甚大な被害が出た、東日本大震災。
津波が、沿岸のまちを襲いました。
あれから10年。
時が経つにつれ、震災を伝えていくことが難しくなったと感じている人がいます。
佐々木純子さん
佐々木純子さんです。
佐々木さんは、生まれ育ったまちが一瞬にして奪われたあの日のことを語りついでいます。
(佐々木さん)「10年、一応区切りですけど、わたしたちは区切りはないです」
2013年
佐々木さんのいまの懸念は、話をする機会が減り続けていることです。
多い時には国内外から、年間3万人以上が訪れていましたが、去年は、新型コロナの影響もあり、誰も来ない日も出てきました。
このままでは 震災を伝えていくことができなくなってしまう…。
危機感を募らせています。
(佐々木さん)「やっぱり現地に来てそのものを見て感じるものって絶対違うんですよ。耳で目でにおいもあるし、それで感じていただいて、みなさんにもぜひ考えるきっかけにと思ってます」
あの日のことを忘れない。
今後の備えに、どうつなげていけばよいのでしょうか。
3.11みらいサポート 藤間千尋さん
震災の記憶を、新しい技術で伝えようという人たちがいます。
被災したまちを巡るツアーを主催する藤間千尋さんです。
まちの復興が進んでも、あの時のことを忘れないでほしいと活動しています。
そこで使っているのが、この専用のアプリです。
画像提供 石巻観光協会
タブレットをかざすと、画面に震災直後の状況が再現されます。
さらに、どの高さまで津波がきたのかも一目で分かります。
被災したときの状況を記録することで、災害の備えに生かしてほしいと考えています。
(藤間さん)「ここであった被害が、大変だったねだけじゃなくてちゃんと、自分たちのまちに帰ったときに考えてもらえるようなプログラムを作っていきたいなと思っています」
「オンライン語り部ライブを始めます。よろしくお願いします!」
オンラインで全国の学校と結び、被災した体験を多くの人に伝えようという取り組みも広がっています。
この日は、17校900人以上が話に耳を傾けました。
3.11みらいサポート 髙橋正子さん
(髙橋さん)「私の家は津波で流されてしまって、夕方には帰るところがなくなってしまいました。津波で堤防が壊されてしまって、町中、海のようになっていると言っていたんです。自分の命を守るのは自分しかいないということです。自分の命を守るスイッチを押してほしいと思います」
話を聞き、子どもたちの間に、災害に備える意識が生まれています。
(参加した小学生)「どういうふうに避難すればいいのかをしっかり覚えとこうと思いました」
(髙橋さん)「逃げるためにどうすればいいのか、命を守るためにどうすればいいのかということをきちんと伝えることが大切だと思っています。ひとりでも私たちのような思いをせずにすむように発信していきたいと思います」
東北の被災地から遠く離れた場所でも、震災の記憶を備えにつなげようという動きが始まっています。
愛媛県愛南町
南海トラフの巨大地震で、大きな被害が想定されている愛媛県愛南町です。
愛南町立御荘中学校が取り組んでいるのが「防災小説」。
防災小説
自分を主人公に、地震が起きた時に迫ってくる危険や、そのときの気持ちを想像しながら、生き延びるまでの物語を書いていきます。
中田夏夢さん
中学3年生の中田夏夢さんです。
物語は、下校途中に地震が発生したところから始まっています。
誰もが予想していなかった激しい揺れに襲われた 南海トラフ巨大地震だ
主人公の私は、体を丸めて、頭と身を守ります。
そして…。
避難している途中、泣きながら母親を探している4歳くらいの女の子を見つけた
いまは一緒に探す場合じゃないと、女の子の手をひいて、高台へ必死に走りました。
そこで、津波に襲われたまちを目にします。
町全体が津波におそわれ今までで一度も見たことのない景色になっている
心が痛い
それでも家族を信じて待ち続け、再会して物語は終わります。
父親の知公さんと夏夢さん
(父親の知公さん)「一番近い避難場所までのルートってわかる?」
この小説をきっかけに、夏夢さんは家族と地震のときの対応について、話し合いました。
自宅や学校以外の場所でも揺れを感じたら、自分の判断で安全な場所に素早く逃げることにしました。
(父親の知公さん)「まずは自分の命を守ること。いま自分がどこにいて、どうしたら命を守れるのか考えながら行動するように伝えています」
夏夢さんは、災害から自分や大切な人の命をどうしたら守れるのか、考えるようになりました。
(夏夢さん)「実際に災害が起きた時にどう動くか日頃から考えるべきだと思うし、いつ来るかわからないのでやっぱり日頃からの防災意識が大切だと思います」
あのときのことを忘れず、そして、備えを。
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