子育て

パパの育休 とりやすく!

ネットワーク報道部 大窪奈緒子 鈴木有

子どもが生まれたときに取得できる育児休業。 いま、男性が取るケースが増えています。 しかし、取材してみると一筋縄ではいかない現状がありました。

取得率は上昇!だけど…

いま、育児休業を取る男性が増えています。

25年前、わずか0.1パーセントほどだった男性の育児休業の取得率。それが、ここ数年で急激に増え、去年は12.65パーセントまで上昇しました。しかし、まだまだ高いハードルがあります。

アンケートには悲痛な声が

育休を取った男性が、周囲からどんな言葉をかけられたのか。 NHKでは育休を経験したパパたちが立ち上げた団体の協力を得てアンケートを取ってみました。

「男性が育休取って日中何してるんですか?」
「出世はもうええんやな」
「前代未聞です」

心ないことばをかけられた、というケースが目立ちます。

「男性の育休は孤独になりがちです」
周囲の理解が得られず、孤独感を募らせていく姿も見えてきました。

不安を感じた男性は

育休中の男性

アンケートに答えてくれた男性です。 長女が生まれたことをきっかけにことし4月から育児休業を取得しています。 頼れる実家のない妻と力を合わせ、育児に奮闘しています。 充実した日々を過ごしているという男性ですが、育休を相談した時に職場の上司からかけられた言葉が今も忘れられないと言います。

育休中の男性

『周りの人全員が理解しているとは思わない方がいいよ』と言われました。こんなにも本気で仕事に取り組んできて、信頼関係ができている中でも、育休を取っただけで、そんな風に思う人がいるのだなと。こわいですし、育休を取ることに不安を感じました。

周囲に育休を取った男性はひとりもいませんでした。 そのため、育休についての情報を得るのが難しく、不安があっても誰にも相談できなかったと言います。

(育休中の男性)
「情報がすくない、仲間がいない、周りが理解してくれない。誰にも頼れないというのが、いま男性で育休を取る人の現状かなと思います。私自身も孤独で、しんどい思いをしながら、なんとか育休を取れたという感じです」

声かけで変える風土

男性が育児休業を取りやすくしようと取り組みを始めた企業があります。目指したのは風土改革でした。

東京にある大手IT企業の日本ユニシスでは部下にかける「ことば」に注目。「声かけ研修」を管理職全員に受講してもらっています。

研修では3人一組になり、上司役と部下役、それにチェック役に分かれます。 育休の取得を希望する部下に、上司はどんなことばをかければいいのか。実際にやりとりをしてみて、別の社員がチェックします。

※研修提供:wiwiw

(上司)「面談ということですが、
     プライベートで会社に言いたいことはありますか?」
(部下)「実は、妻が妊娠していることがわかりまして」
(上司)「おめでとうございます」
(部下)「私は男性ですが育児休暇あるんですか?」
(上司)「はい、ぜひとってください」
(部下)「仕事はどうしましょう?止まってしまうのが不安で」
(上司)「大丈夫ですよ。まずは所内でわりふって、
     だめなら部長に進言しましょう」
(部下)「申し訳ありません」
(上司)「迷惑じゃないし、私はとらなかったら妻の機嫌が悪くなったので」

相談が来たときに、部下の気持ちに寄り添い、前向きな言葉をかけるのがポイントです。

(チェック役の社員)
「育休取ってくださいという雰囲気が伝わったのとしっかり聞いているところが印象的でした」

このほか研修では、時短勤務の社員がいることで、フルタイムで働く部下が上司に不満をもらすパターンも体験。業務負担が不公平だという部下に上司役の社員は、丁寧になぜ不満なのかを聞き出していました。 研修で学ぶのは3つの「き」。聞く、期待する、機会を与えるの3つです。

研修に参加した日本ユニシスの森下貴史さん

わたしに子どもが生まれた10年前ぐらいは、育休は選択肢にも浮かびませんでした。研修で気づきがありましたし、改めて声かけが重要だと思いました。

取得率は2倍以上に

この企業では、育児休業を取得する男性が年々増え、研修を始めた2016年度は11.1パーセントだった男性の取得率は、2020年度には26.7パーセントと2倍以上になりました。1年間取得する社員もいて、平均取得日数は99日に上っています。

