「一重まぶた」論争 “ルッキズム”の呪いとは?

「一重まぶた=非国民みたいな生きづらい世の中」
「なあーにが一重まぶたが好きな男性の割合が高いだ どうせそいつの好きな芸能人は二重まぶたです解散」

11月5日から翌6日にかけ、ツイッター上でトレンドワードになった「一重まぶた」。容姿の美醜への価値観を巡って、ネットでさまざまな意見が交わされました。5日と6日の2日間に「一重まぶた」を含むツイートは、1万6000超(リツイート含む)。批判的な書き込みも見られ、ちょっとした"炎上”状態になりました。

「一重まぶた」の炎上がどこから生まれ、どのように議論が広がっていったのか、その背景には何があったのか、トレンドワード「一重まぶた」の深層を、徹底追跡しました。

「一重まぶた」の言葉を含むツイートが目立って増えだしたのは、5日の午後でした。

その始まりをたどってみると、きっかけは、ささいな言葉遊びだったことがわかりました。

5日の正午ごろ、診断サイトと呼ばれる、空欄に自分の名前を入れるとさまざまな診断が下されるという、おみくじのようなサイトで、あるお題が公開されました。

そのお題は、「指名手配書メーカー」。山田太郎と名前を打ち込むと、その山田太郎さんの容姿や身体的な特徴を示した指名手配書がランダムで表示されるものでした。

その指名手配書の項目の中に、「一重まぶた」や「二重まぶた」という表現があったのです。

最初は、このサイトを使った人たちが、自分が「一重まぶた」と診断されたことを面白がった投稿が多く見られました。

しかし、次第に「一重まぶたってなに?嫌味?」とか「トレンドの一重まぶたって一重の人ばかにしすぎやせん?」など、ワードそのものへの反応が加速していきました。

「一重まぶたなの。コンプレックス」
「わいがそうだけど一重の男はどう頑張ってもブサイクだから一緒に死のうな」など一重まぶたへの悩みの投稿も相次ぎます。

そして、5日午後8時すぎ、
「日本人男性は実は一重まぶたのほうが好きというデータがある。一重まぶたは可愛いから、もっと自信を持ってほしい」といった内容が投稿され、この投稿に対して、反発や議論が起こります。

なかでも「なにが一重まぶたはかわいいだ。私はただ二重まぶたになりたいだけ。二度と口に出すな」という内容の、午後8時半すぎの投稿には、賛否を含めて数多くの意見が集まり、7400リツイートされ、3万3000のいいねがつきました。

「一重まぶた」のワードは、6日の午前2時には日本のツイッタートレンドで12位にランクインしました。

白熱したネット上の議論。

「お前らが良いと思ってても、私は一重まぶたは嫌だ」
「言われてる本人の苦労を考えたことがない」など、一重まぶたと二重まぶたの優劣がテーマになっていくと、さらに多くの人が議論に参加していきました。

実は、トレンドワードでは、女性の容姿に関するキーワードが毎月のように炎上しています。職場での女性のハイヒールやパンプスの禁止を訴えた「#KuToo」や、冷たい印象を与えるという理由から女性が職場で眼鏡をかけてはいけないことが話題になった「メガネ禁止」などです。

私たちは、あらためてツイッターなどのSNSの投稿を幅広く調べてみました。

すると、他人の容姿を過度に中傷するヘイトのような投稿があることが分かりました。

ツイッターで再生回数が話題になったあるダンス動画は、若い女性が顔出しで登場していましたが、コメント欄には「そんなにかわいくない」「デブ、死ね」「痛い女だ」など、容姿を中傷するコメントが100件以上も寄せられていました。

また、ネット上で見つけた個人の顔が分かる写真を収集して、勝手に「ブス」として投稿し続けるボット=自動プログラムのようなツイッターアカウントも見つかりました。

その背景にあるのが、ルッキズムと呼ばれる他人を見た目で評価する考えです。

ネット上で、容姿などについて誹謗中傷をする人たちは、いったいどういった人たちなのだろうか?

