ミガケ、好奇心!時事もんドリル

星

知っていますか?「体育」の今

小中学校の体育の授業というと、どんな思い出がありますか?
息があがりながらも自己ベスト更新に挑んだ持久走。最後まで逃げ回ったドッジボール。それとも、どちらが長く潜れるか友達と競ったプールの時間でしょうか。
多くの級友と一緒に体を動かした思い出は、ほかの科目に比べても忘れがたいものです。

「体育」は入試にも!

体育の「実技」を入試に出している中学校もあります。

慶應義塾普通部では、ボールのドリブルや壁に向かってのボール投げ、それに開脚前転やとび箱などの実技をいくつか組み合わせて毎年、出題しています。
学校によりますと、一生懸命に取り組む姿を見ているということで、必ずしも上手にできなければ評価されないというわけではないようです。

今の「体育」とは?

その体育の授業ですが、時代とともに大きく変化していることを知っていますか?
以前と比べ、どう変わっているのかを体育の歴史に詳しい、城西国際大学教授の大塚正美さんに聞きました。

城西国際大学 大塚正美教授
「子どもたちに無理をさせないように、けがをさせないように、そして勝ち負けをなくすように変わってきた」

実際に、授業内容も変わりつつあります。
その一つが持久走です。1キロや2キロなど、決められた距離を最後まで走りきり、タイムを計る持久走は、実は、行われなくなりつつあります。

代わりに行われているのが、20メートルの距離を何度も往復するシャトルランです。何回往復できたかで持久力をはかるため、「もう走れない」となればその時点で終了となり、無理に長い距離を走る必要がないのです。
このほか、危険を伴う「組み体操」や負荷の大きい「うさぎ跳び」なども行われなくなってきています。

意外なことに、話を聴く時や順番を待つ時に先生から指示された「体育座り」もなくなりつつあります。今は、あぐらや横座りなど、子どもの好きなように座らせる学校が増えているそうです。

大塚教授
「座り方を強制されるのが嫌だという、子どもが多いようだ。いつ、どこでも体育座りではなく、状況に合わせるのがいいと思う」

今の体育に懸念も

“無理をしないように”と変わってきているという今の体育ですが、大塚さんは、それが子どもたちの体力低下につながり得ると懸念しています。

体育の授業以外で、中学生が1週間にどのくらい運動をしているのか、スポーツ庁が調べた結果、女子では、1週間に7時間未満が全体のおよそ43%に上り、1時間に満たないという生徒もおよそ18%いました。

一方、男子でも、1週間に7時間に満たない生徒がおよそ22%いて、1時間未満もおよそ8%いました。授業以外での運動時間が少なくなる傾向にある中で、体力づくりに果たす、体育の役割が大きくなっていると言えます。
しかし、「無理をしない」といった傾向が過度に強まれば、その役割を十分には果たせなくなるのではないかと大塚さんは考えているのです。

新しい「体育」の取り組み

こうした中、「コーディネーショントレーニング」と呼ばれる運動を体育の授業に取り入れる学校が出てきていて、注目されています。手をたたきながら、脚を前後左右に出すなど、複数の動きを同時に行うことで、脳や神経を刺激し、運動能力を効果的に高められるといいます。うまく授業に取り入れ、子どもたちにおもしろいと感じさせることができれば、体力の向上にもつなげられるのではないかと期待されています。

城西国際大学 大塚正美教授
「体育は、本来、子どもが持っている特長を引き出し、努力すれば、こんなこともできるようになると分かりやすく示すことができる科目だ。体育の授業はこれからもよりよく変わっていくと思う」

コロナ禍ということもあり、現在、子どもたちが手軽に運動をするのは、簡単なことではありません。消毒などの感染防止対策に加え、子どもたちが密集したり、接触したりする運動を体育の授業から外すことも多くの学校で行われています。
早く、感染の拡大が収束し、子どもたちがよりよく変化した体育を、目いっぱい楽しめるようになってほしいと思いました。

「週刊まるわかりニュース」(日曜日午前8時25分放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を、鎌倉キャスターと考えていきましょう!

ミガケちゃん
なるほど