ビニール傘 使い捨ての現実

(2019/7/12 取材:ネットワーク報道部 和田麻子・牧本真由美)

急な雨の時に安価ですぐ手に入る、便利なビニール傘。ところが雨が止んだら「はい、さようなら」。あっという間になくしてしまったり、捨ててしまったりした経験はないですか。

ビニール傘の1年間の消費量は、推計6500万本とも言われています。その多くが廃棄され、処理しきれなくなっている現実があること、ご存じでしたか?

自治体も困惑しています

5月下旬、東京・新宿区の繁華街。早朝、区の委託を受けた清掃業者の作業員が、大量のビニール傘を回収していました。

わずか数百メートルの歩道に捨てられていたのは、50本ものビニール傘。多い日には500本もゴミとして回収されるそうです。

「使えるものが多くてもったいない。最近はいわゆる“ゲリラ豪雨”など突然の雨が増えていて、あわてて買って、捨ててしまう人が多い印象です」
(清掃業者の男性)

新宿区のごみ減量リサイクル課の小野川哲史課長も嘆いています。

「簡単に手に入るビニール傘で対応したいという気持ちは、非常に理解できるところです。しかし、大量に捨てられ続ける傘にどう対応すればいいのか。対応に苦慮しています」(小野川哲史課長)

ビニール傘はポリエチレンやポリ塩化ビニルなどで作られ、安価で手軽なことから昭和50年代から消費者の間に広がり始めました。

日本洋傘振興協議会の推計によると、国内で消費される傘は年間約1億2000万から3000万本。このうち、ビニール傘は年間約6500万本にのぼるといいます。(外資系リサイクル会社の推計)

「取りに来た人なんて
1人もいません」

ビニール傘は忘れ物としても大量に出ています。東京・文京区にある警視庁遺失物センターに、鉄道会社や警察署から届く忘れ物の傘は、年間約30万本。ところが持ち主の元に返る傘は、ごくわずか。去年はたったの0.9%、約3000本にとどまりました。

傘を取りに来る人の多くは、高価な傘や大切な人からプレゼントされたものなど、思い入れのある傘の持ち主だといいます。

「自分の経験でいうとビニール傘を取りに来た人は1人もいないんですね。今はいろいろなものが安く手に入る大量消費の時代ですから、しかたないのかもしれません」(警視庁遺失物センター安間勇峰遺失物第二係長)


リサイクルの「やっかいもの」

取材を進めると、捨てられたあとにも問題が起きていることが分かりました。

千葉県富津市にある廃棄物の処理工場には、回収されたビニール傘が1か月に20トンから30トンも運ばれてくるということです。

工場にはトラックの荷台から、ゴミとして束ねられたビニール傘が音を立てながら大量に落とされ、ごみの山の中から傘の骨組みが突き出ていました。

運ばれてきたごみは機械で小さく砕いて金属やプラスチックなど材質ごとに分けられ、リサイクルにまわされます。しかし…

「処理が大変で、手間もコストもかかって、リサイクルをしてももうかるものではありません。営業がビニール傘の契約を取ってきても、もういらないよ、という品です」(東港金属 福田隆社長)

ビニール傘の多くは材質が一定でなかったり、強力な接着剤が使われていて鉄とプラスチック部分の分別が難しく、リサイクルには適していないというのです。

中国の「プラゴミ禁止」も影響

さらに追い打ちをかける事態が起きています。ビニール傘を含む大量のプラスチックごみを受け入れてきた中国が、去年1月、環境汚染を理由に受け入れを停止したのです。

このため中国にプラスチックごみの処理の一部を頼っていた日本には、大量のプラスチックごみが滞留しています。福田社長の工場でも、受け入れたごみの山が、高くなっていました。

中国への輸出を前提としたリサイクルの仕組みだったんです。その仕組みが突然なくなってしまったことで、各地の工場にプラスチックごみが大量に滞留しています。ビニール傘やその他のプラスチックが、日本国内で処理しきれなくて余ってしまっています」(福田社長)

安易な使い捨て、やめませんか

まだまだ使うことができるビニール傘が次々と捨てられ、行き場にも困っているという現実を目の当たりにして、「どうにかしないと」という思いにさせられました。

2020年、その先へ向けて、安易な使い捨て、やめませんか

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