世界のイスラム教徒、ムスリムの人口の割合です。一方で日本国内では、約700人に1人といわれています。日本では知り合いにムスリムがいるという人は、まだ少ないのではないでしょうか。
とっつきにくいことを知りたいときは、漫画に頼るのもいいかもしれません。
かつてクラスメイトから「テロリスト」と悪口を言われたイラン出身の男性が、日本から漫画を通じて世界に等身大のイスラム教徒の姿を発信し続けています。
さっそくですが、
肌を隠す?断食?酒を飲まない?それとも「危険」?
イスラム教徒に接点のない多くの人たちにとっては、よく分からない存在かもしれません。そんな人におすすめしたいのが「ムスリム漫画」です。
こんなウェブサイトもあるんです。
イスラム圏を舞台にしたり、イスラム教徒の生活を題材にしたりした漫画の総称です。
比較的広く知られるようになった作品に、ユペチカさんの「サトコとナダ」があります。
書店で見たことある、という方も多いのでは?
アメリカの大学でルームメートになった、日本の女性とイスラム教徒の女性との何気ないやりとりがユーモアたっぷりに描かれ、イスラム教の文化がわかると人気を集めています。
“あるあるトーク”が繰り広げられます。
先月(11月)都内で、ムスリム漫画についてのイベントが開かれました。
イラン出身のハメド・ヌリさん(27)は、現在都内の高校で英語を教えながら、ムスリム漫画を描いています。
ハメドさんはイベントでこう呼びかけました。
イスラム教について正しく知り、肯定的に感じてほしいんです
ハメドさんは、イラン人の父親とアメリカ人の母親との間に生まれたイスラム教徒です。
左が高校時代のハメドさんです。
ムスリム漫画を描くきっかけになったのは、アメリカで過ごした高校時代にクラスメイトに投げかけられた、「お前はテロリストだ」ということばでした。
まだ若かった私はとても傷つき、苦しみました。こうした発言はイスラム教への無知からきていると思います。程度の差こそあれ、アメリカでもヨーロッパでも、そして日本でもさまざまな誤解やステレオタイプ(固定観念)があります。
(ハメドさん)
ニュースなどで繰り返し伝えられる、一部の過激派によるテロや紛争。その結果、「イスラム教=危険な宗教」だという誤ったイメージが、植え付けられていると感じています。
考えてハメドさんが行き着いたのが、日本の漫画でした。
幼いころから「キャプテン翼」や「遊戯王」などの漫画に親しんできたというハメドさんは、漫画には大きな力があると感じています。
漫画が世界中で広まって、多くの人が日本の文化にも関心を持つようになりました。絵とセリフの組み合わせで、複雑な話も自然に理解が深まっていくと思います。自分の興味と信仰を結びつけるものが漫画だったんです。
(ハメドさん)
ハメドさんは去年、大好きな日本に単身、住まいを移しました。
描いた作品の1つが、「花と花の愛」。ムスリム漫画といっても、キャラクターの描き方は日本でもよく見るタッチです。
ガチ乙女!!
舞台は日本の高校。女子高校生の花は、偶然すれ違った同級生にひとめぼれします。
ある日の昼休み、花は教室を出て行く彼が気になり、追いかけて校舎の屋上へ。
そこで花が目にしたのは・・・
素足になり、屋上の床に制服の上着をマット代わりに敷いて礼拝する彼の姿でした。
彼が日本とインドネシアの両親の間に生まれたムスリムだと知った花は、彼のことをもっと知りたいと、イスラム教にも関心を持っていきます。
「終わるまで、ここで待とう・・・」
王道のベタな展開・・・・いや実は本当にそんなことが起きていても不思議ではありません。
イスラム教の知識がなかった花の目線を通して、日本の読者にも平和を求めるイスラム教について知ってもらえるのでないかと考えました。
(ハメドさん)
ハメドさんはムスリム漫画を多くの人に知ってほしいと、ウェブサイト「Muslim Manga」を立ち上げています。
URLは https://muslimmanga.org/
サイトにはインドネシアやアメリカ、イギリス、フィリピンなど、各国の作家が描いたムスリム漫画が50作品以上掲載されています。
今は英語の作品が中心ですが、読者は20か国以上に広がり、日本からのアクセスもマレーシア、インドネシア、アメリカに次いで4番目だということです。
ハメドさんは今、このサイトを通じて知り合ったフィリピンのイスラム教徒の女性と、共同で新作に取り組んでいます。直接会ったことはありませんが、メールやビデオチャットのやりとりで作業を進め、近く完成する予定です。
ビデオチャットで打ち合わせ中
新作のテーマは、イスラム教の戒律に基づいたハラルの食事について。作品では日本を訪れたムスリムのきょうだいが、なかなかハラルの店が見つからず困ってしまいます。
ハラルを求めて・・・
東京ではハラルを食べられる店も増えてきましたが、全体ではまだまだ限られています。時間はかかるかもしれないですが、ハラルの食事や1日5回の礼拝をする場所の確保など、ムスリムについて知ってほしいことはたくさんあります。
(ハメドさん)
きょうだいはいろいろな人の協力を得て、最後にハラルのラーメン屋にたどり着くことができます。
近年観光客が増加し、2年後に東京オリンピック・パラリンピックを迎える日本。ハメドさんは作品にこんな思いを込めたといいます。
中東だけでなく、アジアにイスラム教徒は多くいます。友好関係を築くために、外国人観光客が日本語や日本文化を知ることはもちろん重要ですが、日本人が外国の文化や習慣を理解するのも、同じくらい大切だと思います。(ハメドさん)
ここ数年で、イスラム教徒に対する理解は広がっています。日本のハラルレストランを紹介するウェブサイトには現在900以上の店が掲載されていて、ここ数年でその認知度は大きく高まりました。
東京大会では競技会場での使用を想定した、移動式の「モスクカー」の開発も行われるなど、官民でイスラム教徒の受け入れ準備が進められています。
これが「モスクカー」だ!
では私たち1人1人はどうでしょうか。
異なる文化や考えについてもっと知りたいし、困っている外国人がいたら声がかけられる存在でありたい。
日本で開かれるオリンピック・パラリンピックは、訪れた外国人がまた日本に来たくなる、そんな機会になってほしいと思います。
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