ミガケ、好奇心!時事もんドリル

星

花粉症対策へ無花粉スギ

暖かくなるにつれて、鼻や目がムズムズしてくるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回のテーマは花粉症です。中学校の入学試験にも取り上げられています。

問題に挑戦!

問題

(A)~(C)に適当な用語を答えなさい。

今や国民病とまで呼ばれ大きな社会問題になっているスギ花粉症の対策として、花粉ができないスギを植える計画が進んでいる。
スギは(A)と(B)ができる植物で、(A)にできた花粉が(B)に(C)して種子ができる。

(金蘭千里中学校 2016年 改題)

スギに種ができるまでの過程を問う問題ということですね。

正解は、(A)が「雄花」(B)が「雌花」(C)が「受粉」となります。

なぜ無花粉スギがあるの?

それにしても、「花粉のできないスギ」があるんですね。
本来、花粉は植物が種を作るのに欠かせないものですが、花粉症対策として今、花粉のできないスギを植える取り組みが行われているんです。
詳しく聞いてきました。

教えてくれたのは、富山県の森林研究所の斎藤真己さんです。
斎藤さんは、花粉のできない「無花粉スギ」を研究しています。
無花粉スギは、どのようにして誕生したのでしょうか?

斎藤さん
「無花粉スギはもともと自然界にあるもので、それをたまたま富山県が最初に発見した。スギに限らず、植物は無花粉になる突然変異が起こる。スギの場合は花粉症が問題になっているので、それを有効利用しようということで注目された」

こちらは、30年前に富山市内の神社で見つかった無花粉スギです。
5000本から1万本に1本、突然変異によって偶然生まれると言います。
棒でたたいても花粉は飛びません。

雄花の断面写真を見ると、通常のスギではクリーム色の花粉がありますが、無花粉スギには全くありません。

無花粉スギを花粉症対策に

この無花粉スギを増やして今あるスギと植え替えれば、花粉症を減らせると考えたのです。

斎藤さん
「無花粉スギの雄花は花粉を飛ばさないので異常があるけれども、種を作る雌花は正常で、ほかのスギの花粉がかかって受粉すれば種は増える」

無花粉スギを増やすこと自体は難しくはないと言います。
しかし、実際に無花粉スギを植え始めるまでには、およそ20年もの年月がかかりました。

斎藤さん
「林業上、使えないと意味がないので、われわれが開発する無花粉スギは、実用的ということを考えると花粉がないだけでは不十分で、成長とか材質もすぐれているものということになる。品種改良して、ちゃんと血統書付きの無花粉スギの品種を作ろうと時間をかけて作った」

スギが林業と切っても切り離せないことは分かりましたが、花粉の少ない広葉樹は木材としては適さないのでしょうか。

斎藤さん
「広葉樹は枝葉を横に広げて光を集めるタイプ。スギはまっすぐ上に育って光を集めるタイプ。林業上、どちらが使いやすいかというと、言うまでもなくスギ。だから、なかなか変えられない」

なかなか進まない植え替え

品種改良の結果、ようやくできた無花粉スギ。
では、これまでに植え替えはどこまで進んだのでしょうか。また、その効果は。

斎藤さん
「1年間で8万本ぐらいは植え替えが進んでいっています」

では、富山県全体で、無花粉スギは何パーセントぐらいなのでしょうか?

斎藤さん
「まだまだ1パーセントとかそんなもの。1年間で8万本とか10万本とか植え替えていっても、効果が出るまでに何十年とかかる」

なかなか進まない無花粉スギへの植え替え。
斎藤さんは、今であればそうした状況を変えられるのではないかと見ています。

木材をめぐっては、アメリカなどで需要が急激に高まったことなどによって世界的に品不足となり、価格が高騰する「ウッドショック」の影響が続いています。

こうした状況の中、国産の木材の利用を促進できればスギの伐採が進み、おのずと植え替えも広まるというわけです。

斎藤さん
「国産材の自給率が上がれば、今花粉を飛ばしているスギが必然的に減ってくるので、花粉症に対しても効果が大きいと思う。ウッドショックがあったりすると、自給率を上げることは十分可能な時だと思う」

花粉の傾向は?

最後に、気になることし(2022年)の花粉の傾向について。

斎藤さんは、花粉の量は前年の夏の気候に影響されると言います。

斎藤さん
「夏の気温が高くて雨が少ないと植物にとっては命に関わってくるので、自分の成長を諦めて子孫を残すほうにエネルギーを振り分ける。それで花粉が増える。去年(2021年)の夏の天候は、気温は高かったけれども雨が多かった。その影響もあって大体平年並みになると予想している」

斎藤さんによりますと、夏に気温が低く雨が多いと、翌年の春、スギ花粉は少なくなるということです。
ただ、花粉が少なくても人によっては花粉症の症状は出てしまいますので、やはり、無花粉スギへの植え替えが少しでも早く進んでほしいですね。

「週刊まるわかりニュース」(日曜日午前8時25分放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を、鎌倉キャスターと考えていきましょう!

ミガケちゃん
なるほど