痴漢

「痴漢やめさせたいけど・・・」寄せられた声をたどった

(2020/12/1 ネットワーク報道部 大石理恵)

痴漢の被害者の声や、鉄道会社による痴漢防止の対策を伝えた記事「痴漢なくしたい、マジで」に対して多くの意見が寄せられました。 痴漢を決して許さない、見て見ぬふりもしない。 そうした記事に寄せられた声と、寄せられた声を受けての当事者の思いです。

被害にあった人たちから

「高校1年の4月、朝の満員電車の中で痴漢にあったので、声を出すこともできず今でも心の傷になっています」

「恐怖で身動きができず、電車を降りてすぐ警察にも相談しましたが、全く取り合ってもらえないどころか『油断していたあなたが悪い、声を上げなかったあなたが悪い』と説教され、帰宅後に夫から警察に抗議してもらってようやく少し対応してもらえたという始末です。女である限り被害に遭う恐怖、まともに対応してもらえない不安は一生付きまとうのかと大変悔しく絶望しました」

痴漢をやめさせたいけど…

一方、痴漢の現場に居合わせた人からは、痴漢をやめさせるための行動を自ら取ることの難しさについて意見が寄せられました。

「都心に向かう埼京線を利用していると、2、3ヶ月に1度は盗撮の現場を目撃してしまいます。隣に座る男性(おじいちゃんな事もあります)が、向かいの席の女性を盗撮しているパターンが多いです。いつもどうしたらいいのかわかりません。男性に声を掛けて何かされても怖いからです。可能な限り盗撮された女性に『今あの人から盗撮されてますよ』と声をかけますが、その女性も困りますよね。こういうケースは何が正解なのでしょうか…」

2011年の警察庁の調査によると、痴漢を目撃したとき「どのような行動もとらなかった」という答えは、約45%に上っています。

痴漢をやめさせたいけど、行動することで危険な目に遭うのが怖いという意見は複数ありました。 こうした中、居合わせた人がリスクを背負うことなく、被害者を助けられる方法を望む声も寄せられました。

「正直、痴漢するような人は、言えば逆上しそうだし関わりたくないというのが本音です。自分が犯人にされるのではないかという恐怖もあり、どうしても保守的な気持ちになってしまいます。周りの人が写真を撮って通報できるアプリの普及等、リスクを犯さずとも被害者を助けることができる仕組みの整備が必要ではないでしょうか」。

応援隊に

さらに、周りが痴漢を許さない空気を作るためのアイデアも寄せられました。 痴漢にあった女性が被害を防ぐために考案したバッジなどに関連したアイデアです。

「バッジの種類に『周りに痴漢犯罪をしてる人間がいたら絶対に見逃しません』という種類の応援隊のようなバッジがあったらいいなと思いました」
 

「男性が、痴漢を許さない!私は通報します!というバッジをつけられると更に発生件数が少なくなるような気がします。痴漢抑制という観点では、アプリで痴漢を目撃したら許さないという意思表示をGPSで電車内にプロットすれば、痴漢にあっている女性も心強く助けを求めやすくなるのではないかと思います」

痴漢に注意!に違和感

次に痴漢防止を呼びかけるポスターなどの表現について寄せられた意見です。 痴漢の被害情報などを共有するアプリの開発者たちが開いたイベントでは、「まじで痴漢やめろ」と書かれたパネルが掲げられていましたが・・・。

「大学の図書館に『痴漢に注意!』という掲示が貼られるようになりました。私はこの表現に違和感を覚えました。なぜ『痴漢をするな!』ではなく『痴漢に遭わないように気を付けましょう』という内容を掲示するのか。痴漢で悪いのは100%犯人です。女性は何も悪くありません。『痴漢は犯罪である』『人権を侵害している』という印象を与えるようなものにすべきだと私は考えます」 

「痴漢をする側は、相手は喜んでいる、自分に触られたがっていると思い込んでいる人がいるらしい。なのでポスター等には『相手の許可なく体を触る事は 相手への人権侵害で犯罪だ。あなたに触られたがっている人間はいない』と書いた方が良いのではないだろうか」

痴漢防止は被害者ではなく、加害者に向けて呼びかけられるべきだという声です。 一方で、痴漢えん罪の重大性に関する意見も届きました。

「憎むべきは痴漢をする者であり 痴漢をする者がいるからこそ痴漢冤罪も起きるのだと思います。しかし中には悪意を持って痴漢冤罪をでっちあげる人もいるようです。さらに恐ろしいのが、例えばAさんがBさんに痴漢をされたと訴えたが、実際はCさんが犯人だったというような場合です。この場合、Aさんには悪意がない上、Aさんは実際に被害を受けているのです。
 
極端なようですが、私は車両を女性専用車と男性専用車にほぼ完全に分けてしまう(性的マイノリティの方には不便をかけると思いますが)のが良いと思います」

駅員に一言伝えるだけでも

痴漢の被害を受け、抑止のためのバッジを考案した女性は、寄せられた意見を踏まえ改めて、目撃した時は見て見ぬふりをしないでほしいと話していました。

「痴漢は軽い犯罪だとか、当事者が一人で解決する問題だと思っていると、痴漢はずっとなくならない。まずは社会全体が、痴漢は性暴力で被害者は悪くない、加害者が悪いということをしっかりと認識することが大切と思っています。 たとえば痴漢被害を目撃した時、被害者に直接声をかけられなくても、駅員さんや警察に一言伝えるだけでも力になります。そういったひとりひとりの意識や小さな行動が痴漢を許さない空気を作っていくと思います」

痴漢の問題についてあなたの思い、意見をお寄せください。

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