新型コロナ

テレワークうつにも注意  withコロナの働き方

(2020/6/16取材 ネットワーク報道部記者 成田大輔)

テレワークの受け止めは?

在宅勤務などのテレワークを実践している人に聞くと、好意的に捉える人がいる一方で、戸惑いや不安の声も聞かれます。

品川駅周辺で聞きました

(テレワークのよい点)
「テレワークは電車に乗らなくていいというのが大きいですね」
「いろいろな仕事を進めていく上で、問い合わせがない分、自分の仕事に集中できる」

(テレワークの課題)
「テレワークでできることと会社でしかできないことがあるので、そこを振り分けるのに戸惑った」
「プライベートと仕事の切り替えが難しくて、気苦労したりすることがあります」
「コミュニケーションがちゃんととれているのか、テレワークだけでは不安になることが多い」

”コミュニケーションがうまくいかない”

都内の心療内科には、不安を訴える人が訪れていました。

金融機関で働いている女性は、テレワークができる端末が全員分ないので、社員2人で1台を渡し合いながら働いているといいます。さらに、決済にははんこが必要なため、出社している社員に業務が集中。テレワークで働く社員も、社員との間で連絡がうまく取れずストレスを感じているといいます。女性はテレワークと出社での勤務を繰り返す中で、不眠やうつの症状を訴えています。

(金融機関に勤務する女性)
「寝付きが悪かったり、朝起きても疲れがとれない。体も精神的にも、すごいしんどい状態です。テレワークの人、出勤している人、上司、全員が顔を合わせているわけではないので、連想ゲームじゃないですけれど、どこかで話が食い違ったりということがあって、コミュニケーションがうまくいかない」。

”テレワークうつ”に注意

精神科医の浅川雅晴さんは、今後は「テレワークうつ」が増える恐れがあると警鐘を鳴らします。

(浅川クリニック 浅川雅晴 医師)
「大きな環境の変化があると自律神経が乱れて、具合が悪くなるなど体の症状は出るんだけれども、最初の1、2か月は仕事ができてしまう。無理をしていると突然、うつ症状がやってくるので、そこが怖いところです」

在宅環境を変えようという企業も

在宅で働く社員のために、職場環境を改善しようと動き出したのが、東京・港区のIT企業「Chatwork」です。

この会社のオフィスです

在宅勤務のノウハウを共有するためのチャットルームを開設し、初めての在宅勤務に戸惑う社員の相談を受け付けました。すでに在宅勤務を経験してきた社員からは、「意識的に席を離れる」「家事で気分転換する」などと、在宅でもメリハリをつけるためのアイデアが紹介されていました。

在宅勤務の社員が見ているのがチャットルーム

さらに、社員同士がコミュニケーションをとれるよう自由参加のオンラインランチの場も設けました。直接、オンラインで打ち合わせをする同僚以外とのコミュニケーションが不足する中で、気軽に雑談を言い合える時間を設けているといいます。

在宅勤務中の男性社員 昼ご飯はピザです

自宅での仕事を快適にするグッズへの補助も欠かせません。購入費用の半額を5万円まで補助(年間上限15万円まで)する制度を新たに導入。この男性はタブレット端末に加えて、腰を痛めないように座椅子のクッションを購入しました。

快適グッズも大切です

(男性社員)
「オンラインでお客さんと商談をしているのですが、クッションがあるとないとでは、一日の疲労感が全然違います。また孤独感を感じずに会社の人とつながっていれる環境を作ってくれているので、そこは働きやすいです」

【Chatwork人事担当 内田良子さん】
「住宅は住むための環境で、仕事をするための環境ではないので、そういったところでも従業員が働きやすい環境を作らなくてはいけないと考えました。一番重要なのは、コミュニケーションと情報共有で、一人で自宅で黙々と仕事をするだけではかなりのストレスがかかります。オンライン上でつながりを認識できる環境を用意するのがすごく大事だと思います」

オンとオフの切り替えが大切

一方、働く側も意識を切り替える必要があると、心療内科の浅川医師は指摘しています。

(浅川医師)
「テレワークをする場合は、仕事はここまでに終わらせる、ここからはプライベートの時間だから遊ぶ、オンとオフの使い方が大切です。また部屋の中でも、仕事をする場所、プライベートな場所を分けるなどすると気持ちの切り替えにつながります。また、対面のコミュニケーションでは相手の顔色や声のトーンで感情が伝わりますが、テレワークでは文字のやり取りが増え誤解が起きやすいので、相手への配慮も忘れないで欲しい」

“テレワーク元年” 新たな世代は

思いがけず始まったテレワーク元年。その中で育っているのが新入社員たちです。

都内の人材コンサルティング会社「リクルートマネジメントソリューションズ」では、新入社員9人がオフィスに出社できないまま、2か月自宅での研修が続きました。

想像していたものとは違う新社会人生活が始まりましたが、自分たち新入社員の境遇を知らせる社内報を作ったり、オンラインでの採用説明会のイベントを担当したりと、自分たちが今できることに一つずつ取り組みました。戸惑いながらも、今の状況を前向きに捉えているようです。

「私たちの会社の中にもこの状況を経験した人はいないと思うので、悲観的に捉えすぎずに工夫して、新たな道を作って行ければいいのかなというのが今の気持ちです」

「自分たちはテレワークが基準と言うところからスタートしているので、この強みを生かせたらいいと思います。対面できなくても、対面の時と同じような価値を発揮していけるよう、この経験を生かしていきたいです

新人研修を担当した上司も、オンラインで新たなビジネスが広がると新たな世代に期待しています。

(リクルートマネジメントソリューションズ 桑原正義さん)
「従来の対面型のコミュニケーションは、上司部下、先輩後輩という上下関係になりやすかった。しかし、ビデオ会議などオンラインのコミュニケーションは、会議室での会議のように座席が決まっておらず、与えられている画面の面積も同じでフラットな関係になりやすい。立場や役割を超えて意見を出し合いやすい状況なので、新しいビジネスを生み出し、組織を変える大きなマインドもってトライしてほしいと思う」。

広がりを見せるテレワーク。誰もが働きやすくなる方法を考えてみませんか。

寄せられたご意見[1件]

2020/11/14

うちの会社も、withコロナ対策でレイアウト変更を検討していますが、何かと『経費削減第一』とやらで、フリーアドレスも個別デスクも無し。『お客様第一』とやらで休日連絡当たり前です。 時代が進むのに、変化する事を拒む企業体質は入社してみないと分からないもの。『嫌なら辞めれば』というのも分からないこともないですが、不況の今は実はパワハラでは無いかとも思えます。 在宅ワークでますますプライベートとの区別が無くなってきて、四六時中休まらないです。 コロナ対策と同じく、繋がらない権利の確立もほぼ義務化して欲しいです。コロナは自主的に防御強化できますが、繋がらない権利は企業が黙認することで、イジメや労務管理違反と同様、ハラスメント化する暴力的な体質として、厳しく罰していいと思います。36協定と同じく、業務時間外の勤労強制と扱うべきです。 昔のなあなあ癖と、今のITの利便性の悪いところ取りです。

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