ビニール傘の新しい使い方を提案

(2019/7/12 取材:和田麻子・牧本真由美)

私たちの生活で広く使われているビニール傘。ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどで作られ、年間の消費量は推計6500万本とも言われます。

大量に生産される一方で安易に捨てられ、日本国内で処理しきれなくなっているのが現状です。こうした状況を変えようと、いま、各地で新たな取り組みが始まりました。

新しい傘の使い方、提案します。

傘をシェアするって・・?

外出先で急に雨が降り始め、1本500円のビニール傘を買った。家に傘はあるが、急場をしのぐため、ついつい購入を繰り返してしまう。

「本当にビニール傘を欲しくて買う人はいるのだろうか・・・」

こんな疑問から生まれたのが、傘のシェアリングサービス「アイカサ」です。去年12月に東京・渋谷でスタートし、都内や福岡市でサービスを展開しています。利用する男性に、どう使うのか、取材させてもらいました。

傘を借りるには、スマートフォンの無料通信アプリ「LINE」を使います。事前にクレジットカードなどの情報を登録。専用のボタンを押して、傘の柄の部分についているQRコードを読み取ります。スマホに送られた3ケタの暗唱番号を入力すると、傘が開く仕組みです。

傘を借りられるスポットは、東京と福岡で合わせて約200か所。返却は、どのスポットでも可能で、出先でそのまま傘を手放すこともできます。1日の利用料は70円。20代から30代を中心に利用が広がっています。

「雨がすぐにあがった時は、最短1時間で返却したこともあります。すぐ手ぶらになれるので、とにかく便利です。買った傘だと、出先で忘れてもしょうがないと思ってしまいます。でも、シェアしている傘は人と一緒に使っているものなので、大切に使わなくては、という責任感が出て、意識が変わりました」(利用した男性)

サービスは、便利なだけでなく、使う人の意識まで変えつつあります。

傘のシェアリングサービスを運営する会社によると、傘の返却率は100%。利用者は半年で1万5000人と、手応えを感じています。

「安くても利用料を支払う仕組みだからこそ、ユーザーが裏切らずに使ってくれる。今までは、そうした発想や仕組みがありませんでした。使い捨てが当たり前の社会は、限界を迎えていないでしょうか。傘は将来、シェアされるものだと本当に思っています」(傘のシェアリングサービスの運営会社 丸川照司社長)

こだわりのビニール傘を
作り続ける

去年11月に開かれた平成最後の園遊会で、当時、天皇皇后だった上皇ご夫妻がさされていたのは、ビニール傘でした。ただの傘ではなく、風にあおられても傘がひっくり返らないよう、風が吹き抜ける小さな穴が施されるなど、繊細な技術が詰まっています。

この傘を作ったのは、昭和30年頃からビニール傘を専門に作り続けている東京・台東区のメーカーです。使い捨てにすることなんて、想定していません。修理しながら、5年から10年、長く使ってもらいたいと、技術を駆使して壊れにくい丈夫な傘作りにこだわっています。

商品の価格は、8000円から1万2000円。決して安くはありませんが、全国から多くの人が傘を買い求めに来るといいます。

「高齢者や障害のある人たちにとって、雨の日の移動は危険を伴うこともありますが、透明で丈夫な傘は、周囲の視界を確保して、安全を守ってくれます。傘は、空から降ってくる雨や風、雪から人間を守るものでなくてはなりません」

「傘はどうしても不燃ゴミになりやすいので、できるだけ長く使ってもらって、愛着を持って使ってもらいたい。自分の所有権を主張したくなる傘をできるだけ持って欲しいですね」
(ビニール傘専門メーカー 須藤宰社長)

ビニール傘をつくって
みよう

傘を作ることで愛着を持ってもらい、物を大切に使う意識を育てようという取り組みも始まっています。

東京・港区にあるビニール傘のメーカーが主催した、親子向けのワークショップ。

子どもが、骨組みから組み立て、透明な部分にシールを貼って、傘を仕立てます。

世界でただ1つのマイ傘が完成すると参加した児童や母親からは、

楽しかった。大切に使いたい
「自分で作ったことですごく大事にする気持ちになると思うので、使える限り長く使ってもらいたいと思います」

といった声が聞かれました。

「ビニール傘は、安価であるほど売れる、安価に作るから壊れやすい、壊れやすいからすぐ捨てるという悪循環にはまってしまった。このままでは環境に悪く、傘メーカーとして本意ではありません。
傘を大切にしてほしいし、同時に、ひいては“みんなで環境を守る”という意識になってほしいですね」(ビニール傘製造会社 山本健社長)

便利なものだからこそ

使い捨てが当たり前になっている、今の社会の意識を変えるのは、とても難しいことだと思います。でも、「少しずつでもよりよい社会にしたい」。

意識が変わりつつある人たちの姿を取材して、同時に変化の兆しもあることに気づかされました。

便利なものだからこそ、どう使うのか。みなさんも一緒に考えてみませんか。

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