今、高齢者の体の急速な衰えが問題になっています。家にこもりがちになることで起きる「コロナフレイル」です。
コロナ禍がいつおさまるのか見通せないなか、どうやって防いでいけばいいのでしょうか。
「フレイル」は、加齢によって体や認知機能が衰え、介護が必要となる一歩手前の状態になることです。 新型コロナによる外出自粛の影響で、高齢者たちに「コロナフレイル」が引き起こされているとみられています。
東京・豊島区では、高齢者向けのフレイルチェックを続けています。
握力測定や、片足立ちができるかなどを調べるほか、ふだんの食生活や外出の頻度なども聞き取ります。
コロナの影響は、チェックの結果に現れています。
フレイルの疑いがあると判定された人の割合は、去年7月からことし1月までが40点5%。
2019年度の28点3%と比べておよそ1点5倍に増えたということです。
体力の衰えを実感しました。感染拡大後は
どこにも出かけず、毎日家にこもっています。
兵庫県加古川市に住む松尾智子さん(88歳)も、コロナ禍で外出する機会が減った1人です。 フレイルになることを心配しています。
感染拡大前は、地域の集まりに積極的に参加していましたが、多くが休止になってしまいました。
(松尾智子さん)
誰とも接触しないし、楽しいこともないですね。
近くに住む息子夫婦と、車で買い物に行く以外、家にこもりがちになっています。
(息子の妻 松尾順子さん)
近所の方と一緒に今までしてたことができなくなっています。弱っていくのではないかと心配です。
コロナフレイルから高齢者を守るために、何ができるのでしょうか。
スマートフォンのアプリで高齢者同士をつなげて、外に出てもらおうという取り組みがあります。
東京・西東京市に住む塚田洋子さん(81歳)は、この取り組みに参加しています。
スマホのアプリで高齢者5人のグループを作り、散歩に出かけてもらいます。 塚田さんのグループの目標は、5人で1日合計2万歩を歩くこと。
散歩中に気になったものはスマホで撮影して、歩いた歩数とともに、みんなで報告し合います。
仲間どうしで励まし合いながら行うことで、塚田さんの日々の歩数も増えていっているといいます。
(塚田洋子さん)
1人だと、行くところがなかったら、2日も3日も外出しない時もありましたが、今は「グループの目標を達成するために頑張らないと」という義務感もあって歩いています。散歩が習慣化したので、良かったと思っています。
この取り組みを行う西東京市も、効果を実感しています。
(西東京市高齢者支援課課長 小林祐子さん)
西東京市には1人暮らしの高齢者も多く、コロナ禍でも人とのつながりを持ってほしいという思いで始めました。誰かと一緒に頑張っていると感じることで、散歩が継続しているようです。
若い世代との交流をきっかけに、外に出てもらおうという取り組みもあります。 兵庫県加古川市にある兵庫大学が開いたのは、福祉を学ぶ学生と地域の高齢者との交流会です。
この日は、豆をいるところからコーヒーをいれて飲むことにしました。
若者と一緒に作業をして、会話をすることで、高齢者の活動する意欲を高めていきます。
交流会を開いた兵庫大学の小倉毅教授は、このふれあいが大きな効果を生むと話します。
(兵庫大学教授 小倉毅さん)
若い人たちの一つ一つのことばが高齢者にとってはとても新鮮ですし、もうちょっと自分も元気に頑張らなくてはという気持ちに切り替わっていくことができるのかなと思っています。
家にこもりがちになっていた松尾智子さんも、交流会にやってきました。
「孫にお化粧をしてもらったの」と、少し恥ずかしがりながら話していました。
交流会では、家族や料理、さらには恋愛の話まで、おしゃべりが尽きません。
きょうはむっちゃ楽しかった。
きょうのことを思い出して、
家にこもらないで、楽しく過ごしたい。
「コロナフレイル」をどう防ぐのか。
こもりがちになっている高齢者に一歩を踏み出してもらうための後押しが、各地で始まっています。
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