新型コロナウイルスを塗りたてペンキに例えてみる

原案:眞鍋葉子(内科医) 画像提供:カルペディエム エンタテインメント 取材:ネットワーク報道部記者 大石理恵

長期化が予想される新型コロナウイルスの影響。見えないウイルスとどう向きあえばいいのか、ある内科医が提案した考え方が話題です。それは、ウイルスをペンキに例えることです。

※本物のペンキに新型コロナウイルスが含まれていることはありません。また、一般の人がペンキ塗りたての施設に近づくことがないよう、現場では細心の注意を払っています。この記事では、あくまで目に見えないウイルスを可視化するための「例え」として表現しています。小さなお子様に説明される場合などに、十分注意して頂けるようお願いするとともに、文末の「ペンキ(塗料)について知ってほしいこと」もあわせてお読み下さい。

家から一歩外へ出たら

家から一歩外へ出たら、そこはすべて「ペンキぬりたての世界」だと例えてみてください。

電車の座席に座ったら、「あぁ今背中とお尻にごっそり塗りたてペンキがついたな」と思ってください。
エレベーターのボタンを押したら、「あぁ今指先にペンキがついたな」と思ってください。

感染している人のせきやくしゃみ は、ペンキのスプレーだと思ってください。
その人から、プシュとスプレーされたところには、ペンキがついています。
くしゃみを手のひらにした人が、その手で触ったところもついています。

ドアノブ
エレベーターのボタン
ATMのタッチパネル
そこを触ったあなたの手に、ペンキがつきます。

でも、消すことができます

でも、安心してください。このペンキは、数時間から数日、触らずに放置すると、自然に消えるペンキです。
触ってしまった場合でも、石けんやアルコールなどで消してしまえばいいのです。慌てる必要はありません。慎重に行動さえすれば、感染のリスクは下げることができるのです。

ウイルスは消毒し洗い流すことができます

目標は、鼻や口につけない事

大事なことは、自分の手という危険物から、自分の肺への入り口である「鼻と口を守る」ことです。 目標は、鼻や口につけない事。

鼻や口を触らないためには、マスクをしましょう。
せきやくしゃみをまき散らさないためにも有効です。

また、目から感染したと考えられるケースも報告されています。
うっかり目を触らないようにしましょう。

換気の悪い部屋は…

最も危険な場所は、換気の悪い密室。
そこは、ペンキのミスト噴霧器が設置された部屋だと思って下さい。鼻や口を触らなければいい、
というレベルではありません。換気の悪い密室は、今、「最も危険な場所」と言っても過言ではありません。

食事の時も注意

さらに気をつけなければならないのが、マスクを外している、食事の時です。
食べる前に、手を洗いましたか?
せっかく手を洗っても、マスクを外す時に、マスクの外側を触ると、また手にペンキがつきます。
外す時は、耳の後ろのゴムを持って外しましょう。

周囲2メートルに人はいませんか。部屋の換気は、十分ですか。

帰宅したら 家で安心するために

さて、あなたは家に帰ってきました。
家の中にペンキを持ち込まないために、次のことを心がけましょう。

カバンと上着は、玄関に置いておきます。
風呂場に直行して、髪の毛や顔、手に付いたペンキを落としてしまいましょう。

スマホも忘れないで

さらに、気を付けなければならないのが「スマホ」です。
スマホも、アルコールなどで消毒するか、ファスナー付きの透明な袋に入れて使えば、安全です。
これで「家の中にペンキに例えたウイルスを持ち込んでいない」とリラックスすることができます。

この記事が生まれた経緯について

この記事は、ウイルスをペンキに例えることで、冷静な対応を呼びかけようと考えた内科医・眞鍋葉子さんがフェイスブックに投稿した原稿が始まりです。

この原稿を読んだ私たちは、眞鍋医師に取材して4月15日、NHK NEWS WEBに記事を掲載しました。 時を同じくして、番組制作会社の経営者がナレーターやイラストレーターに呼びかけ原稿をもとにした動画を制作し、投稿サイトで公開しました。

