“聞こえているのに聞き取れない” 生活改善のヒントは?

APD取材班 静岡局 武友優歩 ネットワーク報道部 井手上洋子

APD=聴覚情報処理障害という症状を知っていますか?聴力は正常でも、人混みなど雑音の多い場所では必要な音や話を選び取れず、理解できなくなってしまう症状でいまこうした悩みを訴える人が増えています。 取材を進めると、症状を抱えながらも生活を改善させるヒントが見えてきました。

大事なのは早く症状に気付くこと

症状に悩む、小学2年生のまさきさんです。
母親の翔子さんは、保育園の参観日で先生の指示に従わず1人だけ違う行動をとる、まさきさんの様子に気付きました。

「本人はずっと周りをきょろきょろ見ているので、『先生がしゃべっているよ、見て』と伝えたんです。
でも、『しゃべってないよ』と言ったので、聞こえにくいのかなっていうのは感じました」

これをきっかけに、長年、聴覚情報処理障害の研究にあたる国際医療福祉大学の小渕千絵教授に対処方法のアドバイスを受けるようになりました。

国際医療福祉大学 小渕千絵教授

「小さい時からおかしいな、聞こえにくさがあるなって思って支援を受けると、そのあと大人になってからもそういう自覚を持って、自分に合った対処方法を知り、うまくカバーをしながら生きていくことができます」

対処法知ることで変わった学校生活

小渕教授のアドバイスを受けて、大きく変わったのが学校生活です。

去年の秋から使い始めたのが、音の受信機。先生がつけているマイクを通して、声が直接、耳の受信機に届くようになっています。
これで、わかりづらかった授業も、理解できるようになりました。

クラスの友だちも、まさきさんをサポートしています。
みんながそれぞれ話始めて教室が騒がしくなると、次々とあがる、人さし指を高く上げるポーズ。
静かにして、先生の話を聞き取りやすくしようという合図です。
先生や友だちのサポートを受けて苦手だった算数も得意科目になり今では友だちに教えることもあります。

まさきさん

(まさきさん)「うれしい。よく聞こえてわかりやすくなって、学校が楽しくなりました」

担任の先生

(担任の先生)「困っている人は当たり前のように助けていくっていう雰囲気は、出きていると思います。
苦手なところはみんなで助け合って生活していこうっていう思いは子どもたちにあると思います」

鍵は“ちょっとした支援” 長年の夢かなえた人も

周りの人からちょっとした支援を得ることで、長年の夢をかなえた人もいます。
真壁詩織さんは、どんな時に困るのか、困った時はどうしてほしいかを周囲の人に知ってもらおうと、大学生の時に自分の「説明書」を作りました。

「話す時はゆっくり、はっきり話してください」「話し始める前に手をあげてもらえると、聞き取りやすくなります」

自分を知ってもらうことから始めたという真壁さん。

大学時代の真壁さん

すると、大学生の時には、講義になると友だちが近くに座り聞き取れなかったところを教えてくれるなど、支えてくれました。

「大げさなんですけれど、命綱みたいな感じで、授業とか大事な連絡があった時にも、ちょっと確認させてもらったりして、本当にありがたかったです」

周りの理解を得ることで、真壁さんはこの春、念願だった学校の先生になることができました。

真壁詩織さん

「困っていることをまず知ってほしいかなと思います。
本当にちょっとしたことだけで楽になるので、ちょっと助けてほしい」

「理解してもらうことが一番大きなところがあります。理解をしてもらうだけで安心して学校生活を送れる、安心して仕事ができる。
症状そのものを改善させることは難しくても、“生きやすい”環境に変えるこができます」
(国際医療福祉大学 小渕千絵教授)

小さな支援の積み重ねが、ひとりひとりの暮らしを変える。
できることから、始めてみませんか?
症状に悩む人たちが当事者会を作って生活の悩みや医療に関する情報を発信しています。
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