紛争地の破壊はどれくらい?東京にあてはめてみると

ニュースを見ていると目に飛び込んでくる紛争で破壊された町並み。でも実際はどれくらいの広さが破壊されているのでしょうか。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地があるエルサレム旧市街はどれくらいの大きさなのでしょうか。中東のニュースの現場をなじみ深い日本と比べてみると…。

目次

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    エルサレムと新宿

    アメリカのトランプ大統領が大使館を移転したエルサレム。イスラエルは首都だと主張していますが、パレスチナもいつか国家を樹立したときの首都にすると主張しています。

    エルサレム旧市街の衛星写真に直径1.5キロメートルの円を重ねたものです。1平方キロメートルに満たないこの区域にはユダヤ教の聖地「嘆きの壁」、キリスト教の聖地「聖墳墓教会」、そしてイスラム教の聖地「アルアクサモスク」と「岩のドーム」があり、異なる宗教の人々が微妙なバランスのもとで生活しています。

    とはいえ、なかなか感覚的にはわからないもの。そこで同じ縮尺の円を東京の新宿駅周辺の地図に重ねてみるとこうなります。

    エルサレム旧市街が新宿駅から副都心の高層ビル群にかけての範囲とほぼ同じ広さであることがわかります。これくらいの範囲に、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒が暮らしているわけです。改めて2枚の画像を並べてみましょう。

    旧市街の広さについてイメージがわいたでしょうか。この地をめぐって、はるか昔からさまざまな勢力が争い、血が流れてきたのです。

    イラクのモスルと東京

    イラク北部の都市モスルは、過激派組織IS=イスラミックステートが最大の拠点とした町です。2016年からイラク軍が、クルド人部隊、シーア派主体の部隊、それにアメリカ主導の有志連合などと奪還作戦を行い、9か月にわたる激しい戦闘の末、去年7月に町をISから解放しました。

    上の写真はモスルの衛星写真に、被害のデータを重ねたものです。赤で示されているのが完全に破壊された構造物、オレンジが致命的な被害などとなっています。

    モスルの町はチグリス川が南北を貫き、川を挟んで東西に分かれています。被害の分布を見ると、チグリス川の西側に被害が集中していることがわかります。このあたりにはモスルの旧市街があり、ISが最後まで市民を「人間の盾」として徹底抗戦をした場所です。

    戦闘の爪痕はどれくらい広い範囲に及んでいるのか。まずモスルの地図に直径20キロメートルの円を重ねてみます。

    そして、同じ直径20キロメートルの円と被害データを東京の地図に重ねてみると。

    円の中心は東京駅です。被害を受けた構造物の範囲がJR山手線の線路より広い範囲に及んでいることがわかります。

    改めて2つの衛星写真を並べてみました。モスルが解放されてから1年がたちましたが、復興はほとんど進んでいません。

    ・モスルの現状についてのルポ
    ・モスルを撮影したVRコンテンツ

    ※UNOSATが2017年8月4日に入手した衛星画像を分析に活用
    ※データ入手元:
    https://unitar.org/unosat/node/44/2738/?utm_source=unosat-unitar&utm_medium=rss&utm_campaign=maps(※NHKサイトを離れます)

    ガザ地区と大阪

    「天井のない監獄」と形容されるパレスチナ暫定自治区のガザ地区。イスラエルとエジプトに周囲を壁やフェンスで囲われ、海すらも封鎖されています。人とモノの行き来は厳しく制限されています。多くの若者たちはガザ地区の外に出たことすらなく、ガザ地区を実効支配するハマスとイスラエルとの間で繰り返される紛争に巻き込まれています。

    ガザ地区の衛星写真です。これを大阪の衛星写真と重ねます。

    ガザ地区は北端にあるエレズ検問所から南端にあるラファ検問所まで42キロメートルあまり。同じ縮尺で大阪と比較すると、JR大阪駅のあたりから関西国際空港のあたりまでの海沿いの地域に重なります。

    ガザ地区ではこのところ、ハマスとイスラエルの争いが再燃しています。ガザ地区からはイスラエルに向けて迫撃弾が1日に数十発の単位で打ち込まれ、イスラエルは報復として空爆を行っています。以下は6月20日にイスラエル軍が作製したガザ地区からの攻撃を示した地図と、それに対して行った報復攻撃を示した地図です。

    ここで改めて、ガザ地区と大阪を比較した衛星写真を見てみると、いかに狭い地域で戦闘が起きているかがわかるのではないでしょうか。

    隣町ほどの距離の間で一方が迫撃弾を撃ち、一方が空爆を行っているような規模。しかしそうした争いがエスカレートする中で、 2014年の夏にはガザ地区でおよそ2200人、イスラエルでおよそ70人が犠牲になったのです。このときはガザ地区から離れたエルサレムにもミサイル攻撃は及びましたが、ガザ地区とエルサレムの距離はおよそ70キロメートル。新幹線の駅で言うと、東京と小田原ほどの距離です。(ネットワーク報道部 斉藤一成 佐伯敏)