジアラビアって砂漠と油田以外に何があるの?

    目次

    ※クリックすると各見出しに移動します

      観光ビザはネットで申請

      サウジアラビアの観光ビザは、9月27日から、日本を含むおよそ50の国と地域の人々を対象にオンラインでの受付が始まりました。

      これまでサウジアラビアのビザの取得には面倒な手続きがつきまといました。現地の取引先などが「招待者」としてビザを申請するという独特なシステムのため、「招待者」がいなければビザは出なかったのです。これが、新たなオンラインのシステムでは7分でとれるようになった、とサウジアラビア当局は豪語します。

      観光ビザ申請サイト

      ビジネスやイスラム教徒の巡礼などを除いて、サウジアラビアはまさに「閉ざされた王国」でした。その王国がビザの解禁にかじを切ったのは王位継承者のムハンマド皇太子の判断にほかなりません。石油に依存しない経済づくりの一環として観光業に白羽の矢が立ったというわけです。

      世界遺産 マダイン・サーレハ

      サウジアラビアでまず訪れるべきなのが、砂漠の巨大遺産です。北西部のウラ地方にある世界遺産「マダイン・サーレハ」は、2000年ほど前にこの地域を支配したナバタイ人の古代遺跡です。ナバタイ人の遺跡と言えばヨルダンにあるペトラ遺跡が有名ですが、ペトラの主要な遺跡部分が切り立った岩の谷の中にあるのに対して、こちらは砂漠地帯に忽然と姿を現します。

      マダイン・サーレハ

      一帯には巨大な岩を掘って作られた墓などが点在し、その光景はSF映画に迷い込んだかのよう。インスタ映えを狙うなら、赤い夕日が遺跡を照らす夕方がおすすめです。

      近くの空港までは首都リヤドなどから定期便が飛んでいますが、空港からの電車やバスはありません。現地の観光当局は「ツアーなどで旅行社を通じて訪れる事をおすすめします」としています。

      マダイン・サーレハ

      交易で栄えた町 ジッダ

      サウジ第2の都市、ジッダも見所の一つです。この町は紅海に面し、古くから聖地巡礼の玄関口として栄えてきました。

      イスラム教の二大聖地メッカとメディナはジッダから目と鼻の先。しかし、残念なことにイスラム教徒以外が訪れることはできません。巡礼に向かう人たちも多いジッダでその雰囲気を味わいましょう。

      ジッダ旧市街

      ジッダの魅力はその旧市街です。19世紀後半に建設された商人たちの家屋は窓や扉に装飾が施され、中に入ると往時の暮らしぶりを垣間見ることができます。

      サウジアラビアで初めての女性ガイドの1人としても知られるアビール・アブスレイマンさんによるツアーも新名物の1つといえるかもしれません。旧市街に顔見知りの多いアビールさんに案内されると、いまも暮らす町の人々の息づかいを一層間近に感じることができます。

      アビール・アブスレイマンさん

      アビールさんは「ほかの女性達もガイドの仕事に応募してきています。ガイドの数も増える予定です。この地区はとても安全で皆、旅行者が好きですので、どんどん遊びに来てください」と話しています。

      訪れるなら冬がおすすめ

      サウジアラビアに行ってみたい気持ちがだんだん高まってきましたね。ではいつ行くの?答えは「冬でしょ!」です。

      サウジアラビアを旅行するなら、これからの季節、冬がおすすめです。夏は連日40度を超えます。日中、屋外で車を待っていると、5分もすれば頭がくらくらする暑さです。

      この国の暑さは時に命取りになります。私自身、先日、屋外で車を待っていたところ、スマートフォンが暑さで停止。ドライバーと連絡が取れなくなり、炎天下、生命の危機にさらされました。一方、冬は夜こそ冷え込むものの、日中は心地よい気温です。

      服装に気をつけよう

      観光ビザが解禁されたとはいえ、サウジアラビアは厳格なイスラム教の国。特に気をつけたいのが服装です。

      サウジアラビアを訪れると現地の女性のほとんどは、全身を覆い隠す「アバヤ」と呼ばれる衣装を着用しています。また、ヒジャブやニカブで、頭や顔も隠しています。現地で暮らす外国人も、外出時は「アバヤ」を着用するのが通例でした。これまで、閣僚の同行取材で女性記者が来る場合も、「アバヤ」を着用して取材を行っていました。

      今回、観光ビザの解禁に伴って、服装に関する規定も緩和され、現地を訪れる外国人女性は「アバヤ」ではなく「肩と膝を覆う慎ましい服装」でよいと改められました。西洋風の服装でも構いませんが、女性は肌を極力見せるべきではないとの慣習に配慮したものとみられます。もっとも、保守的な価値観を持った人も多くいるため、現地の慣習への配慮は欠かせません。

      もちろん、アルコール類は持ち込み厳禁です。

      礼拝時間に気をつけよう

      サウジアラビアにいる間、否応なしに意識せざるを得ないのが1日に5回あるイスラム教の礼拝の時間です。

      この時間は、例え日中であっても店は一度シャッターを下ろし、閉店します。礼拝が終わるとまた、再開します。

      シャッターが閉まったショッピングモール

      礼拝の時間は日の出や日没の時間によって変わるため、季節や都市によって異なります。時間を気にせず、買い物しようと売店に立ち寄ると「ごめん、今から礼拝だから30分後に来て」と言われることもしばしばあります。

      このルールは、欧米型の巨大ショッピングモールでも一緒です。礼拝を告げるアザーンが聞こえると、一斉にシャッターが閉まります。

      公共交通機関はほぼない

      サウジアラビアの観光行政のトップ、カティブ議長は「サウジアラビアには遺跡や豊かな文化がたくさんあります。日本人にはぜひ来てほしい」と話しています。

      一方で、私の意見としては「個人旅行はちょっと難しいかも」というのが正直なところです。観光ビザを解禁したとはいえ、サウジアラビアの受け入れ側も基本的にツアーやイベントに合わせての訪問を前提にしているところがあります。

      様々なインフラ整備も、追いついているとは言えません。サウジアラビアの首都リヤドやジッダでも公共交通機関がほとんどなく、空港からのアクセスはタクシーなど車に限られます。

      「配車アプリ」は手放せません。サウジアラビアのタクシー運転手の多くはアジアからの出稼ぎ労働者です。英語はもちろん、アラビア語も正直よく通じないことが多いです。

      変化するサウジアラビア 行くなら今?

      まだまだ過渡期にあるサウジアラビアの観光事情。しかしこの国のここ数年の急速な変化は目を見張るものがあります。

      大都市では夜でも地元の女性たちが出歩く姿を目にします。治安は他の中東の国々と比べても良い方だと思います。観光客になれていないせいか、最初はちょっと取っつきにくいサウジアラビアの人々ですが、日本から来たことを告げると「サウジはどう?印象は変わった?」と矢継ぎ早に質問攻めに遭います。

      サウジアラビアには、紹介した観光地以外にも多くの見どころがあります。将来の海外旅行先の1つとして検討候補にいれてもらえると取材者として幸いです。(ドバイ支局 吉永智哉)

      ※情報は頻繁に変わります。旅行会社などに問い合わせて、最新の情報を確認してください。