誹謗中傷を繰り返していたあるアカウントの持ち主にツイッター上で取材することができました。

「何言ってんのクソブスやんお前」「 痛い女より中身ブスの方がましやわ」

意外なことに、この投稿者は18歳の男子高校生でした。

どうしてこのような投稿を繰り返すのか、メッセージを送ると、返ってきたのは。

「正直何を言っても自分の生活には影響は出ません。人を馬鹿にするのは面白いし、ほんとにブスばっかなんで」

このアカウントの過去の投稿を見てみると、見知らぬ他人に感謝を述べるような優しい投稿もありました。

どうしてなのか。何度かメッセージをやりとりしましたが、そこから浮かび上がってきたのは、最後まで、ごく普通の青年の姿でした。

「あくまで私は人です。一つの感情のみで生きているわけではないので。普通ではないでしょうか」

さらに別のアカウントの持ち主からも話を聞くことができました。

このアカウントは、「整形二重と一重男の子はブサイク」などといった投稿を行っていました。

都内に住む30代の女性だというこの投稿主にも、どうしてこのような書き込みをするのか尋ねました。

すると。

「私も一重まぶたより二重まぶたのほうが美しいと思います。SNSで発言する理由は、自分の考えに対して、他の人の意見を知りたいからです。共感が得られるか、もしくは、別意見が聞けるかが知りたかったからです」

「そこまでディスる気持ちはなかったですね。話題になっていたのでついでというところです。一重まぶたで悩んでいる人に対面で直接言ったりはしません。個人が特定されないところで、あくまでも私見として言う分には、それは価値観の問題かと思います」

話を聞いていくと、この女性は、自らも高校生までは一重まぶたに悩んでいましたが、その後自然と二重まぶたになったと明かしました。

いずれの投稿主も、他人を傷つけることに対してあまり頓着していないように思えました。

しかし、SNSを介した無思慮な言動は、容姿へのコンプレックスを加速させる社会につながっていくのではないかという疑念はぬぐえません。

SNS社会 外見主義に苦しむ人たち

ネット上で見られるルッキズム=外見主義にとらわれた人たちの書き込み。

その中で、「一重まぶた」であることに悩み、苦しんでいる人たちが増えているのではないか。私たちは、NHKに投稿を寄せてくれた人から話を聞きました。

関東地方に住む33歳の女性は、「雑誌のメイクの特集などに傷ついてきた」と話しました。

高校生のころに流行った「デカ目メイク」。雑誌のメイク特集に載っていたモデルは常に美人で「二重」でした。そのことに、一重である自分が責められている感じがしたと言います。

「一重は愛されメイクすらできないの?と。一重だからマスカラもうまくできていないようにも感じました。友達に『一重はクールでいいね』といわれるけど、クールって冷たいってこと?と良くない性格に結び付けられるのも嫌な感じがして、一重であることで自分自身に自信が持てない。今でも写真を撮られるのが嫌だし、仕事で会った人の目をチェックして『この人は二重だな』とか自然と気になってしまう。気にしないようと自分に言い続けても、気になってしまう」

「彼氏を、一重まぶたを理由にふった」という女性からも、話を聞くことができました。

九州に住む23歳の会社員の女性でした。

数年前、つきあっていた男性に別れる理由の1つが「一重である」ことを告げましたが、彼氏は、そのとき「ああ、そうか」とあまり反応しなかったと言います。

しかし、女性は、今でもそのことに罪悪感を抱いています。

「自分は差別主義なのかと、思い悩んでいる」と打ち明けてくれました。

「自分自身は二重だし、家族もみんな二重。美人の条件も「二重」だし、好みの異性の顔は『二重』。それは物心ついたときから二重がいいと刷り込まれているからだと思う。SNSで自己主張ができる時代で『人それぞれ、みんな違ってみんないい』ということが認められるようになってきた。その主張は正しいし、そういう社会でなくてはならない。けれども『それはわかるけど、好きになれない』自分がる。『一重は嫌だなって思ってしまう自分は、いけないのか』と罪悪感が消えません。どうすればこの気持ちと折り合いをつけていけるのでしょうか」

また、娘が自分に似て一重であることに悩んでいるという父親からも話を聞くことができました。

関東地方に住む30代の男性でした。

「似ちゃって申しわけないなと思います。パパ似だねみたいなことを言われるたびに思います」

「娘が、目が小さいとか、かわいくないという扱いを受けることが恐怖です。その特徴を持った彼女がかわいくないと言われたりとか、何かで選ばれなかったりとかみたいな、そういう場面に遭遇する恐怖です。遭遇するかもしれないという不安というか」

「二重のほうがいいっていう、無意識レベルの意識が僕の中にあるんです。別に一重だっていいじゃんってならないんですよ。なんでこんなに一重にコンプレックスがあるのか。はっきりわかりません。予想するに、世に出てる、かわいい、かっこいいとされるものが、基本、全部二重だからという刷り込みというか、ていうことなんだろうなと思うんです」

娘さんが、例えば、思春期に、二重にしたいっていうことを言われたら、どう答えますかと聞くと、「今の僕の感情で言うと、好きなようにすればいいんじゃないって思いますね。悲しさとか申しわけなさは多分あると思うんですけど、そう思うならそうさせてあげたいっていうのはありますね」と答えてくれました。

美容整形を手軽に?