入社8年目の森弘樹さんは長男が生まれた時に1か月、次男が生まれたときには半年間、育児を取得しました。 妻の妊娠がわかってから、育休を取ろうとを上司に相談。すると「育休取得に向けて業務について話し合いましょう」とトントン拍子で話が進んだといいます。 森さんは、職場で育休を取得している人が多く、仕事面で不安はなかったと話します。

森弘樹さん

仕事面で不安はなく、むしろ育児家事をしっかりできるのかという点で不安がありました。私がいる周りで『休むんだ』や『男が育休とるんだね』とか否定的なことをいわれたことは一切ないです。『うらやましい』もなく、頑張ってねという感じでした。

森さんは、育休中、月に1回育児家事についてノートに書き込み、気づきや改善点などを夫婦で話し合ってきました。 森さんの妻は家事育児の忙しい時間帯を夫婦で共有できたことが重要だと振り返ります。

(森さんの妻)
「育休で夫婦が初めて対等に育児のスタートを切れたことが大きなメリットだと思います。夫婦で協力して毎日を過ごしているなと実感します」

日本ユニシスでは個人の経験やスキルといった多様性を広げていくことがビジネスでもチャンスになると考えています。         

(日本ユニシスダイバーシティ推進室長の宮森未来さん)
「大きくチャレンジを奨励する文化に変えていこうというビジネス改革から風土改革がスタートしています。あくまで多様性を尊重したいがベースになるので数値目標は設けていません。まだまだ取得率は高くないと思うので、取得したいと思っている男性社員が当たり前に取れる風土にしていきたい」

仲間とつながり孤独感を減らす

取得率はあがってきたものの、まだまだ取得に高いハードルのある男性の育児休業。育休を取った男性たちがつながって支え合おうという取り組みも始まっています。

妻の職場復帰にあわせて、長女が7か月のときから1年間の育休を取得した佐伯侑大さんです。

佐伯さんと家族

子どもがどうしても泣きやまないときや離乳食をつくるとき、育児の悩みを相談できる相手がいませんでした。 孤独感がつのり、ストレスから体調を崩すこともありました。

手作りの卵焼きを食べさせる佐伯さん

(佐伯さん)
「周囲に育休を取っている男性はほぼおらず、悩みを抱え込んでしまっていました。支援センターや公園でのママたちの集まりにパパが入るのもなんだか申し訳ないような気がして、なかなか踏み込めませんでした」

夜10時 集まるパパたち

パパ育コミュの交流会「パパ育トーク」

そんなときに参加したのが、育休を取った男性たちが始めた団体「パパ育コミュ」のオンライン交流会でした。 夜10時。 子どもを寝かしつけたパパたちが続々とオンラインで集まります。 話すのは子どもの成長や自身の近況、育児の悩みやふだん感じている疑問など。

(参加者)「きょう、近所の子も交えて芋掘りをしたんですよ」
(参加者)「育休を取って、子どもの寝返りや初めて立った瞬間をそばで見守れたのがうれしかった」

わいわいと和やかな雰囲気で交流が進みます。

(参加者)「育休を取りたいという気持ちは早めに上司に伝えたほうが、
      会社も準備しやすい」
(参加者)「育休を取ったぼくらの世代が管理職や責任ある立場に立ったとき、
      後輩たちが育休を言いだしやすいよう頑張っていこう」

これから育休を取る人へのアドバイスや、将来の働き方について真剣に語り合うことも。 佐伯さんは、この交流会に参加して、やっと気持ちをはき出すことができました。

佐伯侑大さん

とても温かい場所です。育休を取った経験のあるパパとつながれる場所はなかなかないので、心強いです。パパでも大変なんだということが社会全体で共有されていく、そういう空気が作られていくことや、育休を取りやすい雰囲気が作られていくことが、大事なことなんじゃないかなと思います。

現在、育休中のうまんちゅさんもこの交流会が大切な居場所になっていると言います。

うまんちゅさん

公園などに行っても、パパ友もおらず、話す相手もいませんでした。交流会には同じ境遇の人がたくさんいるので 悩みを共有したり、何気ない相談をしたりできる。自分にとって大切な場で、パパ友の温かいしゃべり場のような存在です。

寄り添ったことばと仲間たちとのつながり。 誰もが不安なく育児休業を取れる社会に向けた動きが少しずつ広がっています。

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