子育て

コロナ禍 子どもの学びを守る

2021/3/19 ネットワーク報道部 大窪奈緒子

いま、新型コロナウイルスの影響で、子どもたちの「学び」が危機に。 親の収入が減ったことで、進学に悩んだり学ぶことをあきらたりする子どもが増えているのです。 子どもたちが安心して学べる社会にむけて、私たちができることは…。

いま学びが危機に

夕方6時。 次々に高校生たちが集まってくる学習教室が東京・足立区にあります。

経済的に厳しい状況にある高校生などが勉強したり安心して自宅のように過ごしたりできるReline(リライン)です。

リラインで学ぶ高校生たち

運営するのは、経済的に厳しい家庭の子どもたちの学習支援などを行っているNPO法人キッズドア。 NPOには、全国の親たちから切実な声が寄せられています。

「コロナになってから家計が苦しくなってます」 「子どもが来年小学校に入学で、どうしたら…」

NPO法人キッズドア 渡辺由美子理事長

(渡辺理事長)
これまでNPOが支援してきた経済的に厳しい状況にある家庭だけでなく、いわゆるふつうに収入があり支援を受けずに生活できていた世帯もコロナの影響を受け、生活が厳しくなっています。 『収入がない。もう貯金もない。本当に大変なんです』という方が、すごく増えている。この先ますます子どもを取り巻く環境が大変になってくると心配していますし、学びの危機を感じています。

進学に不安も

学習教室に通う高校3年の女子生徒も、進学に不安を感じながら勉強を続けてきました。 ひとり親家庭の高校生。 希望する大学に合格しましたが、進学を応援してくれた母親に金銭的な負担をかけてしまうことに申し訳なさを感じていて、涙ぐみながら話をしてくれました。

学ぶ高校生(右)

(高校生)
アルバイトを頑張っていますが、大学でかかるお金を全部自分で払えるわけじゃないですし、親に負担させてしまうこともあるので。申し訳なく思っています。

情報とふれあいで支える

不安があった高校生を支えたのは、学習教室の先生たちでした。 分からない問題を質問すると丁寧に解説してくれ、受験に必要な面接の指導も行ってくれました。また、進路相談や奨学金制度の説明会などを通じて不安ひとつひとつに寄り添って、アドバイスをくれました。

先生と高校生

(高校生)
私が落ち込んでいると、絶対に否定しないでやさしく話を聞いてくれる。心の面でも支えてくれているなと感じています。

周りの支えや声がけで将来を前向きにとらえられるようになった高校生。 奨学金を受けたり、アルバイトを続けたりして、進学することを決めました。

(高校生)
教室の大人の人たちが私を支えくれたように、私も子どもを支えられる大人になりたいと思うようになりました。 将来は子どもの心も体もケアできるような養護教諭になりたいと思っています。 大学では、いろいろなこと学んで将来にいかしていきたいです。

地域のつながりで支える

地域の結びつきも子どもたちの学びにつながっています。 東京・足立区で子ども食堂や子どもの居場所づくりをしている宮本明彦さんです。 去年からは、個人や企業からの寄付で集まった食料を配る「フードパントリー」を自分の実家でもある自転車屋の一角で始めました。

活動のきっかけは、ある母親の一言でした。

宮本明彦さん

『お米を買うか教材費を払うか迷っている』という相談を受けました。それを聞いて、だったらウチに来ればいいじゃないかと。 『お米くらいだったらあるよ』と伝えたところ、『ああよかったです。これで教材費払います』という喜びの声をもらいました。渡してよかったなと思いました。

取材にうかがった日の天気は雨。 宮本さんは、来た親子に「雨のなかよく来たね」「この米と野菜で、元気に過ごしてね」など、明るく声をかけ続けていました。

(会場に来た母親)
ここに来るだけで明るくなれますし、励まされます。宮本さんを通じて元気をもらっていて、ありがたいなと感じています。 子どもはしっかり食べていないと勉強にも集中できないですし、学校にも行けません。食べ物を通じて、子どもの生活を応援してもらっています。

学びや成長につながるよう

宮本さんは、子どもたちの様子を見ながら、学びにつながる情報などさまざまな話をするようにしています。

男の子と話す宮本さん

春に中学校に進学する勉強が好きな男の子には、地域に無料の学習教室があることを伝えました。

(男の子)
宮本さんに学習教室を教えてもらったので、これで勉強をおろそかにせず部活と両立できると思う。 特に歴史の勉強に興味があるので、中学校では社会で100点を取りたいです

(宮本さん)
コミュニケーションをとりながら、悩みがあれば聞いてあげたいと思っています。
心も体もそして勉強の面でも大きく成長していってほしいです。

安心して学べる社会へ

家庭や住んでいる地域などさまざまな状況にある子どもたち。 すべての子どもが安心して学び、将来にむけて一歩を踏み出せるために、大人や地域や社会が子どもたちに目を向けて、声をかけて、支えていく、そんな動きが少しずつ広がっています。

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