取材を進めると、一重まぶたであることに悩みを感じている人が多くいる中で、以前に比べて美容整形が身近になっている傾向もみえてきました。

「整形アイドル轟ちゃん」フォロワー数36万人を超える女性YouTuberで、これまで1000万円以上を整形手術に使ってきたと言います。その経験を、ネガティブな面も含めて全て公表することで、リアルな整形について知ってほしいと活動を続けています。

また、インスタグラムを検索してみると、「#整形」がつけられた投稿が34万件以上見つかりました。

「#整形垢(整形アカウント、という意味のインターネットスラング)」「#整形しました」「#整形シンデレラ」など、整形に関連した投稿も非常に多く見られます。

一方、「#整形メイク」「#加工なし」などといって、自分の顔や全身写真を投稿し、コスメ用品の性能向上や、加工されていないことをあえて明言する人たちも増えています。

これらは一般の人だけでなく、美容整形を行っているクリニックが投稿しているケースもありました。

文章を見ると、「#だんご鼻」や「#鼻でか」、「#目のくぼみ」などネガティブなワードも並んでいます。

検索結果や投稿に、「#二重」「#可愛い」などが並ぶことで、「二重=可愛い」という価値観の再形成にもつながっているのではないかと感じます。

そのなかでも、やはり「目」や「一重まぶた」にまつわる投稿が目を引きます。

「二重の作り方♡」や「基本のアイプチ」、「二重見えする一重メイク」や「失敗しない二重に変身グッズ」などです。

いっぽう、「#一重メイク」「#一重女子」で検索しても、一重を活かしたメイクや、一重だからこそできるメイクがなかなか見つかりません。

代わりに、「二重マッサージチャレンジ」や「二重ラインの探し方」など、整形をするのではなくマッサージやメイク用品で二重になることを推奨する投稿や、「悩める一重さん向けのメイク!」など、悩むものだ、苦労するものだという前提に基づいた表現も多いことも気になります。

プチ整形が流行り、美を求めて努力する1つの手段として整形が受け入れられるようになってきている一方で、「自分は醜いのではないか」という人々の不安をあおってしまっているようにも思います。

目や一重まぶたへの関心の高さは、美容整形のデータにも現れています。

日本美容外科学会が、美容整形外科など国内の448の医療機関を対象に行ったアンケート調査では、去年1年間に行われた27万件の外科手術のうち、半数にあたるおよそ14万件が、一重まぶたを切開して二重まぶたにするといった、目にまつわる手術でした。

調査を行った自治医科大学の吉村浩太郎教授によりますと、欧米に比べて日本やアジアの国々では目の美容への関心が高く、二重テープなど手術を伴わないものを含めると、さらに多くの人がまぶたの美容を行っているといいます。

こういったなか、吉村教授がここ3年ほどで急増していると指摘したのが、韓国に渡る美容整形ツアーです。

ネットを検索すると、韓国の美容整形外科が主催して日本で開いている無料の相談会や、ホテルがセットになった渡航ツアーの募集ページなどが次々に見つかりました。

実際に、韓国に渡って手術を受ける人も増えているとみられます。
韓国保健産業振興院の公表資料によると、韓国に渡航して医療を受けた日本人の数は、おととしは2万7000人余りでしたが、去年は4万2000人余りと1.5倍に急増していて、このうち27.4%が整形外科、27.8%が皮膚科を受診していました。

患者の内訳では9割以上が女性で、全体の34.5%が20代と、若い女性が整形渡航している現状がみてとれます。

吉村教授は「韓国では美容整形手術の費用が日本に比べて安いことに加え、日本の若者の間で、韓国の俳優やアーティストの人気が高まっていることで、渡航する人が増えているのでは」と話しています。

いっぽうで、美容整形外科をめぐるトラブルも問題になっています。

国民生活センターによりますと、美容整形手術をめぐって健康被害が起きたというトラブルは年間400件ほど発生していて、二重まぶたの手術を受けたあと目が見えにくくなったケースもありました。さらに、ここ数年は韓国での美容整形ツアーをめぐって、キャンセルしたのに返金されないといった訴えも寄せられているといいます。

なぜ若い人たちの間で整形が気軽に捉えられるようになってきたのか。

集団行動の心理に詳しい立正大学の西田公昭教授は、ネットやSNSの普及によって、整形手術のハードルがさらに低くなっていると指摘しています。

「自分の容姿の悩みやコンプレックスは、面と向かっては人に言い出せないが、匿名のネットであれば気軽に悩みを吐露できて、同じ悩みを抱える人がすぐに見つかる。少しでも整形を考えている人だと、『顔をいじってもいい』『整形は悪くない』といった意見ばかりを好んで見てしまい、背中を押されてしまっているのではないか」