医師の思い

今回の記事とテレビで放送しているVTRは、動画制作にあたった人たちの協力を得て再構成したものです。
眞鍋医師は、最初の原稿を書いたときの思いをこう語っています。

(眞鍋医師)
恐怖を取り除きたいという思いがあります。
コロナに感染してしまった後の治療法は未知です。
しかし、コロナを予防するための方法は、実は未知でもなんでもない、何十年も前から実践されてきた既知の知識です。「知識があれば、リスクを着実に下げることができる」ということを伝えたいと思いました。
単に感染のリスクを伝えるのではなく、身を守るにあたって何がゴールで、それを達成するにはどうすればいいのかを提示することで、恐怖を取り除いて、否認から前向きな行動へと移れる方が1人でも多くなればいいと思います。
感染者への差別や風評被害などの話題にも心を痛めています。差別を行う人の心の中には、意地悪な気持ちよりも前に、恐怖があると思います。
「こんなに怖いから、気をつけなさい!」ではなく、「気をつければリスクが下がるんだよ、怖くないよ、だからあきらめないで!」というメッセージを込めたつもりです。

ペンキ(塗料)について知ってほしいこと

日本塗料工業会発行「塗料の機能性」(左と中央) 建築物を守り通路を彩る塗装(右)

最後にこの記事でウイルスに例えたペンキ(塗料)について知ってほしい有益な情報があります。塗料は今、単に物に色を塗るだけでなくさまざまな機能を果たしています。
日本塗料工業会が発行している冊子「塗料の機能性」によりますと、塗料は建物の表面などを保護するだけでなく、光を蓄えて夜に発光し災害時に役立ったり太陽の光を反射させ暑さを和らげたりするなど、その機能は多岐に渡っています。
さらに、抗菌・防カビ塗料も注目されています。抗菌効果のある天然素材の漆喰や光にあたると抗菌力を発揮する光触媒を用いた塗料などです。従来のノロウイルスやインフルエンザウイルスなどへの効果が確かめられているものもあり、さらに技術開発が進められています。
ペンキを塗る人たちの取り組みも知って下さい。
私たちの暮らしに欠かせないペンキ(塗料)に親しんでもらおうと、ボランティア活動やイベントも全国各地で行われています。公園のフェンスや施設を塗り替えるボランティアのほか、幼稚園や学校で子どもたちにも体験してもらいながら内装の塗り替えを支援するキャンペーンなどです。
記事では、ウイルスから身を守るためにペンキを例えに使いましたが、実際の暮らしで塗料は私たちの生活をより快適にしています。

大都市の地下道や公園施設の塗り替えも支援

最新記事

  • 新型コロナウイルスに感染した人に嫌がらせのメールが届き、ネット上では素性があばかれる。人格を否定するようなひぼう中傷もあとを絶ちません。こうしたなか、感染者への思いやりを伝える学校や、感染リスクの高い仕事に就く人たちを支えようという動きが広がり始めています。

  • 「コロナテロ」「親の顔がみたい」。これは、新型コロナウイルスの感染者に向けられたことばです。SNS上には、感染した人を特定する投稿が相次ぎ、事実と違うデマまで流れるなど、差別やひぼう中傷がなくなりません。各地で助けを求める声が相次いでいます。なぜ、感染した人を責め立てる事態がおきるのでしょうか。

  • 豪雨による被害が毎年相次ぎ、川の氾濫や土砂崩れで死者、行方不明者が出ています。命を守るには、安全な場所への避難が大事。 ところが、危険を知らせる情報があっても、避難に結びつかず、被害が出ています。

  • APD=聴覚情報処理障害という症状を知っていますか?聴力は正常でも、人混みなど雑音の多い場所では必要な音や話を選び取れず、理解できなくなってしまう症状です。今、こうした悩みを訴える人が増えています。 取材を進めると、症状を抱えながらも生活を改善させるヒントが見えてきました。