ミガケ、好奇心!時事もんドリル

星

ひと事ではない! 水資源問題

私たちの生活や営みに欠くことのできない「水」。しかし、近年、世界各地で水不足など深刻な問題が起きているんです。今回は、私たちが利用する水、「水資源」について考えます。

問題に挑戦!

問題

(  )に当てはまる語句をカタカナで答えなさい。

 
水資源の豊かな日本ですが、実は多くの「水」を輸入しています。例えば小麦の多くを輸入していますが、小麦1キログラムを生産するのに約2000リットルの水が必要とされています。つまり小麦を栽培するために消費した水も、実際には輸入したとみなすことができます。これを仮想水、もしくは(  )ウォーターと呼んでいます。

(桐朋中学校 2020年 改題)

「仮想」といえば…?

正解は「バーチャル」です。

このバーチャルウォーターの考え方を知ると、水資源をめぐる、さまざまな課題が見えてきます。

バーチャルウォーターとは

水資源について研究している東京大学教授の沖大幹さんに聞きました。

沖さん
「水の恵みは、水道の水だけではありません。食べ物とか着ている服とかにも、大量の水の恵みが詰まっているということをまず、理解することが大切です」

1人が1日に飲む水は、1リットルから2リットル。
トイレや入浴、洗濯などに使う水道水は、多い人で400リットル。
そして、毎日食べる食料の生産には、雨水を含めて2000から3000リットルの水が使用されています。

食料自給率が38パーセントと、多くを輸入に頼っている日本。
ということは、実は、膨大な量の水をバーチャルウォーターの形で輸入していることになります。
その量、年間80兆リットル。
これは、日本国内の水の年間使用量とほぼ同じです。

沖さん
「『こんなに水が使われているんだ』と驚くだけでなく、バーチャルウォーターの考えを通して世界の水資源の問題を理解するよう、意識してもらえるといいのではないかなと思います」

水資源問題を身近に

私たちの身の回りにある、あらゆるものに関係するバーチャルウォーター。
この視点に立つと世界の水資源をめぐる問題が身近に感じられるようになります。

まずは、干ばつの問題です。
2000年からの20年間で干ばつの発生した回数と期間は、その前の20年間に比べておよそ3割増えました。

こうした状況が続くとどうなるのか。イギリスの環境経済学の専門家などが試算した報告書です。

干ばつや洪水などが頻発すると農作物が不作に陥り、食料への不安から輸出を停止する国が増えます。
そうした状況が連鎖すると、世界各地で暴動が起きるなど社会不安が増すといいます。
日本も例外ではありません。

水資源問題への対処は

こうした、水をきっかけに起こりうる問題にどう対処していけばいいのでしょうか。

沖さん
「水は地球上を循環しているので、なくなることはありませんが、多い場所と少ない場所とがあります。また、同じ場所でも多い時期と少ない時期があります。そこで、ダムのような施設が造られて、私たちは困らずに済んでいる訳ですが、一方で、そういう施設が足りない国や地域では、まだまだ水が足りなくなるのです」
沖さん
「アフガニスタンで人道支援されていた中村哲さんが、かんがい水路をみずから整備されて、農地を安定して食料生産できるようなところに変えたというのが象徴しているように、やっぱり水と食料というのが、地域の発展の根本なのだと思います」

それでは、私たちは、水資源の問題にどう向き合えばいいのでしょうか。

沖さん
「カーボンニュートラルと同じように、ウォーターニュートラルを掲げて、自分たちが工場やビジネスで使った水を同じ分だけ地域に戻す努力をしている企業などがあります。水を大事にする国や企業を応援する気持ちをみんなで共有していくことが、まずは大切だと思っています」

バーチャルウォーターという概念を通じて改めて感じたのは、日本という水の豊かな国で暮らす私たちも、実は他国の水資源に支えられて、生活を送っていることでした。

遠い国の干ばつや洪水などの水問題は、私たちの生活に直結する問題だと、意識を持つことが大事ですね。

「週刊まるわかりニュース」(土曜日午前9時放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を、鎌倉キャスターと考えていきましょう!

ミガケちゃん
なるほど