そのうえで、「コンプレックスを気軽に吐露できるようになったことはSNSがあってよかったことかもしれないが、間違った常識に凝り固まってしまう危険性や、コンプレックスにつけこもうとする悪質な美容整形業者などもいる。整形外科手術には元には戻れなくなるものもあるので、ネットの情報だけで判断することは注意が必要だ」と話しています。

ルッキズム=外見主義の“呪い” 乗り越えるヒントは

外見主義、ルッキズムにとらわれないようにするにはどうすればいいのか。
NHKに寄せられた投稿の中には、そのヒントになるようなものもありました。

12歳の長女が二重、8歳の次女が一重だという42歳の母親に話を聞くと、「とにかく褒めることだ」と答えてくれました。

親戚などから、「この子は目が残念ね」などという言葉をかけられて傷ついてきた次女。最近、「おねえちゃんみたいに二重になりたい」とせがむようになってきました。
そうした時には、母親として即座に「肌はきれいだよ」「優しい性格で良い子だよ」など、フォローするよう努めているといいます。

この女性も、小さいときから自らの母親に「目元が残念だね」と言われ続けてきた経験がありました。「顔がだめだから、服は良いの買ってあげる」とも言われました。

女性は、いまもその“呪い”を引きずっていて「目が二重だったら人生が変わっていたかもしれないと、化粧をするたびに思う」と打ち明けました。

呪いの連鎖を断つために、女性は、娘には、人は顔だけでなく全体の身なりや雰囲気が大切だということ、朝の身支度、部屋の整理整頓の大切さを、日ごろから言い続けていると言うことです。

最後に、呪いを解くには「周りを気にしない、自信を持つ、自分を好きになる」ことだという、思いを伝えてくれた投稿を紹介します。

大学生で、入学してからずっと毎日化粧をしていました。毎日、朝早く起きてアイプチで奥二重を幅広二重にして、肌をつるんとさせて赤いリップを塗っていました。
新しいコスメを買ってテンションが上がっても、忙しく眠い朝の時間の化粧の面倒臭さや化粧による肌荒れ、二重にすることで目が乾き充血するなど、デメリットの方が大きかったです。

大学の教員に、「薄くていいから化粧して」と言われたこともありました。
一度や二度じゃありませんでした。

でも、先日、他学部生しかいない講義が休日にあり、入学してから初めてすっぴんで行きました。その日の帰りに、「私って自分をすり減らしてまで誰のために化粧してたんだろう。毎日顔を合わせる学部の人のため?私の意思は?」とじわじわ気付きました。

そして、今日、同じ学部生しかいない講義にすっぴんできてみました。
何も気になりませんでした。二重でも一重でも特に周りの目も変わりませんでした。

では私の呪いはなんだったのか。
私は小中学生のとき男子たちが毎日のように女子全員に発していた「ブス!!」という言葉だったのかもしれません。

どんなに泣いて怒っても、仲裁するべき存在である学校の先生方は、誰一人怒るどころか「男の子は仕方ないの、女の子の方が精神年齢上なんだから、大人になって許してあげなさい」と口を揃えました。

そこだけ見れば男子たちは加害者ですが、その後の彼らは他人の容姿の批判ばかりしていた自分の言葉に逆に囚われたりしていないのでしょうか?

呪いをとく方法は、「周りを気にしないか、自信を持つか、自分を好きになるか」だと思います。私はやっぱり自分のことを特に人より容姿が優れているなんて思いませんし、これからも思わないでしょう。それにやっぱり、また容姿をバッシングされたら普通に傷つきます。周りの目線を気にしないのは無理。でも、自分の意思を一番大切にして、嫌なことを言ってくる人がいたらちゃんと怒って、自分を大切にしようと思います。どうせ酷いことを言われたら言い返そうが上手く躱して微笑もうが傷つくのは一緒なら、大切な自分を守るために自分で怒って守っていかなきゃ生きていけないから。

長々と自分語り失礼しました。みんなの呪いがはやく解けますように。

SNSで他の人とすぐに比べられてしまう今の世の中、“1本の線”をめぐってさまざまな価値観のぶつかり合いが起き、それに苦しめられる人が多くいました。

そんな社会の中で、自分らしさをどう培い、どうすれば自分に自信を持つことができるのか。そして、外見の差別を助長するルッキズムを克服していくことができるのか。

ネット社会、SNS社会のあり方そのものが問われているような気がしました。

(追跡!トレンドワード取材班 ディレクター:今氏源太 占部稜 山浦彬仁 上田ひかり 記者:斉藤直哉)

「一重まぶた」論争については、11月13日(水) 22:00 放送のクローズアップ現代+「追跡!トレンドワード~「一重まぶた」炎上の深層~」で詳しくお伝えします。